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INTERVIEW

Overseas

KULA SHAKER

2024年01月号掲載

KULA SHAKER

Member:Crispian Mills(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

インド音楽をギター・ロックに取り入れ、多彩なバンドがひしめくUKロック・シーンのなかでも特に異質な存在として、ここ日本でも不動の人気を誇る、KULA SHAKER。そんな彼らの新作『Natural Magick』は、実に25年ぶりのオリジナル・メンバーでのレコーディングということもあり、初心に還ったフレッシュさと、独自の音楽を突き詰めた円熟感が共存した興味深い作品だ。今回のインタビューでは、新作の収録内容についてはもちろん、作品ができあがるまでの経緯や、作品を通して描かれている彼らの人生観、メンバーの絆についてなど幅広く言及されている。インドのみならず、アジア文化や東洋的な価値観にも精通したCrispian Millsの人柄や知性を垣間見ることができる内容になっているので、ぜひチェックしてほしい。

-前作『1st Congregational Church Of Eternal Love And Free Hugs』(2022年のアルバム)リリース時以来のインタビュー(※2022年6月号掲載)になりますが、その後バンドとしてはいろいろが動きがあったようなので、前作リリース後のお話から聞かせてください。オリジナル・メンバー Jay Darlington(Org/Key)の復帰はファンにとっても非常に嬉しいニュースでしたが、運命的な再開など何か特別なきっかけがあったのでしょうか?

実はアメリカ・ツアーの話が出たとき、Harry(Broadbent/Org/Key)が家庭の事情があって参加できなかったんだ。でもあいつの代わりになるやつが他にいなかった。このバンドは多くをメンバー間のケミストリーに委ねているからね。友情とか、全員でどうやって一緒にプレイするかを考えると、ただジョブセンター(※イギリスの公共職業安定機関)に広告を出して募集できるものじゃないんだ。そうしたら、たまたまJayがフリーの状態だってわかったんだ。いつ戻ってきても大丈夫な状態になっていた。2006年に再結成したときもあいつには"戻る気はある?"って聞いたんだけど、そのときはOASISとツアー中で、彼らにコミットしたあとだったから、自然に違う道を行った感じだったんだ。でも今回連絡したときは、ちょうどタイミングが良かった。あいつは"すでに宇宙から、こういうことになるってメッセージを貰っている"と言っていたよ(笑)。だから僕たちから連絡が来るだろうって思っていたんだ。

-それはすごい偶然ですね。

ああ、いい魔法使いに采配してもらったようなものだよ。あいつは予知力があるんだな(笑)。

-まさに"Natural Magick"じゃないですか。

そうだね(笑)。

-といいつつHarryも長い間在籍していたので、バンドとはいいケミストリーがあったのではないかと思いますが、Jayの復帰はスムーズだったのでしょうか。

そうだね......僕たちはみんな一緒にプレイすることを覚えていったんだ。Jay、Alonza(Bevan/Ba)、Paul(Winterhart/Dr)、そして僕はね。僕たちは人格形成期を一緒に過ごしてきたんだ。初めてJayとプレイしたとき、僕は19歳だった。Alonzaと初めてプレイしたのは16歳のとき。Paulと出会ったのは17歳のときだ。で、楽器だけじゃなくて、他人とプレイすることを学んでいった。だからケミストリーや理解がすべてなんだ。一緒に音楽をプレイするというのは人間関係そのものだよ。で、またこのメンバーで組むことになって、始まりのときの状態に戻ったんだ。いい意味でね。

-スムーズにもとに戻れたんですね。

一瞬だったよ。

-オリジナル・メンバーが集まったことで、サウンド的にもバンドのメンタル的にも初期衝動のようなものを取り戻したのではないかと思いますが、制作やライヴでのパフォーマンスに対してそういったフレッシュな感動はありましたか?

ものすごいカンフル剤になったね(笑)。すごくエキサイティングだったけど、同時に"regeneration"(再生)でもあった。それが人としての務めだと思うんだよね。命っていうのは絶えず死んでは生まれ変わっている。それが人生なんだ。人生には始まりと途中と終わりがあって、人は絶えずその人生のチャプターを進んでいるんだ。それを自覚するときもあればしないときもある。振り返ってみて"うわぁ、すべてが変わったなぁ、ひっくり返ったなぁ"と思うこともある。Jayとまたステージに立ったときは、すべてが超チャージされたような感じがしたね。新しい......命をチャージされたんだ(笑)。

-一巡して次の周回に向かうような感じでしょうか。

そうだなぁ......東洋では一般に、時間の流れを円として考えるよね。啓蒙思想(※Enlightenment/欧州で17~18世紀ごろに普及した、合理主義に近い考え)が出てきた以降の西洋では、近代科学や時間に関する概念が広まったから、ビッグ・バンから今に至るまでをまっすぐな線として考えるんだ。でも僕に言わせれば、時間の流れを円として考えるほうがずっと理に適っている気がするんだよね。変化しながらも常に何かを繰り返しながら成長しているわけだから。というわけで、僕たちも自分自身を繰り返しているんだ。Jayが戻ってきたし、同時にクリエイションのまったく新しい段階に来たからね(笑)。

-となると、久々の初期メンバーでのレコーディングということで、新しい思い出もできたのでは。

スタジオには、ライヴ活動に復帰するようになってすぐに入ったんだ。ライヴの稲妻と雷......興奮をとらえたかったからね。今年の前半はずっとレコーディングしていたよ。(2022年の)12月から4月までだったと思う。断続的ではあったけどね。いくつかギグをやって、スタジオで作業して、またギグをやって、スタジオに戻って......という感じだった。収録曲の半分くらいはライヴでテストしたあとにレコーディングしたんだ。オーディエンスが気に入ってくれるものに仕上げて、ライヴのエネルギーもちゃんとキャプチャーしてね。今年(※取材は12月中旬)日本に行ったとき("KULA SHAKER JAPAN TOUR 2023")も、テストした曲がいくつかあったと思う(※「Gaslighting」、「Waves」、「Idon'twannapaymytaxes」)。

-新作の『Natural Magick』では、インド音楽など非日常的な浮遊感のあるオリエンタルなエッセンスと英国式のギター・ロックが融合した、ファンが求める"まさにKULA SHAKER"というサウンドが詰まったアルバムだと感じました。新作の音楽的な方向性は、オリジナル・メンバーが集結したことで自然と固まっていった、という感じでしょうか?

最初のオーディエンスというのはメンバー間だからね。気づいたんだけど、僕が何かをギターで弾いて、"これはJayが気に入るかもしれない"と思ったとする。それを本人に聴かせると、今度はあいつが手を加えて......という感じの関係がメンバー間にはある。PaulやAlonzaやJayが気に入るものを僕がプレイすることができれば、それは僕たちが全員それにときめくことができているってことなんだ。そうやって固まっていった。そういうものこそがオーディエンスの好きなものだって確信があるからね。よくアーティストやミュージシャンで"自分自身のためにやっている。他人のことは考えない。自分のことだけ考えてやっている"という人がいるけど、それって同じコインの表と裏みたいなものだと思うんだよね。オーディエンスのことと自分自身や自分のバンドのテイストは分けて考えられない。オーディエンスは自分たちの延長線上にいるからね。

-なるほど。では、今作において全体を通したメッセージやコンセプトなどはありますか?

うーん......緩いテーマがあるような気はするね。前作はシアトリカルなストーリーラインと緩いテーマがあった。でも今回は、これもまたテストだったんだけど、2分半~3分くらいの曲を作ることにして、そういう曲をうまく作るというチャレンジを楽しんだ。エキサイティングでカラフルでシアトリカルな要素をギュッと凝縮したものを作ろうとしたんだ。例えば(THE BEATLESの)『Revolver』と『The White Album(The Beatles)』で言えば、これは『Revolver』に近い感じだね。パンチの効いた2分半~3分の曲になるまで煮詰めたんだ。一番長い曲(「Happy Birthday」)でも4分(4分29秒)だしね。今回はよりダイレクトなんだ。