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INTERVIEW

Overseas

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION

2015年04月号掲載

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION

Member:Jon Spencer (Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

再始動は有り得ないとまことしやかに語られていた噂はガセだったわけだ。いや、それは結果的に、なのかもしれないけれど、『Freedom Tower - No Wave Dance Party 2015』と題された新作を聴く限り、現在のTHE JON SPENCER BLUES EXPLOSIONはすこぶる好調なのだからそれでいいじゃないか。インタビューに応じてくれたJon Spencerも"3人を結ぶ絆を守りたいという気持ちなんだ"と言っている。8年ぶりにリリースした前作『Meat And Bone』から始まったJSBXの第2章は新作を機にますます加速していくに違いない。

-前作『Meat And Bone』をリリースしてから順調に活動を続けていることから、前作の制作やその結果、さらにはそれに対するファンの反応にかなりの手応えを感じていることが窺えます。

そうだね。『Meat And Bone』はとてもポジティヴな形で受け容れてもらえたと思う。みんな気に入ってくれているみたいだしね。コンサートもツアーも評判良かったし、俺たちも気分がいいよ。そういうこともあって、THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION (以下JSBX)としてもう1枚作ろうという話になったんだ。

-この3人でしか出せない音があることに改めて気づいたところもあるんでしょうか?

そう気づいたのはずいぶん前だったけど、一緒に作業するたびにその感覚を再確認するような感じだね。このバンドがユニークなのは、この3人のコンビネーションによるものだと思う。

-みなさんそれぞれにJSBX以外の活動もやってきましたが、その外の活動での経験が活きてくるのでしょうか。

多分そうだと思うね。どんなことをやっても、すべてJSBXの音に繋がっていると思う。

-この3人でしか出せないサウンド、ケミストリー、ムードなどを、難しいとは思うんですが、あえて言葉で表現すると?

うーん、確かに言葉で表現するのは難しいね。俺たちは長い間一緒にやっている。もう20年以上にもなるんだ。その中で、3人の関係も成長して変化していった。長い時間の間にね。現時点では、お互いに対して保護的な感覚が強いと思う。"このバンドを守りたい"、俺たちの築いた音楽的な友情というか、"3人を結ぶ絆を守りたい"という気持ちなんだ。何から何までお見通しというわけじゃないのはわかってるけど、JSBXは全員ロックンロールに情熱を持っている。それは強く確信しているんだ。一緒に作る音楽に対してね。どんな感覚だって? いい気分になれる感覚なんだ。そんな感覚を憶えるから続けているんだよ。

-2年半ぶりとなる新作『Freedom Tower - No Wave Dance Party 2015』がもうすぐリリースされますが、今回はニューヨーク・シティをドキュメントするというテーマがあったそうですね?

JSBXはそれ自体がニューヨーク・シティのドキュメントみたいなところがあるからね。ただ、最初からそういう計画だったわけじゃなくて、ミキシングをしているときにテーマが浮かび上がってきた感じなんだ。"あぁ、これはJSBXが暮らしている街のアルバムなんだな"と思ってね。単に俺たちのアーティスティックな"巣"というだけじゃなくて、俺たちがこの街に惹きつけられたのには理由がある。この素晴らしい街のカルチャーなんだ。ここで生まれるアートや音楽に、俺たちのバンドは影響を受けてきた。ある時点で、俺たちの曲の多くがニューヨーク・シティについてのものだってのがクリアになってきた。曲を選んだり曲順を決めたりしているときに......実際に使うより多くの曲をレコーディングしたから、そのテーマに繋がるものを選んだ。決して予め計画していたことではないけど、いい感じにうまくいったね。それからはっきりさせておきたいのは、このアルバムはニューヨーク・シティに文句をつけているアルバムじゃないってことなんだ。この街が昔ほど素晴らしいところじゃなくなってしまったとか......まぁ、たしかに昔とはずいぶん変わってしまったけど。俺がここに初めて住むようになったころからもね。文句を言うわけじゃないし、不平のアルバムでもないし、ノスタルジックな気持ちで言うわけでもない。ニューヨークでもどこでも、素晴らしい都市は変化しないといけないものなんだ。たしかにこの25年でこの街は大きく変化したけど、俺たちは今もニューヨーク・シティの住民であることに誇りを持っている。それから、このアルバムでは......俺はここに住んで30年近くになるけど、それでも頭のどこかで、自分がニューヨーカーじゃないような気がするんだ。ここで育ったわけじゃないしね。人生の大半ここだけど。このアルバムで俺たちは、というか俺は"ニューヨークの真実の姿を見せたい"という気持ちがあるんだ。アートが好き勝手に成長していける場所。フリーク(奇人・変人)でいたかったらフリークでいいからね(笑)。

-「Do The Get Down」のビデオがとてもかっこいいんですけど、あれがみなさんが考えているニューヨークのイメージですか?

そうだね。ニューヨークの変わっていないところのひとつは、JSBXの心の中にあるものと同じなんだ。アーティストやミュージシャンがやりたい形のアートを作り出していけるということ。自分のアートの赴くままに何でもやれる場所なんだ。さっきの話に繋がっていくけど、俺は人生の大半ここに住んでいても、自分のことをニューヨーカーだとは思っていない部分がある。でも、もう十分、歳を重ねたからこう言ってもいいと思うけど、JSBXもニューヨーク・シティの一部のような気がするんだ。