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INTERVIEW

Japanese

うみくん × 内田直孝(Rhythmic Toy World)

うみくん × 内田直孝(Rhythmic Toy World)

幸福なコラボレーションというのは、互いの個性が何倍にも生きる。人気YouTuberであり、歌い手、シンガー・ソングライターとしても活躍するうみくんと、"遊ぼうや"を合言葉にライヴハウス・シーンで泥臭く転がり続けるロック・バンド、Rhythmic Toy Worldの出会いによって完成した「ONE」は、まさにその相乗効果が抜群に発揮された1曲だ。まっすぐにリスナーの心に届くリズミック(Rhythmic Toy World)の作詞/作曲/演奏曲に乗せて、音大声楽科というキャリアを持ち異次元の歌唱力をほこるうみくんが、自身の"これまで"と"これから"を力強く歌い上げる。実は今回のコラボが実現する前からニアミスを繰り返していたという2組。運命的な出会いから、丹念なクリエイティヴで育んだ「ONE」の制作秘話、ネットとライヴハウスという異なるカルチャーが融合する意味まで、たっぷり話を訊いた。

うみくん
Rhythmic Toy World:内田 直孝(Vo/Gt)
インタビュアー:秦 理絵 Photo by fukumaru

-おふたりは同い年ですか。

内田:そうそうそう。88年、昭和63世代です。

うみくん:タメですね。

-どういうきっかけで出会ったんですか?

うみくん:直接の出会いは、共通の友達がいて。一緒に仕事もする人なんですけど、(その友達と)1回一緒にパリに行ってたんだよね。

内田:あぁ、そうそう。"Japan Expo"だ。昔、僕らが(バンドで)フランスの"Japan Expo"に出演したとき。(その友達も)たまたま"仕事で行くよ"っていうことになって。そいつはうちのギターの岸(明平)と、須藤(憲太郎/Ba)と同郷なんですよ。

-埼玉なんですね。

内田:昔からの友達で。で、その子がうみくんと今一緒に仕事をしてる。っていうのから、"うみくんって、あのYouTuberの!? 会いてぇな"みたいなことを言ってたら、一緒にご飯に行くタイミングがあって。面と向かって話したのは、その日が初めてですね。

-"Japan Expo"は何年ですか?

内田:2014年かな。僕らの3枚目のミニ・アルバム(『XNADIZM』)のときだったと思うので。そこから5年ぐらい経って初めて会ったんです。

-実際に会ったのは一昨年ぐらい?

うみくん:そうですね。うっちー(内田)が行った次の年から、俺、3年連続で"エキスポ(Japan Expo)"行ってるんだよ。だから意外とね、入れ違ってて。

内田:ニアミスというか。1年違ってたら、その段階で会ってたよね。

うみくん:あと、実際に会ったのは一昨年とかなんですけど、掘り返すといろいろあって。もともと僕はアニメが好きで、(リズミックがオープニング・テーマを担当した)"弱虫ペダル"も観てたし。その昔、口説いてた女の子がリズミックを好きっていうのもあって。

内田:あははは!

うみくん:世の中の女性をメロメロにするバンドなんだなって(笑)。さらには大学生のときに、mixiで出会った男の子と音楽を一緒にやってた時期があって。実は、その子がうっちーと一緒に音楽をやってたんですよ。

-え、すごい偶然じゃないですか!

内田:ヤバいですよね。

うみくん:で、僕はその子から"元相方がさ、Rhythmic Toy Worldってバンドになって売れちゃってさ"と聞いてて。僕、当時、うっちーの声が入ったデモを聴いてたんですよ。"これ、前の相方なんやねんけど、歌めっちゃ上手いで。聴いてみ"って。

-すごいなぁ、それ。

うみくん:"たしかにいい声だな"って思ってたんだけど、その情報が"本当なのかな"って(笑)。本当はリズミックの友達の友達とやってたかもしれない。

内田:そいつがね、ちょっと調子のいいやつなんですよ。すげぇいいやつなんですけど、たまにね。

うみくん:誇張して(笑)。

内田:っていうところがあるから、うみくん的には、知り合いではあるんだけど、そこまで本当に密接な関係じゃないんじゃないか、みたいな。

うみくん:っていう疑いがあって。それも確認してみたかったんですよ。

内田:(うみくんと)会ったときにね、開口一番それだったもん。それなりの挨拶が終わったあと"うっちーくん、〇〇ってわかる?"って聞いてきて。"え、なんで知ってんの?"、"ホントだったんだー!"みたいな。で、その日、(元相方に)電話したんだよね。

うみくん:そうそう。

内田:ふたりで帰ってるときに電話をかけて、"今日、一緒にご飯食べたよ"って。

うみくん:しかも、俺のLINEからかけるっていう。

-その人は、内田さんがリズミックを組む前にやってたバンドのメンバーですか?

内田:そうです。僕が上京して、大学に入ったときに組んだバンドですね。4人組で。

うみくん:あ、4人だったんだ。ふたりだけじゃなくて。

内田:最初はね。でもライヴもそんなにやってないような状態で終わっちゃったんですよ。でも、僕はバンドに憧れもあったし、とりあえずそいつが"ふたりでユニットみたいなことをしようよ"って言ってきて。ゆずとかも好きな感じだったから。

-デュオみたいな感じで。

内田:そうそう。でも、僕が練習もしないしスタジオも遅刻するし。っていうので、"お前は好きやけど、音楽の夢は叶えられへんわ、ごめん"みたいな感じでフラれたんです。それが刺さって改心したんですけど。そこで、ふらふらしてるときに、うちのベースのすーちゃん(須藤)に声を掛けられたっていう。

-そこから、内田さんはリズミックを始めるんですね。

内田:っていうところから、実はうみくんとは――

うみくん:世界線が交わってたんですよね。

内田:で、僕が前のバンドをやめたあと、そいつが"俺mixiでマジでめっちゃいい歌を歌うやつ見つけてん。連絡して会ってみる"みたいなことを言ってたんですけど。それが、うみくんだったっていう。

うみくん:おもろいよね。

-それは話に花が咲きますよね、最初に会ったときから。

内田:そうそう。一気に9年間ぐらいがキュッて圧縮されましたね。

-過去の共通点以外にも、人間的なフィーリングも合うところが多いですか?

内田:考え方の根本が近いですね。物事の捉え方というか。仕事に対してもそうだし。作品に対する考え方とか。だいたいふたりで飲み屋で話してると長い(笑)。

うみくん:その話の中で、活動のシーンは違えど、お互い同じように試行錯誤をしてやってきたんだなっていうのは感じました。ディテールまではわからないけど、こういう楽しかったこと、こういうつらかったことを経由して、今も前を向いてやってんなっていうのを共有できる感じがあって。

-うみくんもYouTuberをしつつバンドも組んでいたし、リズミックのほうも一度はメジャー・デビューしたけども、もう一度インディーズに戻ってるし。それぞれ紆余曲折しながら、同じ時代を一緒に頑張ってきた、みたいな。

内田:そうなんですよね。エネルギーが貰えるというか。これ、言い方が難しいんですけど、気が合う仲間でも、傷を舐め合うような空気になる仲間もいるんですよ。

うみくん:あぁ、わかりやすいね。それ。

内田:逆に、始めたときみたいに夢の話ばっかりできるような仲間もいて。うみくんはそっちのタイプなんです。理由とか根拠とか、そういうのを差し引いて、俺こういうことがやりたい、こういうふうになりたい、みたいなことを言い合える。20歳そこそこのときの無双モードみたいな。あの感覚になれるんですよね。

-活動するフィールドが違うのに、そこを共有できるのはうれしいですよね。

内田:そう、フィールドが違うっていうところが心地いいんですよ。純粋に、めちゃくちゃ尊敬と応援ができるというか。うみくんから聞くことは、全部刺激があって、成長と吸収ができるんですよ。すげぇいろいろ知れて、そっち(ネット・シーン)の苦悩みたいなものがインスピレーションになるし、こっちも気がねなく話せるし。そういうのがいいなとは思いますね。数ある友と呼べる人たちの中でも。

うみくん:それ、すごくわかる。もともと僕は友達が少ないんですよ。引きこもりなので。嫌いとかじゃないけど、自ずと会う機会が減っていくんです。

内田:いや、そうだよね。この歳になって友達できるって。

うみくん:難しいよね。

内田:みんな、仕事関係の人になってくるから。純粋に自分の心を震わせてくれるような友であり、仲間が、まだ増えるっていうことがすごい励みになった。

うみくん:歳を重ねて、クリエイターをやってて良かったなって思うのは、そこが大きいかもしれない。大学生の頃はさ、小学生からの友達みたいな、ああいう友達はもうできないんだろうなと思ってたけど。逆にそれよりも信頼できる友達が、自分が頑張ってる限りは無限に広がっていくんだなっていうのがわかってから、楽しいよね。

内田:そうだね。

-クリエイターとしては、お互いをどんなふうに見てるんですか?

内田:すごいな、のひと言ですよ。

-どういうところが?

内田:YouTuberって、動画をあげたりする作業があるじゃないですか。僕たちはそのプロセスを見ることはほぼなくて、できあがった作品しか触れられないけど、そこまでの工程を聞くと、自分には到底できないなと思います。スケジュール調整をするとか。表向きは華やかじゃないですか。うみくんなんて、"歌ってみた"をあげている方の中でも、特に目を惹く華やかさがあるというか。なんだけど、すごい真面目じゃないと、ああいう作品をずっとコンスタントに出し続けることは、やっぱり不可能だよなっていうのを、最初に感銘を受けたんです。

-同じヴォーカリストとしては、どうですか?

内田:うらやましいところがいっぱいあります。低い声からハイトーン、ロング・トーンまで、いろいろな技術をめちゃくちゃ掛け合わせて使ってるというか。それを瞬時に判断して出してるのがすごいんですよ。これはぜひとも、もっと伝わるべきだと思う。

うみくん:あはは、力説、あざっす(笑)。

内田:僕が偉そうに言ってますけど、並みじゃあ、あれはできない。

-そこは、うみくんが音大の声楽科の出身で、アカデミックに"歌う"ということを突き詰めたからこその技術なんですかね。

内田:うーん、なんかね、安っぽいたとえしか出てこないんですけど、"SLAM DUNK"で言ったら、山王工業みたいな感じですよ。努力とか研鑽、そういうのが前提条件としてあるんだけど、試合で出すところはそこじゃない。ただ、強い。パフォーマンスとしてかっこいい。で、ここの部分は人には見せない感じ、これって粋なんですよね。

-努力の部分を見せない。

内田:うん。僕は、そこ(見えない努力の部分)にも、うみくんのすげぇ魅力が詰まってるって思ったから、その角度からうみくんに切り込んで歌にしたいなと思ったのが、今回の「ONE」なんですよね。

うみくん:リリックにパーソナルな部分を書いてくれたよね。ずっと僕の曲を聴いてくれてる人たちにもそれが伝わって、"泣いた"っていう感想がすごく多かったんです。

内田:"今までのうみくんの道のりがフラッシュバックしてます"とかね。そこは僕がすごく書きたかったから、届いて良かったなって思った。しかもね、ちゃんと僕にもメッセージをくれるんです。みんな、うみくんが大好きなんですよ。見たらわかるんです。もう、プロフィールには、うみくんのことしか書いてない。そういう方って愛を使う場所は1本でいいんですよ。でも、その愛を少し僕にもわけてくれるんです。そこが、僕らのメンバーもビビってて。なんか、すごいなって。そこからも、うみくんが愛されてるっていうのが実感できるし。こういう人たちに対して何を出せるかっていうのが、(うみくんの)作品の意欲に繋がっていくのは容易に想像できますよね。