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INTERVIEW

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JON SPENCER & THE HITMAKERS

JON SPENCER & THE HITMAKERS

Member:Jon Spencer

Interviewer:山本 真由

Jon Spencerが、2018年リリースのソロ作を経て、ついに"JON SPENCER & THE HITMAKERS"として本格始動。今作でも、バンド・サウンドやライヴ・バンドとしてのこだわりを持つ彼らしい、ロックンロール・サウンドが炸裂している。THE JON SPENCER BLUES EXPLOSIONとはまた違った、より初期衝動を感じるいい感じに汚しの効いたサウンドには、思わずテンションの上がってしまうファンも多いはず。PUSSY GALOREでも一緒に活動していたBob Bertに、QUASIのメンバーでもあるマルチ・プレイヤーのSam Coomesなど、実力と情熱を兼ね備えた旧知のメンバーが揃っているので、サウンドの安定感も抜群。今回は、そんな"THE HITMAKERS(JON SPENCER & THE HITMAKERS)"としてのデビュー・アルバムと近年の活動について、Jon Spencerに詳しく訊いてみた。


JSBXが終わってしまって、バンド活動やロックンロールをプレイすることに飢えていたんだ。特にパフォーマンスが恋しかった


-まずは、近況について教えてください。この2年間は世界中で多くの人々にとって、生活スタイルの変更や人生に対する考え方が変わった期間だったと思いますが、どのように過ごしていましたか? また、この間で最も変わったと感じたことは?

お気遣いありがとう。俺も家族も無事で、元気にやっているけど、とても大変な時代なのは間違いないね。俺にとってはアメリカ合衆国の人々のこの試練に対する振る舞いを見て、とても悲しく、フラストレーションが溜まったというか、滅入る時期でもあったね。このパンデミックという試練に対して、この国には自分勝手な人があまりに多すぎる。自分勝手で愚かでもある。しかも、この健康への危機があまりにも急速に政治的なものへと発展してしまったのは、恥ずかしいことだよ。

-たしかに政治的な問題になってしまったきらいがありますね......。

この国では多くの人に共感や同情という概念が大きく欠けている気がするね。とても悲しいことだよ。

-そんな中でもJON SPENCER & THE HITMAKERSとしてハッピーなアルバムを作ってくださって感謝しています。完成おめでとうございます! ところでJON SPENCER & THE HITMAKERSとしては、2020年に盟友、ギターウルフ主催のオンライン・フェス"シマネジェットフェス2020"にもご出演されていますね。

ああ、招待を受けたんだ。参加させてもらってとてもラッキーだったよ。とても嬉しいインヴィテーションだった。俺はずっとギターウルフのファンだったし、そんな彼らにあのバーチャルなフェスに参加してくれって言ってもらえるなんて、ロックダウン期間中の明るい出来事のひとつだった。今君が"ハッピーなアルバム"と言ってくれたけど、曲の中にはこの2年間に起こったことに対してダイレクトに言及しているものもあるんだ。でも全体的にはたしかにポジティヴなトーンの作品になっている。こういうつらい出来事があると、命や人生があることを祝福することの大切さがわかるからね。そしてそれを実行に移すのにとてもいい手段がロックンロールなんだ。

-あのフェスに出演されたことで、ロックンロールが世の中の出来事からカタルシスを得るための素晴らしい方法だということを再認識された感じでしょうか。

間違いなく気づきの手助けにはなった。そもそもギターウルフを見ていると、"生きているってなんてラッキーなんだろう、なんてすばらしいことだろう"と思うしね。

-あの手のフェスに参加することによって、また世界と繋がることができたんですね。

少しはね。......まぁでも正直言って俺は世界と繋がらなくても平気だったというか(笑)、ソーシャル・メディアのことを気にしないで何年間か過ごすのもいいかと思っていたんだ(笑)。

-(笑)2018年にはソロ名義でのアルバム(『Spencer Sings The Hits!』)もリリースしていますが、もう一度バンドでやろうと思ったのには、どういうきっかけがあったのでしょうか?

俺はバンドでやるのが大好きだから、それがなくなって寂しかったんだ。それで『Spencer Sings The Hits!』、"1枚目のアルバム"を作った。あのときと今回は大半が同じなんだ。前回もSam CoomesとM.SORDが参加しているし、ふたりは今回の『Spencer Gets It Lit』にも参加している。今回はBob Bertもいるけどね。この3人は"1枚目のアルバム"のときから一緒にツアーしているメンツなんだ。

-そうでしたね。

アルバムが出てから、このメンバーで全米をツアーしたんだ。ツアーを始めて間もなく、たぶん2、3回ライヴをしたくらいの段階だったと思うけど、俺はコンサート中にこのバンドを"THE HITMAKERS"と呼ぶようになった。その名前が続いているんだ。

-ということは"THE HITMAKERS"というバンド名は、前作の"Spencer Sings The Hits!"というタイトルとかけているのでしょうか。

そう!

-バンドのコンセプトや目指す方向性について教えてください。

そうだな......どちらかのアルバムを聴いてもらえればわかると思うけど、俺個人としては自分の過去を認める部分があると思うね。特に初めてのバンドだったPUSSY GALOREに関して。あれは60年代のガレージ・パンクに近いものがあった。例えばBLUES EXPLOSION(THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION)なんかと比べると、ギターにもっとファズがかかっていてフィードバックも強い。それからノイズも強いよね。金属音のジャンクなパーカッションは直接PUSSY GALORE時代に言及しているんだ。頭の中にサウンドがあって(笑)、ファジーなギターやシンセ・ベース、メタル・パーカッションが鳴っていた。ただ、それがバンドにとって壮大なコンセプトだったかどうかまでは分からないけどね。BLUES EXPLOSIONが終わってしまって、バンド活動やロックンロールをプレイすることに飢えていたんだ。特にパフォーマンスが恋しかった。

-BLUES EXPLOSIONをまたやろうと思ったことはありますか。

もうやれないんだ。選択肢とは言えなかった。メンバーのひとり(Judah Bauer/Gt)が病気になってね。命を脅かされるほどのものではないけど、バンドとして活動したりツアーをしたりすることがとても難しくなってしまったんだ。BLUES EXPLOSIONはあの3人でやってこそだったし、コラボレーションでやっていたことだったから、3人でやれないってことはストップすべきときがやってきたってことを意味した。

-あなたが新しいバンドを始めて、彼(Judah)は喜んでいますかね。

(苦笑)......どうだろうね。そうだとは思うけど......ここでJude(Judah)にスポットを当てることはしたくないんだ。"俺新しいバンド始めたけどどう思う?"なんて聞くのはちょっとね(苦笑)。

-たしかに(苦笑)。

でもそうだね、その答えはイエスということにしておこう。きっとそうだと思うし、そう考えたほうが気分がいいからね。

-ちなみにTHE HITMAKERSは前作から派生したバンドとのことですが、今回、彼らと一緒に新作を作るにあたって、作曲段階から一緒に作業していたのでしょうか?

いや。これもTHE HITMAKERSとBLUES EXPLOSIONの違いのひとつなんだけど......そうそう、俺はソロ・アルバムだった『Spencer Sings The Hits!』をTHE HITMAKERSの1stアルバムだと考えているんだ。

-なるほど。ただ前作はあなた自身の名前で出したと。

もちろん! 君は正しいよ。そうだね、俺ひとりの名前がクレジットされているけど、このバンド、このプロジェクトの始まりは前作だったんだ。BLUES EXPLOSIONは、さっきも言ったけどコラボレーションだった。3人で一緒にプレイしながら曲を作っていって、それぞれのパートで曲に貢献していった。一方THE HITMAKERSの曲は俺ひとりで書いている。"1作目"のときはバンドがなかったから必然的にそうなった。他人と顔を合わせて曲を書くということができなかったんだ。あれは俺がバンドを始めるための試みだった。曲を書いて、友だちを何人か呼んで"俺がアルバムを録音するのを手伝ってくれないか"と聞いてね。

-今回は前回と違って"バンド"があるわけですが......。

あるけど、曲はやっぱり俺ひとりで書いたんだ。ただこの"2作目"ではデモを共有した。携帯で作った大雑把なデモ音源をね。それをスタジオに入る前にSamやBobやSORDと共有したんだ。今は3人とも離れたところに住んでいるから......。

-そうらしいですね。

ああ。バンドとして集まって練習するには地理的な障壁がある状態なんだ(苦笑)。だから今回アルバムを作ると決まったときは俺が全部曲を書いて、ミシガン州ベントン・ハーバーにあるKey Club(Key Club Recording Company)でみんなで落ち合った。今回はアルバム1枚分を超える量の曲を書いたんじゃないかな。当初は2020年4月にレコーディングするはずだったからね。

-そうだったんですね!

でもパンデミックのせいでその案がボツになってしまった。そこからサヴァイヴした曲もあれば、忘れ去られてしまった曲もあるんだ。スケジュールが仕切り直しになったからいくつか新しい曲も書いたしね。最終的にレコーディングできたのは2021年のことだった。

-ということは曲を書き始めたのはコロナ禍前だったということですね。2019年とか。

そう。そうだね。

-その頃にはもうこのバンドが存在していたわけで、サウンドのイメージももっと具体的だったのでは。

『Spencer Sings The Hits!』を出してツアーに出たおかげで、すべてのショーが成長期になって、バンドがどんどん強力になっていった。あの経験が、『Spencer Gets It Lit』を作るにあたって、俺のソングライティングに影響を与えたことは間違いないね。メンバーひとりひとりの強みがわかった状態で書いたから、どんなものを書けばステージ上でうまくいくだろうとか、考えることができたんだ。今回"2作目"ですごくやりたかったことがあってね。それはSam Coomesにたくさん歌ってもらうことだった。Samにはヴォーカル・パートを前回よりたくさん書いたんだ。

-なるほど。実はSamについて質問しようと思っていました。彼はマルチ・プレイヤーですからね。今回彼は歌っていると。シンセサイザーも弾いていますか。

そう、前回と同じでシンセサイザーを弾いている。今回はそれに加えてたくさん歌っているんだ。

-みなさん4人以外にも参加しているミュージシャンがいるのでしょうか。

いや、俺たち4人だけだ。ノー・ゲストだね。

-そうでしたか。先ほど地理的な障壁があるという話でしたが、となるとコロナ禍前から、スタジオ入りする前のオンライン・コミュニケーションは行っていたのでしょうか。

ああ。

-でも今回も、前回と同じく、実際にスタジオに入ってレコーディングしたのですね。

そうだね。スタジオに入る前の非公式なオンライン・レコーディングは一切やらなかった。今使えるテクノロジーからするとかなりオールド・ファッションなやり方だったね。みんなで集まって一緒にプレイする状態を俺が望んだんだ。これはひとつの部屋に集まったバンドのサウンドだよ。