Japanese
ずっと真夜中でいいのに。
2022年09月号掲載
Writer 阿部 仁知
ここで作り、作られる"ZUTOMAYO FACTORY"――"鷹は飢えても踊り忘れず"に潜む今を悔いなく踊る親密な関係性
ガムランのような音色? レトロなモニターとプログラミングのソース・コード? 森、いや蔦? 檻? 工場? 開始から1分ほど経って客席が映るまで、何がなんだかわからなかった。でもライヴが進むごとにどんどん、ずっと真夜中でいいのに。(以下:ずとまよ)の不思議な世界にのめり込んでいく僕がいる。昨年の『CLEANING LABO「温れ落ち度」』に続く、2枚目となる映像作品『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』は、コンセプチュアルな演出や世界設定が細部に至るまで通底する、いわば総合芸術のような映像作品だ。
今年の4月16日と17日に行われた、過去最大規模となるさいたまスーパーアリーナでの2デイズ公演の2日目を収録した本作。8月18日に全国22ヶ所の映画館にて実施された一夜限りの先行上映会"ずっと真夜中でいいのに。大音響鷹踊ライブ上映会"には足を運べなかったが、筆者の僕はというと7月の"FUJI ROCK FESTIVAL '22"で、初めてずとまよのパフォーマンスに触れ強い衝撃を受けたことを今もよく覚えている。海外のアーティストが目当てで、僕のように初見の人も多かったであろうフェスティバルの空間をまるごと虜にしていたのだから、熱心なファンはもとよりあの場にいた人にとってもこのリリースは絶好のタイミングだ。
"フジロック(FUJI ROCK FESTIVAL '22)"ではポップで鮮烈な楽曲や初めて目にする楽器(らしきもの)の数々、そして何より、まったく輪郭を掴めないACAねの謎めいた存在感に心を奪われてしまったわけだが、本編収録の[day2 "ob_start"]約2時間6分、魔導書パッケージ仕様の初回限定盤に収録された[day1 "memory_limit = -1"]も合わせると4時間を超える本作は、ずとまよの世界観をより深く濃密に味わうことができるだろう。そのポイントをひもといていく。
まず何より圧倒されたのは総勢18人となる大所帯のバンド・セット。ギターやベース、キーボードやツイン・ドラムといった核となるセクションに加え、ホーン隊の3人、オープン・リールやTVドラムといった見た目にも派手なずとまよバンドの真骨頂、そして"フジロック"では見られなかったストリングス隊と津軽三味線も合流した、ワンマン公演だからこその贅沢なセットだ。本編収録の[day2 "ob_start"]のみスペシャル・ピアノも参加し繰り広げられる濃厚なパフォーマンスは、何かを考える前に目が釘づけになってしまうことだろう。
あるいはその幅広い音楽性。カッティング・ギターやスラップ・ベース、ホーン隊を軸としたファンキーなサウンドが基調とはなっているが、ジャジーに奏でることもあればエレクトロ・ポップや歌謡曲、トラップのようなグルーヴのときもあり、ACAねのヴォーカルにしてもポップ・スターの華やかさやラッパーのようなフロウ、ストリングス隊に彩られた昭和~令和のアイドルのようなみずみずしい情感も纏っていて、このような類推は枚挙にいとまがない。オープン・リールやTVドラムの見た目のインパクトも含め、曲中でもどんどん移行する展開は一見奇抜で奇想天外にも思えるのだが、まるで混雑しているように感じさせず、すべてをポップに昇華するライヴ・パフォーマンスの強度たるや。優雅で劇的で、楽しく寂しく切ない。あらゆる感情が継ぎ目なく去来してくるずとまよサウンドは、画面越しでもどんどん入ってくる臨場感がものすごい。
繊細にコントロールされたカメラワークも見事なもの。何台あるんだろうというくらい多種多様な角度からの撮影が、曲に合わせてフラッシュする様子はとてもエモーショナルで、ここぞというところで映像効果も織り交ぜる様は、逆に現地では絶対に味わえない視聴体験をあなたにもたらしてくれるだろう。例えば"Coachella Valley Music and Arts Festival"の配信で観たCHILDISH GAMBINOやBillie Eilishといった世界的なスターの姿も浮かんでくるが、コロナ禍以降さらに目覚ましく発展したライヴ映像作品の最前線に、間違いなくずとまよもいると言っていいだろう。それほどまでに本作の映像表現は鮮烈だ。
まだまだ語るべき見どころは全編通してたくさんあるが、ずとまよの核として、さりげなくも通底しているACAねのリリックのことに触れないわけにはいかない。「ミラーチューン」の"まだ準々決勝したい"や、「あいつら全員同窓会」の"なりたい自分に 絡まる電柱"など、到底日常では出てこない言葉選びは、独特で難解ながらどこまでも率直に響き、じわじわと確実にずとまよの世界に誘う。それが様々なヴォーカル・スタイルで迫ってくるものだから、誰の心にもフックとなるACAねの歌唱に心を奪われる。"フジロック"で起こっていたこともたぶんそういうことだが、本作ではそのなんだかよくわからないが気になって仕方がない、ずとまよの醍醐味が存分に味わえることだろう。
ずっと真夜中でいいのに。『ミラーチューン』MV (ZUTOMAYO - MIRROR TUNE)
ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』MV (ZUTOMAYO - Inside Joke)
そして本作で最も特筆すべきことは、そのすべてを包括するコンセプチュアルな世界設定。[day1 "memory_limit = -1"]では、TVドラムやオープン・リールといった特殊な楽器だけでなく、ベルト・コンベアや電話ボックスなどの"工業用品"が並ぶステージ・セットが、どこか怪しげな雰囲気を醸し出しているが、[day2 "ob_start"]では同様のステージ・セット全体が蔦のようなもので覆われ、打ち捨てられた廃工場のよう。どうやらこの1日で100年の時を経たという舞台設定らしい。僕はひとまず本編収録の[day2 "ob_start"]を先に視聴して[day1 "memory_limit = -1"]へと続いたが、かつての栄華へと遡行する感覚はさながら"スター・ウォーズ"を鑑賞するようでもあり、前日のことのはずなのになんとも雄大な時の流れを感じさせる。
ACAねの顔はやはり見えないし、謎めいた存在感は相変わらず僕の心を掴んで離さないが、ワンマン公演の本作で感じたのは、その率直な感情表現とファンとの親密な関係性。MCではコロナ禍で不安もあるなか会場に足を運んだオーディエンスへの気遣いも見せつつ、力強い歌声からはまったく想像ができないか細く今にも泣き出しそうな声で、しきりに感謝を伝えるACAね。会場の人々も見る限り完全にマスク着用で思わず声を上げたりも一切しない。間違いなく飢えていることだろう。でも今この瞬間を踊り忘れないように手を振り上げ、ライト・グリーンのしゃもじを叩く様子は、ずとまよとファンの親密な間柄を感じさせてなんだかうらやましくもなった。謎めいたポップ・スター像はそのままに、等身大の女の子と集った人々が共有する親密な感情が、あの大きなさいたまスーパーアリーナを包み込んでいる。これこそがずとまよの最も稀有な部分なのかもしれない。
"感情の限界突破"がテーマと語る[day1 "memory_limit = -1"]では、比較的初期の楽曲が多めだが、スペシャル・ピアノが加わった[day2 "ob_start"]では近年の楽曲が多めと、選曲も若干違っている。さらに同じ楽曲でもアレンジが違っていたりするので、本作はぜひ初回限定盤を手に入れたい。前述のコンセプトも相まって、[day2 "ob_start"]は打ち捨てられた家電たちに再び命を吹き込むようでもあり、100年を隔てる2日を何度も循環することでまた感じられることもきっとあるだろう。また、[day2 "ob_start"]のみ特別副音声にて、"ACAね ライブ反省会 ソロ"も収録。そちらもACAねの世界をさらに深く体験する補助線となるに違いない。ずとまよが作り、ファンたちの想いで作られる"ZUTOMAYO FACTORY"を、ぜひあなたも堪能してみてほしい。
ずっと真夜中でいいのに。LIVE Blu-ray 『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』 Trailer
▼リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。
LIVE Blu-ray
『ZUTOMAYO FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」』
NOW ON SALE
※初回限定盤、通常盤 共にプレイパス®対応
【初回限定盤】(2Blu-ray)
UPXH-29056/7/¥8,800(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
・魔導書パッケージ仕様
・[day1 "memory_limit = -1"]、[day2 "ob_start"]両日の全楽曲収録
・[day2 "ob_start"]のみ特別副音声にて、"ACAね ライブ反省会 ソロ"収録
【通常盤】(Blu-ray)
UPXH-20115/¥4,950(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[収録内容]
[day2 "ob_start"] ※初回限定盤/通常盤共通
0. 不変100y"ob_start"
1. ばかじゃないのに
2. 低血ボルト
3. 勘冴えて悔しいわ
4. マイノリティ脈絡
5. JK BOMBER
6. 違う曲にしようよ
7. 機械油
8. 彷徨い酔い温度
9. 袖のキルト
10. MILABO
11. 脳裏上のクラッカー
12. Dear.Mr「F」
13. 暗く黒く
14. お勉強しといてよ
15. ミラーチューン
16. あいつら全員同窓会
17. 秒針を噛む
_Additional
18. またね幻 (希求)
19. サターン (ろんりー)
20. 正義
[day1 "memory_limit = -1"] ※初回限定版特別映像
0. 抗いbug"memory_limit = -1"
1. 眩しいDNAだけ
2. ヒューマノイド
3. 勘冴えて悔しいわ
4. マイノリティ脈絡
5. ハゼ馳せる果てるまで
6. 違う曲にしようよ
7. 機械油
8. 彷徨い酔い温度
9. 夜中のキスミ
10. MILABO
11. 脳裏上のクラッカー
12. Dear.Mr「F」
13. 正しくなれない
14. お勉強しといてよ
15. ミラーチューン
16. あいつら全員同窓会
17. 秒針を噛む
_Additional
18. Ham (代償)
19. サターン
20. 正義
詳細はこちら
- 1
LIVE INFO
- 2023.01.28
-
BiSH / ASP
DYGL
"FUKUOKA MUSIC FES.2023"
ぜんぶ君のせいだ。 ※振替公演
東京初期衝動
めいちゃん
フラワーカンパニーズ
東京スカパラダイスオーケストラ
映秀。
"フリ放題コーリング2023"
黒川侑司(ユアネス)
鶴
アルカラ
リュックと添い寝ごはん
BACK LIFT
藤井 風
Saucy Dog
tricot
パスピエ
Symdolick
鳴ル銅鑼
CYNHN
OKAMOTO'S
原因は自分にある。
Vaundy
浪漫派マシュマロ / 底なしの青 / GIMMICK_SCULT ほか
- 2023.01.29
-
DYGL
GANG PARADE × ASP
go!go!vanillas
anew
フラワーカンパニーズ
東京スカパラダイスオーケストラ
神はサイコロを振らない
神聖かまってちゃん
ドラマストア
Saucy Dog
Non Stop Rabbit
PELICAN FANCLUB
パスピエ
fhána ※振替公演
アルカラ
"フリ放題コーリング2023"
めいちゃん
藤井 風
tricot
岡崎体育
LEGO BIG MORL
鳴ル銅鑼
Laura day romance
なきごと
忘れらんねえよ
PIGGS
女王蜂
SCOOBIE DO
the pillows
Vaundy
Lenny code fiction
浪漫派マシュマロ / Ohm ほか
- 2023.01.30
-
Official髭男dism ※振替公演
斉藤和義 ※振替公演
the HIATUS
- 2023.01.31
-
Official髭男dism ※振替公演
私立恵比寿中学 ※振替公演
Saucy Dog
斉藤和義 ※振替公演
PIGGS × 夕闇に誘いし漆黒の天使達
the HIATUS
ヤバイTシャツ屋さん
cinema staff × KOTORI
- 2023.02.01
-
Symdolick
ircle
ストレイテナー / Nothing's Carved In Stone ほか
- 2023.02.03
-
AliA
藤井 風
DYGL
めいちゃん
Subway Daydream
ビレッジマンズストア
セカイイチ
Base Ball Bear
ZAZEN BOYS × w.o.d.
忘れらんねえよ
- 2023.02.04
-
アルカラ
映秀。
BACK LIFT
Vaundy
藤井 風
ヤバイTシャツ屋さん
BiSH / BiS
go!go!vanillas
Awesome City Club × マハラージャン
AliA
PAN × セックスマシーン!!
OKAMOTO'S
Panorama Panama Town
めいちゃん
tricot
ユアネス
フラワーカンパニーズ
Saucy Dog
GOOD ON THE REEL
塩入冬湖(FINLANDS)
JYOCHO
"BAYCAMP 202302"
Poppin'Party × RAISE A SUILEN
This is LAST
- 2023.02.05
-
アルカラ
ヤバイTシャツ屋さん
BACK LIFT
Vaundy
DENIMS
ExWHYZ × BiS
リュックと添い寝ごはん
go!go!vanillas
DYGL
Non Stop Rabbit
OKAMOTO'S
ゲスの極み乙女×さらば青春の光
Panorama Panama Town
映秀。
フラワーカンパニーズ
東京初期衝動
Dragon Ash
Saucy Dog
SHE'S ※振替公演
This is LAST
Base Ball Bear
Who-ya Extended
ザ・クロマニヨンズ
女王蜂
Roselia × Morfonica
神はサイコロを振らない
ぜんぶ君のせいだ。
パスピエ
- 2023.02.06
-
THE VAMPS
- 2023.02.07
-
コレサワ
THE VAMPS
藤井 風
This is LAST
夜の本気ダンス × Maki
SUPER BEAVER
- 2023.02.08
-
ircle
藤井 風
BiSH / BiS / GANG PARADE
BBHF
ヨルシカ
- 2023.02.10
-
Vaundy
ircle
ポルカドットスティングレイ
塩入冬湖(FINLANDS)
DYGL
This is LAST
Rhythmic Toy World
kalmia
Base Ball Bear
BLUE ENCOUNT × THE ORAL CIGARETTES × 04 Limited Sazabys
片平里菜
- 2023.02.11
-
岡崎体育
Vaundy
東京初期衝動
OKAMOTO'S
ircle
Non Stop Rabbit
底なしの青 ※振替公演
アルカラ
KALMA
go!go!vanillas
"SOUND CONNECTION -Harvest Begins-"
Rhythmic Toy World
THE BACK HORN
This is LAST
Organic Call
ビレッジマンズストア
なきごと
ぜんぶ君のせいだ。
伊東歌詞太郎
真っ白なキャンバス
yutori
GANG PARADE × 豆柴の大群 × ASP
映秀。
BUMP OF CHICKEN
WEAVER
Subway Daydream
BLUE ENCOUNT
RELEASE INFO
- 2023.01.31
- 2023.02.01
- 2023.02.04
- 2023.02.05
- 2023.02.08
- 2023.02.10
- 2023.02.13
- 2023.02.14
- 2023.02.15
- 2023.02.17
- 2023.02.22
- 2023.02.24
- 2023.02.28
- 2023.03.01
- 2023.03.08
- 2023.03.15
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
PIGGS
Skream! 2023年01月号