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INTERVIEW

Japanese

小林太郎

2013年01月号掲載

小林太郎

Interviewer:沖 さやこ


-小林さんはいい意味で若者らしくない無骨なロックのイメージが世間的には強いと思うんですけど、『tremolo』は曲の振り幅がとても広いですね。

実は「星わたり」はインディー時代の1st『Orkonpood』に入ってる曲よりも古い、何よりも最初にできた曲なんです。歌詞も構成も全て、最初のシンセからメロディまで全部が俺の頭のなかに鳴ってて、それを録り直しただけくらいの勢い。でも鍵盤って自分が弾けたらいいんだけど弾けないし、入れることでそれ自体が意味を持ってしまうことがあるじゃないですか。だからちょっと慎重になりたくて。まず俺はバンド上がりだからインディー2枚でバンド・サウンドを勉強して、『MILESTONE』は久し振りのソロのアルバムだったんで、小林太郎の名刺代わり的な、俺をもう1回そのまんま出すようなアルバムを作って勉強できて。やっと今回、いろんなものを素直に、デモの段階から書いてみようと思ったんですよね。『MILESTONE』も手がけてくれたアレンジャーさんと今回も一緒に仕事させてもらって、鍵盤のイメージもいろいろ相談して、素晴らしいものをいっぱい入れられたんですよ。俺の頭のなかで鳴ってたフレーズがようやく、イメージ通りにやっとできたなと思ってます。今までは"こういうことがやりたいけどまだできない"っていう感じでしたね。

-じゃあ、最初からこういうアルバムが作りたかったということなんですね。

そうですね。バンドをやる前は僕、CHEMISTRYやチャゲアス、サザン、ゴスペラーズみたいな歌モノが好きで。BUMP OF CHICKENを中学のときに知って"バンドもかっこいいな"と思って。BUMP OF CHICKENもロックだけど、歌が映えてるから俺も引っかかったのかもしれない。それから洋楽を知って、NIRVANAを好きになって。Kurt Cobainはみんな歌が下手っていうけど、ものすごいかっこいいと思うんです。人にかっこいいと思わせる声を出すのって難しい、この人はすごく歌がうまいなぁって。だから曲を作る上で別にロックであるとかそういうことはどうでもよかったんです。ロックも好きっちゃ好きだけど、歌モノが好き。やっとそういう方向に振り切れたかなーって感じですね。

-ヴォーカルが曲によってまったく違う光り方をしているので、そういう多面性も面白いです。感情の込め方も1曲1曲違いますし。

例えば「INDUSTRIAL LADY」ではKurt Cobainが好き。「愛のうた」では藤原基央さんが好き。「艶花」では安全地帯が好き。「答えを消していけ」ではB'zの稲葉さんが好き。「輪舞曲」ではチバさんが好き。「目眩」ではチャゲアスが好き。「饒舌~interlude~」では洋楽が好きっていうのが出てて......全部違うんですよね。曲が自然と浮かんできたから。それ自体は俺はわからないんですよ。浮かんだから書いただけであって。もしかしたら無意識でバランスを見てるかもしれないけど......でも取り敢えず、すっと浮かんできたものを何も考えずに歌って、弾いてみようって。だからそれぞれの曲に合った歌い方をしていこうと思ったんですけど、そしたら今までのアルバムにないくらい、歌の表現を考えられたんですよね。それもすごく良かったなって。

-アルバムの中盤に収録されている「饒舌~interlude~」は毛色も違っていい場面転換になっていると思います。

『MILESTONE』のときも俺が作ったデモまんまのインタールードを入れさせてもらって。『tremolo』も『MILESTONE』とぐっと変えるんじゃなくって、いろんな曲がありながらも俺自身がそのまま出るようにしたくて。作曲ソフトをフルに使って、いろんな音を入れたんです。他の曲は生感が宿ってるとけど、「饒舌」は逆でちょっと冷たい感じ。打ち込みで遊べたんで、そういう面もやっていきたいですね。

-コンポーザーの側面が色濃く出たものになっているんですね。歌がフィーチャーされた楽曲を多く作る小林さんのなかでは新しい風になっているのではないでしょうか。

もともと歌詞を書くのが大の苦手だったんで、だからこそ歌詞は悩んで悩んで。今は前よりかは全然スムーズなんですけど、それでも日本語は意味を持ちすぎるからこそ、音楽がそれに引っ張られるのは縛られる感じがして嫌だったんですよね。歌詞がある曲もいいけれど、純粋に音楽として楽しめるような。洋楽を聴くときに歌詞を聴く日本人ってあまりいないじゃないですか。でも何か、日本人でも音楽をしたいんだったら、歌詞なくてもいいんじゃね、っていう思いもあったので、(インタールードは)やれて良かったなって。

-でも小林さんの書かれる歌詞ってメッセージ性の強いものですよね。

そうですよね(笑)。その前までは、自分のなかで歌詞のフレーズが出て来ても、どんな歌詞の繋がりや物語にすればいいかわかんねえし、作るの大変だなーって思いながら何とか作ろうとして作れないっていう感じだったんですけど。最近はフレーズや単語が出てきたらそのまま書いて、あんまり繋がりとかも意識しないで、止まるまで書く。パッと出てるときに敢えて止めて"本当にこれでいいんだろうか?"って思うことをなくしたんですよ。そしたら結構すらすら出てきて。だから考えてこういうことを書いたわけではなくて。インディーズの2枚って自分で布をかぶせてた部分があったからわかりづらかったけど、『MILESTONE』からはそのときの自分の心情がそのまんま出てるのかなーって。