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Japanese

ずっと真夜中でいいのに。

Skream! マガジン 2025年02月号掲載

2024.12.11 @神奈川県民ホール 大ホール

Writer : 吉羽 さおり Photographer:鳥居洋介

10月より全国23ヶ所35公演を回るホール・ツアー"やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~"を行った"ずっと真夜中でいいのに。"。今回のツアーはタイトルの"2"にあるように、2020年11月に東京ガーデンシアター(2デイズ)で開催した"やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)"、そしてコロナ禍での緊急事態宣言等がなければ2021年に全国を回る予定だったツアーのその後が舞台となった。ACAねのMCによれば、月日が経って当時(舞台となった)コンビニにたむろしていたヤンキーたちは"スナネコ建設"へと就職、その現場を仕切る棟梁がACAねだという。今回のステージ上にはクレーン車がある等、高い足場が組まれた建設途中の現場が再現され、観客が開演を待つ間もトンカントンカン作業音が鳴り響いている。一見ハザード・シンボルに見える中央の物体は、巨大なファン。様々な電飾が工事現場仕様だったり、Open Reel Ensembleの2人が誘導棒を振って盛り上げたりと、今回も細かなディテールまで世界観が作り込まれていて、大所帯のメンバーのプレイ以外にもあれこれと見たくなってしまって、目が忙しいステージだ。ここではツアー後半となった12月11日の神奈川県民ホール 大ホールでの公演をレポート。

2020年の"やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)"を思い起こさせる、懐かしの賑やかなバイクの爆音をSEにバンド・メンバー、そしてACAねが登場して「JK BOMBER」でスタートしたライヴは、前回のツアー当時の曲が中心となったラインナップとなった。しかしそこは、常にアップデートをし続けるずっと真夜中でいいのに。らしく、新たなアレンジが施される等、数々のツアーを作り上げてきたバンドとの息の合ったアンサンブルや遊びがふんだん。タイトルにある"スナネコ建設の磨き仕上げ"そのままに、馴染みのある曲が新たな輝きを放つ。ミラーボール煌めく「ヒューマノイド」から、より歌謡曲テイストの濃厚な「はゔぁ」、そして前半で豪快に盛り上げたのはロックンロールの定番である「Johnny B. Goode」(Chuck Berry)的なギター・リフを盛り込んだ間奏パートで、サウンドの熱を加速させた「馴れ合いサーブ」。ショーアップされた惹きつけるプレイに、観客のボルテージも上がる。

MCではACAねが改めて今回のツアーについて語り(今回は、棟梁、職人らしい口調で盛り上げる)、中盤は観客が持つしゃもじ(ライヴ・グッズ)と一緒に拍子を取り、シンガロングを煽るデビュー曲「秒針を噛む」や、10月にリリースした最新ミニ・アルバム『虚仮の一念海馬に託す』から、「クズリ念」を披露した。アーティストや書き手、あるいは1人の人間としての切なる思いや、少しずつ心が削がれるような痛みが、その曲に滲む。この中盤では、"日替わりお昼休憩"として3曲の中から1曲を披露。それもその場でACAねが曲の味付け(=アレンジ。それも壮大な物語からバンドが味付けを汲み取る形)をオーダーし、寸劇も交えながら仕立てていくという、メンバーとの阿吽の呼吸がなければできないなかなかの難題だ。

この日は「Dear. Mr「F」」を中華風の味付けに。エモーショナルなトランペットのソロからクライマックスに向かい、大団円を迎える劇的なアレンジとなった。アルバムが増えることで、必然的にライヴで演奏する機会が減る曲も増えてしまうが、こんなふうにいろんな曲にスポットが当たるのはツアーならではの楽しみだろう。ここから最新作よりシュールなポップ・チューン「海馬成長痛」、そして浮遊感のあるオープン・リールの音響や、緩急のあるビートで観客を酩酊させる「彷徨い酔い温度」へと続き、心地よい高揚感のまま「お勉強しといてよ」で会場一体のシンガロングを起こす。

終盤では"自分を奮い立たせるような曲を作りました"と「TAIDADA」へ。ライヴでの「TAIDADA」はバンド・アンサンブルの重厚感、ファットなビート、躁的なピアノやギターのリフの圧が観客に襲いかかってくる感覚で、その興奮が観客のジャンプを高くする。巨大なファンが回ってステージからエネルギーを飛ばすような「あいつら全員同窓会」、さらに、ゴージャスなアレンジが曲のボルテージを上げていく「勘冴えて悔しいわ」へと突入し、勢い良く噴き出したスモークでステージは真っ白に。"こうして音楽で繋がれていることは励みになっている、いつも本当にありがとう"。ACAねがそう語ると、ラストの「ミラーチューン」へと突入する。たくさんのミラーボールが会場を眩い光で満たす、その祝祭感でACAねの透き通ったハイトーンや扇風琴の音色が輝きを増し、恍惚感に包まれるように締めくくった。

アンコールでは新作からの「虚仮にしてくれ」やメンバー紹介を交えた「嘘じゃない」、「正義」、さらにMETALLICAの「Enter Sandman」のオマージュが効いた「勘ぐれい」へと最後まで惜しみなく、遊びたっぷりに魅せるステージとなった。ACAねは、"次、アリーナあっから、よろしくぅ!"とヤンキー口調で言うと(というよりそれはもはや昭和のツッパリではないかと思うのだが)、再びけたたましくバイクを吹かして、ステージを後にした。このホール・ツアー後には、3月から最大規模となる全国6ヶ所、12公演のアリーナ・ツアーがスタートする。"やきやきヤンキーツアー2 ~スナネコ建設の磨き仕上げ~"とは、内容が変わったツアーとなるようだが、次はどんな世界で最新形のずっと真夜中でいいのに。を見せるのかが楽しみだ。


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