Japanese
ずっと真夜中でいいのに。
2021年02月号掲載
Writer 金子 厚武
"ネット発"が時代のキーワードになった2010年代後半を経て、もはや彼ら/彼女たちこそがJ-POPの中軸を担っていることが証明された2020年。現在では、やや曖昧だった"ネット発"という言葉が、YouTube発なのか、TikTok発なのか、あるいはニコ動由来なのかといったように細分化されると同時に、各アーティストそれぞれの個性にフォーカスしていくべきフェーズへと突入したと言える。ずっと真夜中でいいのに。(以下:ずとまよ)の2ndフル・アルバム『ぐされ』は、2018年に「秒針を噛む」を投稿して以降、常に"ネット発"の主要アーティストとして語られてきたずとまよが、シーンとしての話題性ではなく、作品の確かなクオリティによって、いよいよ表舞台へと歩みを進める作品である。
ACAねの作り出す楽曲は、「秒針を噛む」の時点で様々なバックグラウンドが透けて見えると同時に、確かな記名性を持ったものであったが、本作ではずとまよとしてのオリジナリティがより強固なものになっている。昨年に発表された「お勉強しといてよ」や、「低血ボルト」こそ、ニコ動由来のギターやピアノによるリフレインが用いられているが、それ以降の楽曲はコード進行、リズム・パターン、構成、ミックスに至るまでどの曲も十分に練られていて、曲調も非常に多彩。中でも軸となっているのが、ドラマチックなストリングスを用い、ファンク、ディスコ、ヒップホップなどにより接近した楽曲で、小沢健二から星野源へと受け継がれた、"歌謡曲×ブラックミュージック"としてのJ-POPの最新形と、ボカロ、アニソン、ゲーム音楽などの文法が絶妙なバランスで混ざり合っている。
ずっと真夜中でいいのに。『お勉強しといてよ』MV(ZUTOMAYO - STUDY ME)
ずっと真夜中でいいのに。『低血ボルト』MV(ZUTOMAYO - FASTENING)
Open Reel Ensembleによるものであろうオープン・リールを使ったスクラッチと、三味線を交ぜたトラックの上でラップをする「機械油」や、タブラをフィーチャーした「繰り返す収穫」のような、アルバムならではの自由なアイディアを感じさせる楽曲も面白い。すでにライヴの実績もあるように、演奏には実力のあるプレイヤーたちが参加し、フィジカルが強調されることによって、説得力を増している部分も大きいだろう。そして、抑えたトーンの歌声で歌われるメランコリックなメロディと、言葉遊びを駆使しつつも、焦燥や内省を感じさせる歌詞が生み出すエモーショナルな熱が、日本人的な感性に響くのだ。
"ぐされ"というタイトルは、今なお終息の兆しが見えない混沌とした状況に対する、"後腐れ"のようなムードも感じさせつつ、やはり"聴き手の胸にぐさりと刺され"というACAねの本作に対する強い想いの表れだと考えられる。音楽的な視点で言えば、その想いが形となって刻まれているのが、各楽曲のアウトロではないだろうか。
サブスクでは一般的にイントロや序盤でいかに掴むかが重要とされているが、それはあくまでプラットフォーム上の要請であり、その考え方は楽曲がインスタントに消費されてしまう危険性と隣り合わせだ。ずとまよの楽曲も印象的な入りの曲は多いが、本作ではむしろアウトロに耳を奪われる瞬間が多く、「暗く黒く」のストリングスのリフレインを筆頭に、「勘ぐれい」の最後に出てくる、"ぼんぼんぼらんぼんぼん"というコーラスとガット・ギターや、「ろんりねす」のジャジーなピアノ・ソロもそう。これらは楽曲を最後まで味わってほしいという作り手の願いの表れであり、これらのアウトロがあるからこそ、その曲の印象がぐさりと刺さって、何度でも繰り返し聴きたくなるのだ。
ずっと真夜中でいいのに。『暗く黒く』MV(ZUTOMAYO - DARKEN)
ずっと真夜中でいいのに。『勘ぐれい』MV(ZUTOMAYO - Hunch Gray)
ずとまよが魅力的な理由として、こうした創作に対する真摯な姿勢はとても大きい。現在YouTubeにはずとまよの"弾いてみた"や、曲解説が数多くアップされていて、この傾向も"ネット発"ならではだが、アニメによるミュージック・ビデオの2次創作も含め、ずとまよ関連の動画は特に多いように思う。これはACAねがクリエイターを刺激するアーティストであることの証であり、音楽性だけでなく、この部分こそがやくしまるえつこや川谷絵音と通じる部分だと感じる。『ぐされ』という作品は、そんなずとまよが大衆的なポップスとしてより多くのリスナーをも巻き込んでいく、メモリアルな作品となるはずだ。
ずっと真夜中でいいのに。『胸の煙』MV(ZUTOMAYO - One's Mind)
ずっと真夜中でいいのに。『ぐされ』Trailer(ZUTOMAYO - GUSARE)
▼リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。
2ndフル・アルバム
『ぐされ』
2021.02.10 ON SALE
[EMI Records]
【"強"初回限定DELUXE盤】(2CD+GOODS)
UPCH-29381/¥9,000(税別)
amazon
TOWER RECORDS
・本編全曲オフヴォーカル(インスト)CD付き
・にらちゃん(約15cm)&うにぐりくん(約5cm)特製フィギュア
・MVアート&ACAね一問一答や制作ノート切れ端コピーなど豪華BOOK
・おもちゃ外箱パッケージ(中身は魔導書パッケージ仕様)
・[ランダム1000枚限定封入]ACAね 直筆サイン入りポストカード
【初回限定LIVE盤】(CD+BD(STREAMING/DL))
UPCH-29382/¥5,800(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
・オンラインライブ「NIWA TO NIRA」2020.8.6 完全収録(幻のアンコール「暗く黒く」含む)[約60分]
・ACAね ASMRの旅 滝と焚火編 [約60分]
・魔導書パッケージ仕様
※プレイパス(R)対応
【通常盤】(CD)
UPCH-20570/¥3,000(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[CD]
1. 胸の煙
2. 正しくなれない ※映画『約束のネバーランド』主題歌
3. お勉強しといてよ
4. 勘ぐれい ※不可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』主題歌
5. はゔぁ
6. 機械油
7. 暗く黒く ※映画『さんかく窓の外側は夜』主題歌
8. MILABO
9. ろんりねす
10. 繰り返す収穫
11. 過眠
12. 低血ボルト
13. 奥底に眠るルーツ
Bonus Track
暗く黒く[Twin Piano Live ver.]
※収録曲は全形態共通(DELUXE盤のみオフヴォーカル(インスト)入り)
配信はこちら
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