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INTERVIEW

Japanese

愛はズボーン

2017年11月号掲載

愛はズボーン

Member:カネシロマサヒデ(Vo/Gt) シライタツヤ(Ba)

Interviewer:岡本 貴之

-続く「もねの絵のよう」はギマさんの弾き語りで、ふたりの個性の違いがメロディに表れてますが、シライさんがベースでアプローチをするとき、ふたりの楽曲の違いってどんなところにあります?

シライ:ギマ君が持ってくる曲は、音的なものを持ってこないことが多いので、自分がアレンジをこうしようという隙間があるというか。カネシロ君が持ってくる曲はアレンジが粗方できていて、音のイメージもあるので、その枠の中で自分の面白いことができたらなっていう感じはありますね。

-「Z scream!」のベースは裏メロみたいに弾いてますね。

シライ:これについてはギマ君は最初に簡単に作った音源を持ってきていて、アレンジは全然違いましたけど、使えるフレーズをそのまま引っ張ってきて弾きました。

-初めてのフル・アルバムとして作るうえで、統一した音の方向性とかってあったんですか?

カネシロ:最後にミックスの段階でババババ~って全部まとめた感じですね。逆に言えば1曲1曲全然違う曲を作っているのが愛はズは普通なので、勝手にバラバラになるんですよね。"この曲とこの曲はこういうタイプ"って作っているというよりは、1曲ずつ丁寧に作って行けば自然とバラバラになるというのはなんとなくわかっていたので。だから特にテーマとかは言い合ってないけど、全然バラバラの曲をどれだけ同じアルバムとして聴けるかっていうのは考えて作りました。ミックスに関して、この記事を読んでいる人に聴き直してほしいのが、イヤフォンとかヘッドフォンで聴いたときのサイドの広がり方と、前後に個々の楽器がどこにいるかっていうのと、上下の広さがすごく操られてます。そこはめっちゃ時間をかけました。わかりやすい部分で言うと、岡崎体育と作った「adult swim-friends 岡崎体育-」で、まず電子音から入って後半はリヴァービーな空間の広い音で攻めて、脳内にガーっと広がって行くようなサウンドでわざと終わらせているんですよ。そのあとに続く「27」に入った瞬間に注意して聴いてほしいのが、今まで「adult swim-friends 岡崎体育-」で鳴っていた両サイドと上下の幅が鳴ってないんです。ホール規模のコンサートをやったあとに狭い地下室で曲をやっているような感じに一気になるんですよ。それから外のセミの声が聴こえてきて、ギマ君の「もねの絵のよう」が始まるんですけど、ギマ君の声がめちゃくちゃ近いんですよ。すぐ目の前で歌ってくれているような感覚になって、そのあとにもう一度ホール規模のコンサートみたいな「空飛ぶピンクのユニコーン」が始まったときとか、そういうところをみなさんには聴いて欲しいんです。YouTube時代にはわからない、アルバムの1曲1曲を流れで聴いたときの"めっちゃいろいろ作ってるじゃん"というのを聴いてほしいです。

-ここに至るまでの研究の成果が出たというか。

カネシロ:そうですね、エンジニアさんと何回かハイタッチしましたからね。

シライ:ベースっていつもは、何も通してない音を録って、同時にエフェクトをかけた音も録ってるんですけど、「生きてるって感じ」のベースは、もとの音にも取り返しがつかないくらいめちゃくちゃコンプをかけていたことを思い出しました(笑)。

カネシロ:基本、ミックスのときは僕が立ち会ってるんですけど、それぞれのメンバーは来れる日に来ていて。「生きてるって感じ」のミックスをやっているときはホンマに取り返しがつかなかったですからね。"あぁ~!?"みたいな(笑)。でもそれが面白いんですよね。できないからどうしたら良くなるかを考えるから。自分たちの思いのよらなかった発想が出てくるから。"取返しがつかないけど大丈夫か?"って録ったのがいい方向に転がりましたね。

-相当気合と神経を使って作られた1枚になったみたいですね。

カネシロ:そうですね。今作である程度みなさんが納得のいく結果が出ればレーベルの方からも"次いつ出すねん!?"っていうことになると思うので、この記事を読んでいる方で今後も愛はズにどんどんアルバムを出してほしいと思う方は、いち早くCDを手にしてほしいですね(笑)。

-今回ジャケットは世界的画家の黒田征太郎さんが描き上げたものというのも大きなトピックですね。

カネシロ:去年の夏くらいなんですけど、FM802の待合室の壁一面に絵が描いてあるのを見て、"この絵は誰が描いたんですか?"って聞いたら、"なんで黒田征太郎さん、知らんの?"みたいな感じで。"アメ村のマクドの向かいの壁画も黒田征太郎さんやで"って言われて。"あぁ~!"って。それでネットで調べたら、アメ村のBIGSTEPの地下1階に誰でも入れるオープンな"KAKIBA 描場"っていうスペースがあるんですよ。それでギマ君を誘ってどんな人か会いに行ったらいらっしゃらなくて。マネージャーさんに音源を渡して帰ったんですけど、そこからギマ君が1年かけて通って黒田さんともお会いして話をしていて。フル・アルバムを出すにあたって直接依頼しに行ったらその場で快諾してくれたみたいで。それで僕らがライヴをして黒田さんがペイントをするイベント(2017年9月に心斎橋 BIGSTEPにて開催された"愛はズボーン×黒田征太郎 LIVE and PAINTING")を行ったんです。

-結果、この絵になった理由はどこにあったんでしょう。

カネシロ:イベントのときに黒田さんは鳥をたくさん描いてはったんですよ。それを観ていたジャケット構成担当の方が、"「どれじんてえぜ」を演奏しているときにこの絵を描いていた"って教えてくれて。愛はズはまだ悟りを開いたレベルではないので、俯いて赤い目を開いてまだメラメラしているっていうところにガッときました。今回、初回プレス盤には封入特典として黒田さんがイベントで描いた絵の切れ端が入ってます。メンバー自らカッターナイフで切って入れてますので(笑)。そこも楽しんでもらえればなと。

-1stフル・アルバムを完成させた愛はズは今後どうなっていきたいですか。

シライ:1枚目のフル・アルバムを出して、今回で爆発するのは難しいかもしれないですけど、これが浸透して2枚目でめっちゃ爆発して売れるっていうのが僕の理想ですね。次もヤバいアルバムを作りたいです。

カネシロ:関西では知名度はあると思うんですけど、関西と関東のギャップはエグいんですよ。よく芸人さんが言う"関西の芸人は2回売れないとアカン"っていうのを痛感していますね。なので、関西だけじゃなく関東でも知名度を上げていきたいのと、もっと先のことを言えば音楽的にいろんな人に認められるバンドになりたいですね。