Japanese
ずっと真夜中でいいのに。
2022年02月号掲載
Writer 石角 友香
本人のメディア露出はほぼ皆無、ライヴでも顔はわからないまま。SNS上でのファンとのコミュニケーションとライヴも含めた作品表現のみで、ついに4月16日、17日の2日間、さいたまスーパーアリーナでの"Z FACTORY「鷹は飢えても踊り忘れず」"の開催が決定している、ずっと真夜中でいいのに。(以下:ずとまよ)。私たちは、リスナーが時代に求めるアーティスト像や世界観のアップデートを、今まさに目撃しているのだ。
初のロング・ツアー"果羅火羅武~TOUR (カラカラブ~ツアー)"を完遂したずとまよはツアー・ファイナルの1週間後となった2月16日に、CDとしては2021年2月の2ndフル・アルバム『ぐされ』以来の発表となる、ミニ・アルバム『伸び仕草懲りて暇乞い』をリリースした。すでに各種ストリーミング・サービスでトップ・ソングとなっている「あいつら全員同窓会」など、この1年の間にリリースしてきた楽曲を筆頭に、"ずとまよと言えばこの世界観"だと認識される圧倒的なオリジナリティを敷衍する、決定的なミニ・アルバムになりそうだ。
では、収録順に楽曲を考察していこう。幕開けはアルバム新曲の「違う曲にしようよ」。すっかりずとまよの一側面として定着した感のある洒脱なピアノ・リフから始まる、軽快なジャズ・ファンク調のイントロから、奈落に落ちるようなダークなエレクトロテイストにまずギョッとする。そこで独白されるのは一方通行のコミュニケーションに映った。"ねぇもう違う曲にしようよ"としびれを切らすように発される言葉は、メッセージ・アプリのBGMを指すにとどまらない。というのも、"ほしいものを手に入れても/今日着たい服は ひとつもない"の歌詞――この感覚、コロナ禍が長く続く日々の中、いったいなんのために自分は何を消費しているんだろう? という、実態のなさに通じてはいないだろうか。
2曲目は、Amazon Original映画"HOMESTAY(ホームステイ)"のためにACAねが書き下ろした「袖のキルト」。ストリングスを有機的にバンド・サウンドと融合させた楽曲の空気感は、映画が表現している感受性豊かな高校生の心の成長とも見事にリンクしている。ACAねは原作である"カラフル"(森 絵都)に学生時代強く影響を受けたようで、今回映画というテーマをもとに、当時のリアリティと今現在の包容力のどちらも濁ることなく昇華できたのではないだろうか。長尾謙杜(なにわ男子)演じる、死んでしまった高校生 小林 真の身体に乗り移った主人公 シロの使命のようなものが、曲が進むにつれて飲み込める仕上がり。単に語彙力が豊かなだけではない、心が記憶するような必然的な歌詞に新たなリスナーとの出会いが期待できる曲だ。
ずっと真夜中でいいのに。『袖のキルト』MV (ZUTOMAYO - QUILT)
3曲目の「あいつら全員同窓会」は、"どうでもいいから 置いてった"から始まるサビが痛快で思わず口ずさんでしまうが、膨大な言葉数を安定したピッチで歌い切るACAねの胆力を感じざるを得ない。"同窓会"は額面通り受け取ることもできるが、学校や会社の狭い人間関係の中でのマウンティングや、SNSという匿名空間での無責任な誹謗中傷も当てはまるだろう。そう。私たちの多くが自分の意見や意思を隠して日々をやり過ごすことが不可避ななか、"でも本当にそうだろうか?"という投げ掛けがリアルな描写を伴って迫る。と、同時に奮い立たせられるのだ。些細で奇妙な出来事も含め、心に触れる何かを大事にしたいとランダムにピックアップしていく、アウトロの控えめなラップも肝である。アッパーで小粋なファンク・チューンに乗せて真実を暴きながら、孤軍奮闘するあらゆる人にパワーを送る、そんな曲だ。スリリングな展開はオンラインRPG"PSO2 ニュージェネシス"コラボ楽曲としてもハマっており、ACAねのプロとしての作家性の高さを実感できるし、Spotifyブランド/プレミアムTVCMソングで初めてずとまよに遭遇した人も多い楽曲だろう。また、鋭利な刃物によるアニメMVも痛快なまでに曲とシンクロしている。
ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』MV (ZUTOMAYO - Inside Joke)
"伸び仕草懲りて暇乞い"――意味深なタイトルは、自ら別れを告げて歩き出すイメージを喚起する
続く4曲目の「猫リセット」も先行配信曲。ずとまよの音楽性を代表する16ビートのタフなリズムとピアノ・リフといったアレンジがアップデートされた、ライヴも楽しみになる構成に耳が行く。どんよりしたムードを醸すイントロのシンセ、高いスキルの楽器隊の抜き差しがスリリングな間奏、ゲーム・ミュージック風の展開がずとまよらしい世界観をさらに立体的に構築している。愛猫にデータを消されてしまう"猫リセット"という、猫飼いあるある(!?)の絶叫したくなる状況を、"自分の存在定期的に/猫リセットできたら潔いのにな"と歌う気持ちの理由が、歌詞本編で綴られている感じだ。社会人として生きながら、音楽活動をしている主人公が浮かぶのだが、これはかつてのACAねなのだろうか。自分にしかわからないこだわり、などと書くと一気に陳腐になるのだが、"カートの中眠る 4,5千円のヘッドフォン"というラインに潜むリアリティにグッとくる。ちなみにこの曲のMVは、これまでずとまよのMV制作に携わってきたイラストレーターやアニメーターも結集した、集大成的な仕上がりで、ACAねと思しき主人公の行動やオチに共感してしまう。
ずっと真夜中でいいのに。『猫リセット』MV (ZUTOMAYO - Neko Reset)
5曲目はアルバム新曲の「夜中のキスミ」。ミディアムの16ビート・ナンバーでサンバテイストなリズムが登場するが、全体的にゆるやかで大きなグルーヴを描く。メロディもゆったりとしており、歌詞が聴き取れるぐらいのオーセンティックさが新鮮だ。バンドのコシのある演奏と、未知の世界へ誘うように曲をふわっと浮き上がらせるストリングス・アレンジも効果的。恋をしたい女の子のヴィヴィッドな感情はアイドル・ソングのようにも聴こえるが、もしかしたらこの主人公は人間ではないのかもしれない。そんなふうに思わせるワードをしのばせて、いろいろ想像するとエロチックだったり、愛嬌を感じたりできるのもユニークだ。
ラストはサビで強烈な逡巡と後悔が爆発する「ばかじゃないのに」。この曲も既発曲で、ライヴでおなじみになりつつある。ずとまよらしいマイナーのアップ・チューンだが、メロディに新鮮な部分が多い。例えば、一気に高音へ突き抜けるサビから、"在り来りだろうけど"の"だろうけど"で調性が変わる部分が、望んでいない自分の変化とリンクして見事だ。かけがえのない時間のはずなのに、終わらせてしまう方向へ動く矛盾した気持ちは若い恋のテンプレと言い切れない、純度の高さを突きつけてくる。単に恋愛の終わりだけを表現しているのかどうかもわからない。もう会えない、もしくは会わない。このミニ・アルバムのタイトルである"伸び仕草懲りて暇乞い"に至る心境に、最も直接的にフィットする楽曲に思えてくる。同曲はアニメーション・スタジオ、MAPPA"10th Anniversary Movie"コラボ曲。また、楽曲のMVは歌詞に忠実な内容で、かわいさと怖さを併せ持つTV♡CHANYが手掛けた。見覚えのある人も多いだろう。
ずっと真夜中でいいのに。『ばかじゃないのに』MV (ZUTOMAYO - Stay Foolish)
なお、初回生産限定盤には本編全曲オフ・ヴォーカル(インスト)や、昨年12月4日に放送された"MTV Unplugged: ZUTOMAYO"のライヴ映像完全収録版も付帯。あのブルーノート東京が秘密のアジト感満載なセットで埋め尽くされ、生楽器寄りのリアレンジ・バージョンで届けられた様子は一回性の貴重な内容だ。バンドの演奏力、おなじみOpen Reel Ensembleとともにテープを駆使するACAねたちの自由度、"扇風機ギター"演奏をアップで見られる貴重なカットなど、アンプラグドでも攻めたスタンスが確認できる。
前作『ぐされ』で有機的になったストリングス・アレンジや、バンドの生感をさらにビルドアップし、ポップスとして強度を増した本作。誰もが心に潜ませている本音や矛盾を具現化するずとまよの音楽が、より多くのリスナーに刺さることはもはや必然だろう。
▼リリース情報
ずっと真夜中でいいのに。
ミニ・アルバム
『伸び仕草懲りて暇乞い』

NOW ON SALE
【初回生産限定盤】(1CD+BD)
UPCH-29422/¥4,950(税込)
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TOWER RECORDS
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本編全曲オフ・ヴォーカル(インスト)収録
魔道書パッケージ仕様
MTV Unplugged:ZUTOMAYO映像収録(約50分)
プレイパス(R)対応(映像のみ、Blu-rayの映像をスマホで簡単にストリーミングもしくはダウンロード再生することができるサービス)
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【通常盤】(CD)
UPCH-20613/¥1,980(税込)
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TOWER RECORDS
HMV
[CD]
1. 違う曲にしようよ
2. 袖のキルト
3. あいつら全員同窓会
4. 猫リセット
5. 夜中のキスミ
6. ばかじゃないのに
※初回生産限定盤のみ下記収録
7. 違う曲にしようよ (Instrumental)
8. 袖のキルト (Instrumental)
9. あいつら全員同窓会 (Instrumental)
10. 猫リセット (Instrumental)
11. 夜中のキスミ (Instrumental)
12. ばかじゃないのに (Instrumental)
[Blu-ray] ※初回生産限定盤のみ
"MTV Unplugged: ZUTOMAYO"
1. 蹴っ飛ばした毛布
2. ばかじゃないのに
3. 秒針を噛む
4. 琥珀色の街、上海蟹の朝
5. ろんりねす
6. マリンブルーの庭園
7. 君がいて水になる
8. 脳裏上のクラッカー
9. Dear. Mr「F」
10. お勉強しといてよ
CDはこちら
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「猫リセット」
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