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INTERVIEW

Japanese

毛皮のマリーズ

2010年04月号掲載

毛皮のマリーズ

Member:志磨遼平(Vo)

Interviewer:佐々木 健治


-じゃあ、そうなってからは曲もどんどんできたんだ?

こういうのは楽チンですね。スタジオに入ればできる。こういう音楽は得意ですね。

-最初にできたのは?

「それすらできない」と「バンドワゴン」ですね。それができてからはもう一杯できたので、じゃあ、スタジオでやりましょうとなったんです。我々は、スタジオで新曲をやって、ライヴでもやって、その新曲が貯まったらアルバムを出しますというタイプじゃないんですよ。僕が全部作るから、僕個人のストックがたくさんありまして、次のアルバム制作に取り掛かる時点で、そのストックから選ぶんです。その選んだものを皆に伝えるんですね。その時も、確か「それすらできない」と「バンドワゴン」を最初に皆に聴かせましたね。だから、このアルバムの雰囲気を伝えるうえでは、この2曲が一番分かりやすいかもしれないですね。

-なるほど。じゃあ、一曲目の「ボニーとクライドは今夜も夢中」は、ファンからもらった手紙がタイトルのもとになっているんですよね。

そうです。「あなたは私のクライドです。一緒に銀行強盗してください」みたいな(笑)。

-そのファンレター、凄いところから題材を持ってくるよね。それは、返事をしたの?

いや、してないですけど、この曲が立派に返事でしょう。それでまあ、僕の中で「今夜系」っていうジャンルがありまして。まずジュリーの「あなたに今夜はワインをふりかけ」っていうのと、ケンヂ&ザ トリップスさんの「ブラボージョニーは今夜もハッピーエンド」っていう曲だったり、RCサクセションの「チャンスは今夜」とか。今夜系というのがあるんですが、毛皮のマリーズでは今夜系がないなと思って。一曲くらいほしいと思って、タイトルをつけたんですよね。でも、この曲がアルバムのリード曲になるとは思っていなかったんですよね。

-志磨君の中では、何がリード曲だったんですか?

最初、僕の中では「BABYDOLL」のつもりだったんですよ。「BABYDOLL」をリードにしようという気持ちが曲出しの段階であったんですよね。その段階ではアレンジとか固まっていなかったので、NATSUMENのA×S×Eさんに協力してもらって、いろいろとアレンジをして曲をビルドアップしていったら、遂には5分を超えてしまったんですよね、力入れ過ぎて。ちょっとリード曲としては長過ぎる。それでリード曲は最終的に「ボニーとクライドは今夜も夢中」になったんですよ。

-でも、この曲がリード曲っていうのは分かりやすいですよね。

そうですよね。納得というか。3分あるかないか、それくらいの曲だし。デビュー曲としては、3コードプラス1っていう感じもいいですね。THE BEATLESもシングルはロックンロールしか出したことがないんですよね。「Yesterday」とかもシングルじゃないんですよね。それは鉄則だったらしくて。ロックンロール・バンドなんですよって言うところで、デビュー・シングルとしてはいいですよね。

-自分達もロックンロールしかシングルにしたくない?

できればそうしたいですけども、まあ、そこは臨機応変に。

-じゃあ、忌野清志郎さんの影響って、やっぱり大きいと思うけれど、志磨君にとってはどういう存在?

清志郎さんはやっぱり、その当時は分からないですし、ご本人に近い方がどうかは別として、あれだけいつもセンセーショナルな感じだったに、誰も傷つけていない感じが凄く好きなんですよね。誰も悲しい思いをさせなかったところが。あの感じはなかなかないんじゃないですかね。いろいろな音楽がありますけど、清志郎さんのあの歌って言うのは、他にないんですよ。シンプルに言うと、誰もが手を変え、品を変えていろいろな曲を作っているだけで。しょうもない歌を作っても仕方がないので、歌にしろ、文章にしろ、感動を残したいとか、勢い余って曲にするわけで、つい歌にしてしまった、つい声に出してしまったって言うのが理想なわけで。じゃあ、そこまで感動するということが人生の中で起こるということが、一体どういう時かと言うと、やっぱり愛だ、夢だ、友情だそれくらいなんですよね、やっぱり。それ以外のことは何だかんだ言って、そんな大したことではなくて。だから、我々が歌うべきことは、実は多くはない。本当に大切なもの、本当のことだけを歌おうと思うと。それで、清志郎さんは本当にそのことしか歌っていない。愛し合うということ、夢を持つということ、平和を願うということ。この3つしか歌っていないのに、よくもあれだけたくさんの作品を出したと思いますけど。それしかないんですよね。目指すべきところと言うか、自分が歌うこととして考えても、それしかないなとは思いますよね。

-「バンドワゴン」の歌詞は、ライヴのことを歌っているけれど、ライヴはやっぱり、楽しみですか?

そうですね。言い方悪いかもしれないですけれど、出て行って、やるだけですからね。誰も悪くない。僕がステージに立てば、もうオッケーというところが凄いところで。もちろん、全責任が僕にあるわけですけれど、何をやってもいいって言うのは、やっぱり好きですね。凄く近いわけだし、レコーディングって言うのは凄く難しくて、音楽だけで何かを伝えないといけないから。できるだけいいものを残そうと思うし。ライヴって、人間関係と言うか出会いですからね。音楽は本当にBGMでしかなくて。僕達に会いに来た人、僕たちも家でやっているわけではないから、出向いていって。たまたま、待ち合わせ場所を決めているだけで。どこそこのライヴ・ハウスねって言う。もうそれだけなんですよね。何も緊張することないんですよ。10代の頃は、やっぱりいい演奏がしたいし、間違えたくないっていう緊張はあったんですけど、今はもうそういうことはないですね。今日はどんな人が来るのかなっていうことだけが楽しみですよ。それで会ったらもちろん、はじめましてとなるわけで。僕が伝えたいこと、聞きたいことがあるわけで。時間だけ決めておいてね。その中で、その人とできることは何でもしたい。だから、「バンドワゴン」は早くライヴでやりたいと思っていましたね。あ、思い出した!「バンドワゴン」の「どうせ会えたんならすることしたいわ」って言うフレーズ。これ、なかなかの名フレーズだと思いますけれど、札幌でのライヴ中に思いついたんですよ。

-へえ。

音符に歌詞をはめるじゃないですか。最初はずっと「しょうがないったらありゃしねえぜもう」っていうフレーズでやっていたんですよ。だけど、その札幌でのライヴが凄く良くて。お客さんも僕も凄いことになっていて。もう飛行機に乗って、遠くに行っているわけですよ。それで「どうせ会えたんだったら、もうすることしたいわ!」って叫んでて。それで、今のいいな。使おうと思って。それで、後から「バンドワゴン」のあそこに使おうと思ったんですよね。これは本当に、そういう気分です。することしてから帰ろうみたいな。わざわざそこまで歩いて行ってすれ違ってもいいのに、またわざわざ立ち止まっている。わざわざ同じ時間を重ねるというのは、いいなと思って。そういう感じじゃないですか。北海道で生まれた人間と札幌で生まれた人間がわざわざ出会っている。毎回、それは何かしないと。2時間とか、イベントなら30分とか。ほらもう時間ないし、することしようと。だから、ライヴは本当に好きだし、楽しいです。昔は敵みたいなのを作っていたんですけど。見定められているというか、試されている感じ。10代の頃は、周りが年上が多いから、舐められたらアカンというのもあるし。今はもう会いに行く感じ。

-リラックスできているんですね。

そう。それ以上でもそれ以下でもない。人と出会って何かをするというのは面白くないわけがないですから。わざわざ出会ったんだから、遊ぼうぜという感じです。うん。だから、今回のリリース・ツアーとかこれからのライヴもめちゃくちゃ楽しみですね。