Japanese
あいみょん
2017年09月号掲載
Interviewer:石角 友香
-そして後半の男性目線の楽曲があることでアルバム全体が締まるなぁと思うわけです。「風のささやき」は、主人公は別に男性でも女性でもいいと思うんですが、外に出れなくなっちゃった人ですね。
これも上京したての「いつまでも」と同じ時期ぐらいで、言ってることは一緒ですね。今の音楽に対してとか。メジャー・デビューするから上京するっていうのを地元の人に言うと、すごくキラキラした世界に思われるじゃないですか。でも実際は違って、バタバタしててもお金が入ってくるわけでもないしとか、生活はそんな楽じゃないし、すごく嫌やな、実家に帰りたいなとか(笑)。
-一番試される時期ですよね。
そうですね。期待もされてるし、プレッシャーの中で曲作りはしなきゃダメだし。まぁ、義務的なものではないけど。でも、期待に応えたくて曲作りを頑張るっていうのもあって。で、当時は"頑張れ"って言われるのがめっちゃ嫌やった時期。"なんで頑張れとか言うん?"と思ってました。だから私も、今は普通に言うんですけど、そのときは"頑張れ"って言葉、人に対して使わなくなりました。自分が言われて嫌やったんで、"楽しんで"って言い方に変えましたね。最後には"もう少しだけ頑張ってみるさ"とは言ってるんですけど。まぁ、この歌詞のとおりです。
-最近の曲だという「ジェニファー」の内容が最も抽象的ですね。
曖昧が一番かなと思って。"ジェニファー"っていうのは誰でもないって意味なんですけど、そういう曲を作るのが好きなんですよね。聴く人によって意味が変わってくるものが。この曲を作ったのはきっかけがあって、THE BLUE HEARTSの「リンダ リンダ」って、なんかのインタビューでヒロトさん(甲本ヒロト)が"リンダって誰ですか?"って聞かれて"リンダは誰でもない。そんなこと気にして聴かないでくれ。みんなの中で変化するものである"と言っていて、あ、そういうのかっこいいなと思って、ちょっと曖昧な曲を作ってみたいなと思ってました。
-「リンダ リンダ」はもうそれがスイッチみたいな言葉ですね。
そうです(笑)。それってめっちゃかっこいいなと。インタビューもかっこよかったんですけど、それに感化されましたね。
人は素敵な経験や大事な存在で心の汚れを洗い流せると思う
-そしてラストに「漂白」があって、これは本当にいろんな捉え方ができる曲かなと思うんですけど、10代のうちに人をたくさん好きになる、人の素敵なところをたくさん見つけるという意味なのかな? と思いました。
映画("恋愛奇譚集")の主題歌をやらせてもらった曲なんですけど、監督さんにお話をいただいてすぐに、台本読んでないのに作っちゃって(笑)。で、台本もらってから少しやっぱ映画に沿わせるというか、もうほんと主人公の女の子ですかね。台湾から来た留学生の、その子の歌というか、その子の視点になって。最初に出てきた言葉が"10代のうちに人を何人愛せるかな"って言葉やったんですけど、客観的に自分で歌詞を書いてて、あ、自分はどんだけやったかな? と思ったりしたんです。10代と20代の恋愛観はまったく違ってくるじゃないですか? 10代のときの人を愛することっていうのは何なのかな? っていう。20代からはもう"大好きです"ってことかな、10代のころは何を愛するって思うんかな? ってそのへんをわーっと(笑)。
-真剣に人を愛した記憶があったら生きていけるみたいな。
あぁ、そうですね。結局いろんなことがあったけど、楽しかったあの日を思い出せば、まぁ大丈夫でしょという感じですね、この曲は。この主人公の子も日本に来て、台湾に帰っちゃうんですけど、日本での恋愛やったり、好きな人ができたことやったりとか、人間関係を思い出せば、あっちでも大丈夫でしょっていうメッセージ性を込めてます。
-それって一方的に好きになるだけじゃ身にならなかったりするわけで。相手と対峙してセットで傷ついたりするし、そういうところにちゃんと踏み込んでる感じがしますね。
セットで傷つくっていいですね(笑)、青春ですね。
-でも、自分が真実だと思えた経験が漂白してくれるんでしょうね。
ほんとにそうやと思います。私は今でいうと家族の存在があるからすべて嫌なことも洗い流せるなって思えるので。人は素敵な経験があるかないかで、心の汚れとか全然変わってくると思うんですよね。
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