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INTERVIEW

Japanese

Non Stop Rabbit

2019年12月号掲載

Non Stop Rabbit

Member:矢野 晴人(Vo/Ba) 田口 達也(Gt/Cho) 太我(Dr)

Interviewer:秦 理絵

毎週4本もの動画をYouTubeにアップしながら(チャンネル登録者数30万人超!)、全国ツアーを回ればZepp DiverCity(TOKYO)を即日完売させるなど、YouTuber系バンドとして着実に進化を遂げているNon Stop Rabbitが、2ndフル・アルバム『細胞分裂』をリリースする。これまでの作品では疾走感のある王道のギター・ロックを武器にしてきた彼らだが、今作では"メンズ・グループ"の頂点を目指すべく、あくまでロックを基盤に置きつつ、様々なアプローチを取り入れたジャンルレスな1枚を完成させた。歌詞に貫かれるのは負けてたまるかという反骨精神。"バンド×YouTuber"というチャラく見られがちなスタイルだからこそ、かっこいい音楽を作ることには絶対に妥協できない。そんな覚悟が滲む作品になった。

-このインタビューの時点(※11月上旬)で、まだ音源が全部仕上がっていないという状況なんですけども。結構レコーディングはバタバタですか?

田口:そうですね(笑)。今YouTubeで上がってる「万事休す」、「其ノ他諸々」以外はZepp(Zepp DiverCity(TOKYO)で開催された"熱中症対策ツアー2019 ~必ずしも熱が加わる灼熱のような状況でなくても発症する恐れがあることから、「熱中症」と呼ばれるようになりました。~")以降に作ってるんですよ。だから、今ヤバいです。

-それは行き詰まってそうなったのか、あえてZeppのあとから着手したかったのか?

田口:後者ですね。Zeppをやったことでライヴをするときに足りない曲が明確にわかったんですよ。そこからガーッて曲が湧いてきたっていう感じです。

-ちなみに初のZeppライヴを終えて、どんな手応えを感じてます?

矢野:まだ実感がないんですよ。Zeppって、もっとすごいところだと思ってたんですけど、全然そんなことなくて。それがちょっと寂しい一面もあるんですよね。そうじゃない?

田口:ちょっとずつ大きくなってるから実感が湧かないっていうのはありますよね。

矢野:"ちょっとずつ"と言っても、3年でZeppだから早いほうだとは思うんですけど。

田口:"よっしゃぁ! Zeppやったぁ!"みたいな感覚はないよね。

太我:でも、小箱とZeppは全然違うなと思いました。ツアーではわりと小さい会場を回って、いきなりファイナルでZeppだったから。小箱は小学校の恋愛みたいな感じがして。

田口:どんな喩え(笑)!?

太我:スポーツできればモテるみたいな感じだったのが、Zeppは大人の恋愛みたいな。

-なるほど。結構うまい喩えかもしれない。

田口:うん、うまいですね(笑)。

太我:ちょっと今どよめいてましたよ、会場が!

矢野:"会場"って言うな(笑)。レコーディング・スタジオや。

太我:いや、でも本当にスマートにいかないとダメだなっていう感じはしましたね。

田口:たしかに曲の強度としても、Zeppでやるにはまだ足りないっていうのは思いました。ステラボールまではこられたけど、Zeppではちょっと弱い。で、もう次に豊洲PIT(2020年3月1日開催の"LiveTour 2020~武道館を狙うたてがみの生えたウサギ~"ファイナル)をやるのは発表したわけだから、"だったら"っていうところで『細胞分裂』の曲たちを作っていったんです。

矢野:次に勝負するためのアルバムですね。

-もともとノンラビ(Non Stop Rabbit)はライヴハウスに限界を感じて、YouTubeで知名度を上げる方法を選んだじゃないですか。で、今再びライヴハウスに戻ってこれたっていうところでは、自分たちのやり方は正しかったっていう実感はあるんですか?

田口:それは本当に涙が出るぐらい嬉しいんですよ。

矢野:もともと僕らはライヴハウスでやりたくなかったわけじゃないですからね。ライヴハウスを埋めるためにライヴハウスを捨てたので。

太我:そういう場所でやれるようになったことでいろいろ言われなくなったんですよ。YouTubeを始めて1年目ぐらいのときは"YouTuberなの?"とか、意味がわからないバンドっていう捉えられ方をしてたんですけど、今は"YouTubeは面白い、音楽もかっこいい"っていう2本の柱でやれてるから、"どっちなの?"って言われなくなったんです。

-自分たちの活動で認めさせたっていうことですよね。じゃあ知名度が上がったから、これからはYouTubeを縮小しましょうってなるかなと思いきや......。

田口:どんどん大きくなってますよね(笑)。

矢野:料理チャンネルとか新しいことも始めましたから。

田口:たぶん僕らがビビりなんですよ。現状のままいくと終わると思ってるんです。このまま週4本動画を上げ続けても、今までと変わらない。っていうことは次もZeppで止まるんだろうなというのもあって。Zeppが終わって以降どう勝負するかっていうのを考えたときに、もっと常人がいかないところにいかないといけない。それで新しいことを始めたんです。

太我:Zeppのあとに、僕と達也君のふたりでガチ対談をしたんですよ。

-あれ? 晴人さんは?

矢野:僕は行ってないですね。

田口:毎回太我はふたり(太我と矢野)で作戦会議をしてから来るんですよ。

太我:矢野と話し合ってからでないと(田口に)太刀打ちできないので(笑)。正直このままだとヤバいから、新しい攻め方をしないといけないと思ったんですよね。

田口:そのとき俺、太我にバレたなって思いました。"達也君、今面白くないでしょ?"って言われたんですよ。

-図星だったんですね。

田口:うん。"達也君が面白いと思わないと誰も面白くない"って力説されて、ズドーンってなりましたね。それが確信的なひと言だったんです。で、"俺考えてきたから"って居酒屋でスケッチブックを取り出して、図を書き出したんですよ。ここをこうすればバンドが良くなるって。

太我:そこからまたチャンネル登録者が増えるようになったんですよね。

-最近達也さんがひとりでもの申す系の動画をアップしてるのも新しい試みですよね。

田口:あれは結局音楽のためですね。料理とか面白動画とかをやってることで、音楽自体が軽く見られることが嫌だなと思ったんです。"かっこいい音楽"より、"アホな人たち"が勝つのが嫌だったというか。ちゃんと普段から考えてる人がリーダーとしてやってるんだっていうのを、コアな人たちだけでも知ってもらいたくて。あの動画で喋ってることがそのまま歌詞になったりしたので、アルバムに向けてジャブを打ってる感じですね。

-そのあたりは実際にアルバムを聴くと答え合わせができる感じがありますよね。今回は歌詞にしても、曲調にしても、かなり攻めてるなと思いました。

田口:今まではYouTubeのキャラクターもあったから、キラキラした歌というか、わりと優しい歌を書いてたんですよ。でも、今回からは"俺たちロックだから"っていうのを出したかったんです。だから、誰でも一発でわかるような内容じゃなくて、この単語の意味はなんだろう? って辞書を引きながら聴いてくれたら嬉しい。とにかく歌詞カードを読んでもらいたいんです。

矢野:歌詞に関しては今自分たちがいる状況を含めてストレスに感じることとか、全部吐き出されてると思いますね。

太我:アルバム全体で言うと、今回は『全A面』(2018年リリースの1stフル・アルバム)と『自力本願』(2019年2月リリースのミニ・アルバム)を足したような1枚だと思います。『全A面』は爽やかで......なんて言うんだろう。

-キャッチーで人懐こい作品でしたよね。

太我:そうそう。で、『自力本願』は、そこに強さとか重さが加わったんです。だから、アルバムを出すごとに変化と成長があるなと思います。