Japanese
うみくん × 内田直孝(Rhythmic Toy World)
うみくん
Rhythmic Toy World:内田 直孝(Vo/Gt)
インタビュアー:秦 理絵 Photo by fukumaru
-ちょっと話が戻っちゃうんですけど。さっきの質問の続きで、うみくんは、内田さんのクリエイティヴに関しては、どう見ていますか?
うみくん:制作の過程で逐一確認してくれるんですよ。
-というと?
うみくん:細かいリリックの一文字一文字に対して、なぜ、こういう選択肢があるのかとか、すごく説明してくれるのに感動したんです。この話だけ聞くと、"普通のことか"と思うかもしれないんですけど、音楽だけにかかわらず、社会ってそれが普通じゃないんですよね。新入社員として入ったときに、丁寧な説明があるほうが少なくて。変な言い方だけど、僕は音楽の仕事を18歳からやってきて、そういう愛のある瞬間に触れたのは5本の指で入るぐらいなんです。別にこれは何かを悪く言うわけではなくて。
-わかりますよ。
うみくん:そこで、"あ、うっちーは本当に信頼できる人なんだな"って感じて。すごくモチベーションが上がりました。僕もやれる限り、ちゃんとやらなきゃなって。
-友達関係だとわからないけど、一緒に仕事をして見えるものがあった。
うみくん:戦場を戦い抜いてきた人の流儀というかね。もちろんスキル的なところも、僕と全然違うんです。僕は、どっちかというと、魔法タイプなんですよ。後ろから魔法を撃つような位置取りなんですけど、(うっちーは)タンカーみたいな感じですよね。攻撃を受けながら、攻撃する、みたいな。基本的に僕にないスキルとかパラメーターがすべて特化されてるなと思います。僕はゲーマーや、アニオタっていうところもあって、生の人の感情をなかなか表現することがなかったというか。どちらかというと、空想上のモチーフとか、そういうリリックとか世界観が好きだったんですけど。うっちーは、より多くの人が共感できる言葉のキャッチボールを生でずっとしてきたんだと思いますね。
-それぞれ戦う場所が違うからこそ、尖らせれる部分も違ったんでしょうね。
うみくん:うん。だから、僕とうっちーは持ってるものも見てきたものも通ってるものも違うんだけど、感情とか、経験とか、価値観っていうところがクロスオーバーする。だから、話してても楽しいし学びもあるというか。"あぁ、俺もちゃんとせなあかんな"っていう瞬間があるんです。それが全部いい具合の化学反応になったんですよ。
-なるほど。今回のコラボをやるっていうのは、会ってすぐに決まったんですか?
内田:結構すぐですよ。最初に会った日に、絶対になんかやろうっていう話にはなってて。現場で"面白いことやろうよ"だけで終わることってよくあるんですよ。でも、うみくんとは、次の週ぐらいには"こういうのどうかな?"って話があったりして、楽しく円滑に進んだなって。
-「ONE」は、作詞作曲が内田さん、アレンジがリズミックになります。楽曲に関しては、うみくんから、"こういう曲にしたい"っていう要望があったんですか?
内田:ありましたよ。それはもうね、うみくんから。
うみくん:え? そ、そんなに......なかったんですけど。
内田:あははは、わざと、すげぇある風に振ってみました(笑)。
うみくん:今回、僕は全部お任せしようと思ったんですよ。っていうのも、僕は今までやってきたキャリアの中で、リリックまで含めて人に書いてもらうのが初めてなんです。誰かのフィルターを通して、自分を表現してもらったことが、人生で一度もなかった。だったら、信頼できるうっちーに頼んでみようかな、と思ったのがスタートで。その楽曲のテーマに関しては、リズミック感満載でお願いします、以上っていう。
-あ、なるほど。ほぼ丸投げだ。
うみくん:そうそう(笑)。
内田:最初、楽曲に関して、電話がかかってきたんですよ。でも僕出られなくて。そこも(うみくんは)真面目なんですよね。電話の折り返しを待つのではなく、すぐにボイスメッセージを送ってきたんですよ。セルフ留守番電話みたいな。すごく効率いいじゃないですか。それがすごい衝撃的だった。
-できる人って感じがします。
内田:それを文面で書くのではなく、ボイスメッセージで送ってくるところにキャラが表れててね。そこもなんか良かった。
-クリエイティヴなことって、文面で伝えようとすると誤解も多いですから。
内田:そうなんですよ。で、なんだろうと思って聞いたら"うみくんですぅ~、おつかれさまですぅ~"みたいな。"あの~、楽曲の案件なんやけどぉ、THEリズミックという感じで!"って。元気な、喜怒哀楽で言ったら楽しいとか、よろこびのほうでお願いしたいなと思ってますみたいな。で、なるほどなと。わりと自分ら的には、バラエティに富んだ楽曲をやってるから、どこをTHEリズミックって思うかは、聴いたタイミングと心境によって違いがあるなと考えてて。でも、楽しいとかそっちのほうだって言うから、じゃあ僕らの代名詞的な「僕の声」(2018年リリースのシングル表題曲)みたいな音像を目指そうと決めて。
-さっき、うみくんは"弱虫ペダル"も観てたって言ってたから、リズミックと言えば主題歌だった「僕の声」のイメージもあったでしょうしね。
内田:で、最初はうみくんのファンへのメッセージを書こうかって考えたんですよ。でも、僕はうみくんじゃないから、あんまり純度の高いものは作れない。だったら、同じヴォーカリストっていう部分で、今までの歩みで理解できるよろこびとか苦悩であれば、かなり純度の高い状態で書けるかなと思ったんです。うみくんの華やかな部分しか知らない人たちに、そこだけが魅力じゃないっていうのを知ってもらうことで、もっとうみくんを愛せる、みたいな楽曲をプレゼントできたらなと思って作り始めたんですよ。
-うみくんはデモを聴いて、どう思いましたか?
うみくん:もう最高ですよ。完成形が見えてきたときに、Dメロのところ......。
-"キミがボクにくれたんだ/夢の見方も 描くチカラも"のところ?
うみくん:そこがいいなと思いました。僕もファンのみんなに、"いつもありがとう"っていうテーマで作ったことはあるんですけど。ここまでわかりやすい言葉で、僕のフィルターを通して表現してもらえたのが初めてで。自分じゃ出てこなかった言葉選びというか。
-自分ではここまでストレートには書けない?
うみくん:基本、僕は伝え方が下手なんですよね。たぶん、この言葉を僕のファンの人たちは一番待ってるんだろうなって思ったんです。なんか、嫁にいつも"愛してる"って言えない不甲斐なさを解消してもらえた、みたいな(笑)。"こうやって言うんだよ"っていうパスがきた気がして。
内田:たしかにね。いるよね、そういう人(笑)。
うみくん:いつもファンのみんなに"ありがとう"って思ってるけど、意外と、"愛してるよ"みたいなのはネタでしか言わないから。そこに学びもありましたね。
-メロディの作りとしては、内田さんが、うみくんの歌のテクニックをたくさん使わせようとしてるのが明らかにわかる構成ですよね。
内田:当然ですよね。だってうみくんに歌わせたいように歌わせられるわけですよ。
うみくん:うみロイド(笑)。
内田:しかも技量的に不可能がないっていう前提から始めると、これもかっけぇかも、これも痺れるかもっていうのがどんどん増えていって。なるべく同じメロディや展開を持ってきたくなかったんです。
うみくん:ずっと新しい景色に変わっていくんだよね。
内田:うみくんA、うみくんB、うみくんC、うみくんDみたいな感じ。熱く歌う部分だったり、優しく歌う部分だったり、エモーショナルな部分だったり。
-ラップの部分もあり。
内田:そう、そういうのを曲の世界観にそぐわないようなものじゃない限りは入れたろ、みたいな感じでした。もうバイキングですよ(笑)。"もう1回行けば、いいやん"みたいなね。"なんでハンバーグの隣にみかん乗せるの?"みたいな、あの感じです。とにかく欲張りました。
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