Japanese
Newspeak
2019年11月号掲載
Member:Rei(Vo/Key) Ryoya(Gt) Yohey(Ba) Steven(Dr)
Interviewer:TAISHI IWAMI
OASISやKASABIAN、MUSE、COLDPLAY、近年だとTHE 1975やBRING ME THE HORIZONらのような、ビッグなロック・バンドになっていくかもしれないポテンシャルを感じるアルバムが、ここ日本から生まれたと言っても過言ではない。音のスケール感、柔軟なグルーヴ、歌とメロディの力といった持ち前の魅力を、めまぐるしいスピードで拡張していくNewspeakの4人は、何を思いこの『No Man's Empire』というアルバムを作り上げたのか。そのメンタリティやサウンド・プロダクションの秘密を解く鍵は"シリアスとユーモア"。自らの音楽性をストイックに磨き上げる姿勢と、まるで子供のような遊び心が一体となったからこそ完成した大作の魅力を、"読む"ことでも味わってもらいたい。
-本誌での特集号(2019年4月発行の激ロック×Skream!マガジン"Survive Said The Prophet × Newspeak SPECIAL ISSUE")を作ったSurvive Said The Prophetの47都道府県ツアー"Now more than ever Tour"に同行し、感じたことを教えてもらえますか?
Rei:大雑把に言うとサバプロ(Survive Said The Prophet)はラウド系で僕らはインディー系みたいな、ジャンルとか出自ってあるじゃないですか。今回はあくまで彼らのツアー。だから最初はそのジャンルの違いを気にしてたんです。でもお客さんはそんなこと全然気にしてなくて。それは、サバプロの音楽的なレンジの広さ、ジャンルを超えたポップとしての魅力も大きいと思うんですけど、みんな壁なんて持ってないし、何にも縛られてない。気にしてたのはこっちだけだったんだって、わかったことはすごく大きかったです。
Yohey:もともと自分たちの中にないことをしても逆に通じないんですよね。例えば、ラウド系のバンドってステージの前方にお立ち台があるじゃないですか。あれもちょっと使ってみたんですけど、なんか違うなって。いろいろと気がつくポイントがあって、だんだん気持ちに余裕が生まれてきた感触はありました。
-余裕が生まれることで、演奏にどう作用するのですか?
Rei:歌は結構変わりますね。余裕がない状態で無理に盛り上げようとすると、頑張って声を張りすぎちゃって、自分の声の本当に美味しい帯域が出せなかったりして。
Steven:ドラムもそう。力が入ってると頭で考えて一生懸命叩いてる感じなんだけど、リラックスしてるときは、何も考えてないのに手が出る。"なんか勝手にいい感じで叩いてるぞ"って。
Rei:おかげでサーキットや対バンのイベントに出たときに、どんな状況でもある程度のところまで持っていけるようにはなりました。
-サーキットは複数箇所で目まぐるしくライヴが行われているので、下手なことをすると、みんな出ていく。顕著ですよね。
Rei:あ、でもどうだろう? サーキットやフェスは最初から何をやってもあまり離れていかなかったかも。うん、僕らはもともと良かったんです(笑)。
Yohey:って言えるくらいには成長しました(笑)。
-そして、47都道府県ツアーを経ての今回のアルバム『No Man's Empire』も自信に満ち溢れているように思いました。と言うのも、既発曲が1曲もない。
Rei:既発曲を入れる選択肢もあったんですけど、アルバムを想定して作った曲はなかったし、デモの段階で新曲だけでいいものになると思ったから、その純度は下げたくなくて。100パーセント満足することなんてないかもしれないけど、すでにいい感触が得られている曲に頼らずとも、自信を持って届けられる作品になりました。実際に聴き返しても十分すぎるくらいに、とにかく濃い(笑)。
-はい(笑)。「July」(2017年11月リリースの2nd EP表題曲)や「Lake」(2018年リリースの1stミニ・アルバム『Out Of The Shrinking Habitat』収録曲)、「What We Wanted」(2017年6月リリースの1st EP表題曲)といったキラーチューンを入れることが、むしろもったいないくらいに、"今のNewspeak"としての純度が高く、内容の濃いアルバムだと思いました。例えばTHE 1975やBRING ME THE HORIZONのような、ビッグなステージを踏めるだけのロック・バンドとしてのポテンシャルを強く感じます。そこで、みなさんはバンドの目指す先や、"Newspeakらしさ"をどのように考えているのか、知りたいです。
Rei:僕ららしさとか、理想とするバンド像はずっと変わってないんです。ロックが好きだからこそ、ロックを文化として根づかせたい。いろんなインタビューでも話してることなんですけど、僕が住んでいたイギリスだとひとつのイベントに10代から60代や70代の人まで遊びにきてる。でも日本だと10代から30代くらいまでじゃないですか。
-バンドの世代によって分かれますよね。
Rei:でもロックって歴史が長いし、いろんな音楽の要素が詰まってるから、世代を跨いで多くの人々に愛される曲を作れることが魅力だと思うんです。僕の場合だと自分が10代のころに衝撃を受けた00年代のロック~今の時代が中心にはあるんですけど、それだけじゃなくて昔の音楽も大好きですし。メンバーもみんな、いろんな年代やジャンルの音楽を聴くし、アルバムには80年代、90年代、00年代と、様々な要素が入っています。とは言っても、それらの要素をミックスすることに、めちゃくちゃ意識的になっているわけでもないんですけど。
Yohey:僕ら5人は好きな音楽のジャンルも年代もバラバラ。そこで概念として共通するのは"ポップなもの"なんです。だから自然とReiが言ったような多くの世代に愛される音楽性に向かいたくなるし、それぞれのいいところを活かしながらまとめていくことが楽しいんです。
-作詞作曲を手掛けるReiさんは、おっしゃったような00年代のロック、中でもインディーがルーツの真ん中にあって、そこからいろいろと派生したんですよね?
Rei:もともとはそうですね。Stevenはその真ん中がポップ・パンクだし。
Yohey:僕はインディーも、ポップ・パンクやラウドなロックも好きですし、レア・グルーヴやファンクを、プレイヤーとしてそこしか見えなくなるくらいに掘ってた時期もありました。
-Ryoyaさんはどうでしょう。
Ryoya:僕もいろいろ聴くんですけど、ギタリストとしてハマっていったのは、60年代後半から70年代のブルーズ・ロック。Stevie Ray VaughanとかRory Gallagherとか。
-それぞれの趣味嗜好やプレイヤーとしての特徴を曲にどう落とし込むのか。例えば、以前のインタビュー(※2018年10月号掲載)で、Stevenのドラムは、根がアメリカのポップ・パンクなので、ミニマルなスタイルがハマりそうなダンス・ミュージックでも手数が多いことについて話してくださったじゃないですか。でも、TAME IMPALAのライヴを観て、シンプルに叩くカッコ良さに目覚めてきたとも。
Rei:最近は結構(手数を)抜くようになってきたよね。前は、"どうせバンドなんてやってても売れねぇんだから、好きなように叩かせろ"って(笑)。
Steven:言ってた(笑)。だって、売れたいと思ってやってるバンドはたくさんいるし、僕も前に何度もバンド組んだけど売れなかったし、このバンドが始まったときにも、売れないって思ってたし。"どうせなら楽しくやろうぜ"ってね。
Rei:でも、ライヴをやるにつれて肉体的にしんどいってなってきてね(笑)。あとは、やっていくうちに、もうちょっとちゃんとやれば、もしかしたらなんとかなるんじゃないかって思うようになってきて、曲に合わせて音を抜くようになって。
Yohey:"手数の少ないドラマーのほうが、今の時代はモテるよ"って言ったら"そうかもね"って、ニヤニヤもしてた(笑)。
Ryoya:単純だなぁ(笑)。
Rei:そんな感じで、ワイワイやったり真面目に考えたりしてるうちに、Newspeakとして自分の引き出しをどう出せばいいか、それぞれ個人としてわかってきたし、ほかのメンバーが考えてることも汲み取れるようになってきましたね。
-すごくストイックに完成度を突き詰めるところと、無邪気に活動しているところのギャップが面白いバンドだなって。
Rei:僕らの作品にはシリアスな部分もあるんですけど、ただふざけてるくらいのユーモアもあって、どっちも大事だしどっちもあることが僕ららしさだと思います。
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