Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Overseas

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION

2015年04月号掲載

THE JON SPENCER BLUES EXPLOSION

Member:Jon Spencer (Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

-今回はもうひとつファンク/R&B/ヒップホップに取り組むというテーマもあったそうですね。

そうだね。今までもその要素はあったけど、今回は心のどこかにずっとダンス・パーティーみたいなもの、ダンス・アルバムになるだろうなという予感があった。過程の間中ずっとそういう感覚を抱えていたんだ。それがスタジオ選びにも影響したと思うね。今回はブルックリンのDaptone Studiosでレコーディングしたんだ。Daptoneというのは言わずと知れたソウルのレーベルで、Charles Bradley、Sharon Jonesなんかがいるんだ。そこでレコーディングしたいという思いが強かった。そういうこともあって、今回はソウル・ミュージックの影響が濃く出たね。他にはStax Recordsの作品にも影響されている。ミキシングはハーレムでやったんだ。アンダーグラウンドのヒップホップで有名なところでね。昔ながらのソウルと新しいアンダーグラウンドのヒップホップの橋渡しをしたような形だな。

-なぜ、今、ファンク/R&B/ヒップホップだったんでしょうか? ジャンクなロック・サウンドとブルース/ファンク/R&B/ヒップホップの融合こそがJSBXの真骨頂だと思うのですが、今回、原点回帰という気持ちもあるんでしょうか?

たしかにこのアルバムにはソウルやヒップホップの影響が他より色濃く出ているかもしれないけど、他の素晴らしいソースからの影響もたくさんある。例えばロカビリー、カントリー・ウェスタン。はたまたフリー・ジャズ、パンク・ロック、ノー・ウェイヴ、ブルース。自分たちが影響のソースとして浸りきっているものを完全にシャット・オフすることはできないと思う。それから、JSBXが曲を書いたりアルバムを作ったりするときというのは、あまりオープンな話し合いをしないんだよな。3人で計画を立てて"よし、今度は前よりもっとファンキーなものを作ろう"だとか、そういうのはあり得ない。"NEW YORK DOLLSみたいな曲を作ろう"とか、そういうトークがないんだ。俺たちのやることはすべて実際の行動から始まっている。だから......そうだね、ときにはこういうふうに物事うまくいくってこともあるわけだ。

-ファンク/R&Bにはいつ出会い、これまでどんなアーティストを聴いてきましたか?

いつごろ出会ったなんて、自分でもわからないよ。俺はニューイングランド地方の小さな町出身だったから、多分テレビを通じてだろうな。自分でも気がつかないうちに見てたんだろう。俺のふるさとは別にファンキーな場所じゃないからね(笑)。俺は70年代に子供時代を過ごした。俺のところみたいな田舎でも、テレビはアメリカ社会のメインストリームの一部だったんだ。自分から聴くようになったのは、多分ティーンのころだろうな。80年代の初めで、ヒップホップが出だしたころだ。今でいうオールド・スクールだね。その後、Staxのアーティストみたいなソウル・アーティストにのめり込んでいった。Rufus ThomasとかOtis Reddingとかね。

-最近、少なくない数のロック・バンドがDaptone Studiosでレコーディングしていますが、そこには"何"があるんでしょうか?

いいスタジオだからね。ホームメイドな感じで、ファンキーで。音楽のファンクみたいなファンキーとは違うけど(笑)。ラフな感じという意味でのファンキーだ。とてもいいスタジオだよ。スタッフもみんないい人たちだし、自分たちのやっていることをちゃんとわかっている。中でもWayne Gordonはファンタスティックな仕事をしてくれた。みんながあそこに行くのは、シンプルな場所だからじゃないかな。あまり複雑な場所じゃないけどサウンドが素晴らしいし、ユニークな場所だよ。

-Daptone Studiosならアナログ・レコーディングですよね?

ああ、もちろん。8トラックでね。さっきも言ったけど、ホームメイドなスタジオでとてもファンキーで、"1972年の最新鋭!"という感じなんだ(笑)。スタッフは扱い方をちゃんとわかっているから、狙い通りのサウンドを出してくれるんだ。JSBXはそもそもオールド・ファッションな感じの音が好きだし、オールド・ファッションなレコーディングが好きだから、アナログ・レコーディングも俺たちにとっては別に目新しいことではなかった。むしろとても馴染みがあるものなんだ。Daptoneで作業するのも楽しかったし、エンジニアのWayne Gordonとの作業も良かった。それにDaptone Recordsのオフィスも同じ建物の上の階にあるんだ。そこに出入りして、Daptoneのスタッフと過ごすのも楽しかったね。音楽について語り合ったり、エピソードをシェアしたりして。お土産にDaptoneの作品までもらったよ。いい経験だったね(笑)。

-アナログ・レコーディングは初めてではないとのことですが、今回、新たに挑戦したことはありましたか?

さっきも言ったけど、Daptoneは8トラックの設備だから、いろいろなものが制限されてくるんだ。俺たちはトリオだけど、例えばドラムを録ろうと思ったらマイクを数本使う。それぞれのマイクが別々のトラックに録音されてね。でもDaptoneはオールド・スクールだから、ドラムは通常1本のマイクで録音するんだ。と言っても問題はなかったよ。Wayneがうまくやってくれたからいい音が録れたしね。俺も、アルバムのミックスをやったときに、ドラムのトラックが通常6~8あるのに対して2~3しかなくてもこんなにいい音ができるんだって嬉しい驚きがあったよ。ミックス中も制約があった実感はまったくなかったんだ。