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INTERVIEW

Overseas

KULA SHAKER

2024年01月号掲載

KULA SHAKER

Member:Crispian Mills(Vo/Gt)

Interviewer:山本 真由 Translator:安江 幸子

-いくつか曲単位でも質問させてください。シングル曲でもある「Waves」はサイケデリックでノリが良く、楽曲の音楽性がカラフルなイメージというだけでなく、浮世絵風のアートワークもお洒落で面白いですね。こういう遊び心のあるヴィジュアルにもメンバーのアイディアやインスピレーションは関係しているのでしょうか?

そうだね。長年の間に、全部自分たちでディレクションすることを好むようになったよ。

-DIY度が高くなったんですね。

ああ。そのほうがずっと楽だからね。アートワーク、ビデオ、プロダクションも誰かに指図させているわけじゃないんだ。初期はそれがあまりに多くて大変だったから、疲れてしまったんだよね。今は自分たちが完全に関与していて、そっちのほうがずっと楽なんだ。それから、KULA SHAKERのストーリーにとっては日本での体験がとても大きな意味を持っているんだ。だからそれを音楽やアートワークに入れたら素敵だろうなと思ってね。

-この曲のMVには70年代の日本のアイドル(ピンク・レディー)が写っていましたね!

ああ、そうだったね(笑)。

-リアルタイムで見ていた世代には刺さると思いますよ。

そう、彼女たちは入れずにいられなかったよ! ストーリーの世界でイマジネーションの一部を担っているからね。

-また、オルガンのサウンドが印象的な「Indian Record Player」も、思わず踊りだしたくなってしまうような軽やかさと、ドラマチックな展開にテンションの上がる楽曲です。本作は、"ライヴのエネルギーや会場のオーディエンスとのスピリチュアルな繋がりに触発された"内容になっている、とのことですが、すべてライヴで演奏することを特に意識して作られたということですか?

そうだね。特に曲を書いたりレコーディングしたりしていたときは、ライヴでどう解釈していくかに意識が向いていたんだ。今回の曲の半分は実際にステージでやったあとでレコーディングしたから、多くにライヴのダイナミクスが注入されている。オーディエンスの前では何をやったらうまくいくかを身をもって知った状態で作ったんだ。「Gaslighting」はたくさんプレイしたし、「Waves」も「Idon'twannapaymytaxes」も即効性があった。プレイし始めた途端にオーディエンスがわかってくれる、それは素晴らしいサインなんだ。時には曲をプレイしてもわかってもらえないことがあるけどね。

-たしかにライヴで演奏される様子が容易に想像できる曲が多かったですし、今度の来日("KULA SHAKER JAPAN TOUR 2024")がますます楽しみになってきますね。また、「Chura Liya (You Stole My Heart)」や「Something Dangerous」など、かなりわかりやすくインド音楽を取り入れている楽曲もあります。あなたがインド文化に造詣が深いことはよく知られていますが、例えば映画などからインスピレーションを得ることはありますか。日本では昨今、"RRR"などのインド映画が非常に人気で、インド映画の音楽やダンスも注目されているのですが、そういったものからの影響もありますか?

そうだね。そもそも映画は子供のころからずっと僕の人生で大きな部分を占めていたんだ。それがファミリー・ビジネスだったからね。演劇よりも映画に親しんで育ってきた。というか自分も映画の仕事をしたいと思っていたし、映画が大好きだからなんとかして仕事を手に入れたいと思っていたけれど、音楽に夢中になっていたらこっちに時間とエネルギーを全部取られて、いつの間にかギターで頭がいっぱいになっていたんだ。と言っても僕たちのプレイする音楽や作るアルバムは......欲求不満の映画監督みたいな感じなんだよね(笑)。

-(笑)

アルバムを聴いてもらえばわかると思うけど、僕たちはみんなの頭の中に映画を作ろうとしているんだ(笑)。

-たしかに!「Chura Liya (You Stole My Heart)」などはウェスタン映画っぽい光景が連想できます。マカロニウェスタンとか。

うん。Morricone映画(※作曲家 Ennio Morricone/"荒野の用心棒"などを手掛けた)とかね。

-そんな感じです!

Morriconeっぽいよね。あと「Something Dangerous」も、みんなの頭の中で絵を描こうとしたんだ(笑)。

-その2曲に限らず、情景が見える楽曲が多い気がします。人によって見える光景が違うのかもしれませんが、映画のワンシーンみたいなものが浮かびましたよ。

音楽の素晴らしいところってそれだよね。映画は観る人の目の前でその光景を作らないといけないけど、音楽はそれぞれの個人的なイマジネーションで自分だけの映画を作ることができるんだ。

-ちなみに"インド映画を音楽で再現"という意図はなかったのでしょうか。

いや......でも「Chura Liya (You Stole My Heart)」や「Indian Record Player」なんかは1960年代のボリウッドに大きな敬意を表したものだよ。

-固有名詞がいろいろ出てきますもんね。

当時のボリウッドは、Morriconeからものすごく大きな影響を受けていたんだ。RD Burmanという偉大な作曲家がいて、ボンベイで大ヒットした曲をいくつか書いていた。それらの曲はアレンジがとても洗練されていて......とてもサイケデリックでもあった(笑)。それでいて、メロディにはインド的な感性が強く生かされていたんだ。というわけで、(ボリウッドは)いろんなアイディアの素晴らしい坩堝だった。今の世の中には政治的なマインドセットがあって、"文化の盗用"はしてはいけないと言われているけど、それって創造の歴史を理解していない考え方だよね。みんなアイディアやサウンドやメロディを拝借し合っているのにさ。大きな庭で草花の異花受粉をやっているようなものだよ。命をシェアし合っているんだ。そして僕たちはその一部を担っているというわけさ。

-MorriconeにインスパイアされたRD Burmanの曲をMorriconeスタイルであなたがカバーするというのも、これまた何かが一巡して次の命が吹き込まれた感があっていいですね。

ああ、その通りだよ。