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INTERVIEW

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JON SPENCER & THE HITMAKERS

 

JON SPENCER & THE HITMAKERS

Member:Jon Spencer

Interviewer:山本 真由

-そうですね。このアルバムの親密な雰囲気が個人的にも気に入っています。また、ソロ名義でのアルバム同様にベースの代わりにシンセサイザーを用いた表現は、インダストリアルな雰囲気を出していて、それに初期衝動を感じるプリミティヴなロックンロール・サウンドが合わさって、ジャンルにとらわれない面白さのあるアルバムです。アルバム全体を通したテーマのようなものはありますか? 音でも歌詞でも。

そうだね、曲の中には世の中の情勢や政治的な話、社会的な話を取り上げたものもあるよ。

-すみません、まだ歌詞を読んでいなくて。

例えば「Junk Man」はある種の社会政治的な言動をする人について書いたものなんだ。最悪なのはそういう人がDisinformation(デマの中でも故意に発信されるもの。フェイク・ニュース)をバラ撒くことがあるってこととかかな。今の世の中はデマであふれているから。他の曲にもパンデミック絡みの社会的、政治的な話題を取り上げたものがある。あとはもっとパーソナルな、恋愛や老い(苦笑)について書いているね。トリッキーなのは......これは一緒にプロデュースしてくれて、セッションのエンジニアも務めたBill Skibbeからのアドバイスだったんだけどね。Billは前作もレコーディングした、Key Clubスタジオの共同オーナーでもあるんだ。Bill は俺にこう警告してくれた。"あまりパンデミックのことを書かないほうがいいぞ。2022年にアルバムが出る頃には、誰もコロナの曲なんて聴きたがらないだろうから"って言われて、俺自身も肝に銘じた。いいアドバイスではあったしね。政治的な曲を書くにしても、特定の題材にあまりに具体的になってしまうと曲がある意味限定されてしまう。ある方向性に向けて書いても終わりはオープンにして置いたほうが人に届きやすくなるんだ。

-それもあって感じたことかもしれませんが、JSBX(THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION)とはまた違った自由なスタイルですね。雑多なようで、贅肉をそぎ落としたような、必要なものだけ残したような身軽さがあって。やりたいことが定まっている印象も受けましたが、難しいと感じたことはありましたか?

俺にとってはどのアルバムもチャレンジではなかったんだ。近年作ったアルバムの中でも特に今回が難しかったというわけでもないね。精神を一極集中的にして作ったアルバムではあるし、少なくとも俺自身は本当に細かいディテールまでこだわって作ったつもりだ。と言いつつ、どうやって答えればいいのかわからないけど、様々な要素をまとめることについての話ということかな?

-様々な要素をまとめることもそうですが、そのまとめ方が贅肉を削ぎ落としてやることを定めた印象があったんです。それでいてあなたもおっしゃったようにオープンな面があって、聴き手のイマジネーションに委ねさせてくれてもいます。

なるほど......まぁ、大変なことではなかったよ。うまく説明できないけど、たいていの場合はサウンドが頭の中で鳴るんだ。SamやSORDやBobみたいに共感してくれるミュージシャンや、Skibbeみたいに共感してくれるエンジニアと仕事をしていれば、そんなに大変なことではないよ。

-きっと歌詞を見たらシリアスなことにもいろいろ触れているのでしょうけど、サウンドの全体的な印象は極めてハッピーでポジティヴです。そんなアルバムを作ってくださってありがとうございます。

ありがとう!

-パンデミック以外で、今作を作るうえでインスパイアされた音楽やアート、出来事などはありましたか。

ふむ。......Jonathan Richmanかな。Jonathan RichmanがTHE MODERN LOVERSで作った初期の作品。

-コロナ禍で時間ができて昔のアルバムを聴く機会が増えたとか?

そう、それは絶対にあったね。今回のアルバムを作るにあたってユニークだったのは、(他人の)コンサートを観に行っていなかったことだよ。そのぶんCDやアルバムを聴いたり、ネットで音楽を聴いたりしていたのは間違いない。ただ、人との接触が少なかったからソーシャルな部分が欠けていて。コンサートを観に行くことができなかったので、純粋なイマジネーションから生まれたアルバムということが言えるかもしれないね。

-なるほど。その部分が私たちに伝わっていたのかもしれませんね。

そうだね。それもロックンロールの有名なアイディアのひとつだ。(イマジネーションによって)自分自身を再発明するというね。その最たる例がミスター、Elvis Presleyなんだ。

-ミュージック・ビデオはいかがでしょう? これまでに2本(「Junk Man」と「Worm Town」)が出ていてどちらも興味深いものでした。90年代のアート・フィルムのようなテイストもあり、それもまたこだわりを感じました。こちらもご自身のアイディアですか?

そうかもしれないね......(笑)。俺は携わってはいるけど実際に監督していたわけじゃないから......90年代のフィルムか。なるほどね。

-前作が実質的1stアルバムだったとはいえ、今作はJON SPENCER & THE HITMAKERSとして、本格始動の意味もある1枚だと思います。今後は、今作の楽曲を中心としたツアーなど、ライヴ活動も積極的に行う予定ですか?

ああ、4月からツアーに出るよ。初日が4月11日で、北米をまわるんだ。6月にはヨーロッパに行く予定だよ。今年いっぱいはいろいろコンサートやツアーをするんだ。まぁ、状況が大丈夫であればの話だけどね。

-大丈夫であることを願っています。

パンデミックがぶり返さないといいけどね。さらにはウクライナの問題もあるし......。

-そうですね......。

まぁ今のところはライヴ活動を再開するつもりでいるよ。俺はずっとライヴがメインのミュージシャンだったし、このバンドもそういう意味でまったく同じだからね。

-ちなみにツアー・メンバーも同じなのでしょうか。

ああ。ただ、ひとりだけ例外がいる。SORD......あいつは『Hits!(Spencer Sings The Hits!)』と今回と両方に参加してくれたけど、しばらくグループを休まないといけない事情があってね。代わりに、少なくとも今後1年間はJanet Weissが叩いてくれるんだ。Janet WeissはSLEATER-KINNEYというバンドにいたことで知られていて、QUASIでもプレイしているんだ。

-そうでしたね。

JanetとSamが長い間いるバンドがQUASIなんだ。Janetが一緒にプレイしてくれることになってとても楽しみだよ。

-たしかツアーの日程の一部がQUASIと一緒だったような?

そうなんだよ。指摘してくれてありがとう。可能な限り一緒にツアーするよ。あっちはあっちのセットをやって、それからTHE HITMAKERSがTHE HITMAKERSのセットをやるんだ。

-ということはJanetがツアー中大忙しになりますね(笑)。

JanetとSam、ふたりとも大忙しだよ(笑)。

-日本盤では、ボーナス・トラックとして、先述の"シマネジェットフェス2020"出演の際の音源が7曲も収録されていますね。日本盤だけなんだかすごく豪華というか、特別感のある内容になりましたが、こちらを収録することになった経緯は? どうしてそんなに寛大なことを(笑)?

そりゃ、日本のみんながずっと優しくしてくれたからだよ。BLUES EXPLOSIONにも、BOSS HOGにも、HEAVY TRASHにも......。そんな人たちに恩返しをしようと思うのは自然なことだよ。

-うわぁ......ありがとうございます! 来日が決まるまでの間、日本のファンはこれを聴いてリハーサル的な感じといいますか、どんなライヴになるかシミュレーションすることができますね。ちなみに今作を引っ提げた来日の計画はありますか。

まだ何も決まってはいないけど、もし決まったらすばらしいことになるね。

-次に日本に来たら、どんなことにチャレンジしたいですか? また、ギターウルフ以外にも、共演してみたい日本のバンドやミュージシャンがいれば教えてください。

KING BROTHERSに会えるのはいつも嬉しいね。関西出身のレジェンドなバンドなんだ。共演したこともあるし、もう長い付き合いだよ。

-そうなんですね。また、今後も新曲や新作を作るつもりはありますか。

そうなることを願っているし、そうなったら最高だよね。

-すでに"次も作ろう"なんて話になっていたりするのでしょうか。

いや(笑)。今は今回のアルバムのプロモーションに専念しているからね。これからツアーも始まるし(笑)。

-ちょっと聞くのが早すぎましたね(笑)。

最後にコンサートをしてからもう2年にもなるし、緊張してもいるけど、とても楽しみにしているんだ。

-では最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

みんなにはとにかく"ハロー"だね。ニューヨークからたくさんの愛を! みんなが健康でいてくれていること、そして早くまた一緒にロックンロール・パーティーを楽しめることを願っているよ。