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INTERVIEW

Japanese

THEラブ人間

2015年06月号掲載

THEラブ人間

Member:金田 康平(歌手) 谷崎 航大(Vio) 坂本 遥(Gt) さとう まりな(Ba) 服部 ケンジ(Dr) ツネ・モリサワ(Key)

Interviewer:天野 史彬

-金田さんにはソロのアウトプットもあるじゃないですか。金田さんにとってのラブ人間の存在価値っていうのは、どういうふうに変わりましたか?

金田:この1年で、ステージの上でカッコ悪いところはできるだけ見せないようにしようって思うようになりました。昔はカッコ悪いところも全部見せるって感じだったけど、今はもっと夢のある感じになりたいというか(笑)。ほんと、なんにも上手くいかない中学生がいたとするじゃないですか。恋もダメだ、勉強もできない、体育の授業に出るのが怖いぐらいスポーツもできない、みたいな。そういう奴がラブ人間のライヴに来たら夢を見れる、みたいな。"俺もこんなのになりてえ!"って思えるバンドに、ラブ人間だったらなれるなぁっていう気はしますね。忌野清志郎を見ている感じ。今の6人でステージに立ってるときは、そんな感じです。でっかいこと言える。本当は口に出したら恥ずかしいようなことをでかい声で言って、"ラブ人間を信じろよ"って言える。それはひとりじゃ言えないですね。弾き語りでは絶対に言えない。

-実際、この1年間の日々の中で、お客さんとの関係性が変わっているなっていう実感はありますか?

金田:昔よりも、お客さんの目はキラキラしている気がするなぁ。昔って、ライヴは俺の意見を叩きつけるだけの場だったし、正直、俺がやろうとしていたことはそれだったんですよ。"黙って聴け!"みたいな。メジャー1年目のころはほんとそんな気分だったけど、今は、全員で作りたいと思ってやってるんですよね。最近、ライヴ前に袖で"こっちが楽しんだらお客さんも楽しんでくれるよ"って言っているんですけど、それができてる気がする。昔は、俺がそうはやりたくなかったから、俺の意見を叩きつける気でやってたし、"ロック・バンドってそうじゃない?"って思っていたけど、今は全員でひとつのものを作るっていう、昔だったら恥ずかしいようなことができつつあります。昔は"歌え!"っていう気でやってたけど、今は"歌おうぜ!"っていう気でステージに立っていますね。お客さんも全員が主役でライヴができたら最高だと思う。

坂本:実際、ここ数か月でお客さんの目がよりキラキラしてきている気もしていて。もともと金田くんがそういうモードになっているのは僕らが入ったころから感じていたけど、それをお客さんにも伝えられるようになってきたというか、メンバー全員の共通項として当然のことのようにあるっていう状態になれたのが、今年に入ってからなのかな。

-他のみなさんから見ても、金田さん変わったなって思います?

谷崎:相当思いますよ。昔から、俺が1番(金田に対して)ワーって言ってたけど、そうなると、なんだこの! ってなるじゃないですか。でも今は普通に、お互いちゃんと言えるしちゃんと聞けるしっていう関係になれてきたかなっていう感じはあります。

服部:僕は実は、違う意見を持ってるんです。僕はあとから加入したんですけど、初めてラブ人間を観たときの金田のイメージは、今の感じだったんですよ。ライヴを観て"めちゃくちゃいいバンドいるんだな"って思ったときのラブ人間のライヴって、"みんなで歌おうぜ!"っていう感じが自然と出ていたし、"音楽っていいよね!"っていうイメージだったから、逆に、今がイメージ通りです。"前の金田だ、懐かしい"っていう感じ。

-僕のイメージも、実は服部さんと一緒なんですよ。リスナーの感覚からすると、今のラブ人間、金田さんのモードって、"変わった"というより"戻ってきた"っていう感覚のほうが強いんですよね。

金田:う~ん、そっか。でも変な話、ツネが俺の曲が好きだから一緒にバンドをやろうっていって始まったバンドだから。だから『恋に似ている』(2015年5月リリース)のころまでは、自分の中ではまだ、ひとりで作った曲をみんながやってくれるっていう感覚のほうが強くて。なので、戻った感はあんまないんですよね。バンドをちゃんとやってるっていう感覚自体が『アンカーソング』(2012年11月リリース)のころからだから。『アンカーソング』のインタビューのときにすごい言いましたもん。"今、バンドがすごく楽しいです"って。あの時期はすごくしんどかったけど、でも楽曲を作ってレコーディングをしているときはめっちゃ楽しかったんですよね。バンドで作って、しかもすごい悩みながらやってた時期だから、便秘のときのうんこみたいな、1曲1曲できるたびに気持ちいいっていう感じで。今でもフル・アルバムとしては『SONGS』(2013年4月リリース)が1番好きだし。で、たぶん、あのときに今みたいなライヴってできたんですよ。でも、あのころは内に籠っていくライヴをしたかったんでしょうね。今でもあのときのライヴ録音を聴くと、全然喋ってないですもん。"ノーMCでやる"ってみんなにも言ってたから。音楽をやりたかったんですよ。音楽で音楽をやりたかったんです。言葉とかを使わないで。でも、ダメでした(笑)。それは、うちのバンドには合わなかったです。

-"言葉"って、金田さんにとってはすごく強力な武器だと思うんですよ。今、金田さんはご自身の表現者としての本質的な部分に回帰しているのかもしれないですよね。『じゅんあい/幸せのゴミ箱』、それに今回の『きっとずっと彼女は友達』に収録された曲がどれも純度の高いラヴ・ソングになったことは、それと何かしら関係あると思いますか? 新体制になってから、本当に見事にラヴ・ソングが揃っているじゃないですか。

金田:このバンドを始めたときから変わんないんですけど、できたものがそうだったっていう感じなんですよね。俺は縛って自分の言葉を作っていないので。このメンバーになってから作っている曲も、もう500曲はあるんですけど、そのうちリリースされた8曲がラヴ・ソングなだけで、もしかしたら他の曲は政治的な歌かもしれない。500曲全部がラヴ・ソングだったわけではなくて、そのタイミングで出したいと思った曲がラヴ・ソングだったんですよね。だから、全然意図してはなかったです。

-でもなんで、このタイミングで出したかったのはラヴ・ソングだったんだと思います?

金田:昔から、女の子のことを歌ってなくても、"全部の歌はラヴ・ソングである!"って俺は提唱していて(笑)。「砂男」なんかは、彼女も含めて、俺の近くにいてくれる全人類が"好きだー!"みたいな、"好きだけど......"みたいな曲なんですよね。でもたしかに、最近は本当にわかりやすく、誰かに向けての楽曲ばっかりですね。なんでだろう......。『じゅんあい/幸せのゴミ箱』のころは、長く付き合っていた子にフラれて「幸せのゴミ箱」を書いて、で、好きな人ができて「じゅんあい」を書いて。そこから今回のレコーディングの間にその好きな子にフラれてっていう、その期間にできた曲なので、結局、そんなことばっかり考えて毎日生きていたんですよね。本当に、その時期に自分がどんなことを思って、何に心が動いて、どんな景色を見たかっていうことだけでしか曲を書かないので。ひとつのテーマを決めてそれを掘り下げるっていうことはないから、そんな時期だったっていうことだけなんですよね。最近はライヴハウスに集まる少年少女たちのことばっかり考えていて、それについての歌がすごい溜まってます。あとは、日本は生きづらいなぁって。そんなことがいっぱい曲になっているので、次のタームはそういう曲を出せたらなっていう気はしてるんですけどね。

-なるほど。

金田:でも、今回の5曲は超助走なので。まだ全然完結してなくて、この6人になってからの自分ができることに関してはまだ底が見えないんですよ。まだまだ上澄みを歌っているぐらいだと思うんですよね。なんか、まだ全然足んないです。もっと強烈なバンドなんですよ、ラブ人間って。しかも、『アンカーソング』とか『SONGS』のときとは違って、文学的、哲学的になりすぎないで、人間が目の前で歌って襟元をガッと掴んでるような歌が歌えるはずなんですよ。ロック・バンドらしさがまだ足んないんです。ちゃんとロック・バンドっぽいものがやりたいですね。熱狂して欲しいんですよ。自分が好きだったバンドを観に行ったときに、隣の人の顔とかも気にせず、なりふり構わず楽しめていたような、そんなバンドにラブ人間はなれるんですよ。それに、前はそうだったような気もします。今のライヴの雰囲気にぴったり合うような楽曲を作りたいと思って、今は曲を書いている段階です。