Japanese
sleepyhead
2019年10月号掲載
ネクスト・フェーズへの突入を高らかに宣言したEPから約半年、sleepyheadが早くも3rd EP『endroll』をリリース。本作のタイトル曲は、かねてより親交のあったTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也を迎えて制作した、意欲作になっている。また、当初の予定にはなかったのだが、武瑠が今作において"もはや主役といってもいい"と話す、トラックメイキングを務めたIttiが、急遽取材に同席することに。そんなラフな空気の中でインタビューは行われたのだが、話の内容は、武瑠がこの先に描いているsleepyheadの明確すぎるヴィジョンにまで及んだ。そこでは衝撃的な発言も飛び出したのだが、その言葉は、決して型にハマることのない武瑠というアーティストのスタンスや、彼からとめどなく溢れ出す飽くなき表現欲求を、改めて思い知らされるものだった。
sleepyhead:武瑠
Itti
インタビュアー:山口 哲生
-これまでリリースされてきた作品の歌詞を振り返ると、武瑠さんがどういう道を歩いてきて、これからどうしていくのかというものが基本軸にありましたけど、今回リリースするEPのタイトル曲「endroll feat.山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)」は、そういったストーリーテリング的な部分は薄めというか。
武瑠:たしかに。今回は自分の人生がどうとか、そういうのはあまり関係ないかもしれないです。
-個人的には、武瑠さんの趣味嗜好がすごく出ている印象を受けました。
武瑠:サウンド感とかはそうですね。自分のそういう趣味の部分にフォーカスしたい気持ちもあったんで。今回はトラックメイキングをしてくれたIttiが、もはや主役といってもいいんじゃないかなと思っていて......だから、ちょっとめちゃくちゃなこと言いますけど、今日Ittiがこのあとここ(事務所)に来るんですよ。ちょっと打ち合わせしなきゃいけないことがあって。せっかくなんで、途中でちょっと話してもらうかなと思っているんですけど。
-えっ、大丈夫なんですか?
武瑠:"明日の夜って空いてる? っていうか事務所でインタビューしてるから間に合う?"って聞いたら、"別件が終わったら行く"って言ってたんで大丈夫です(笑)。
-まさかの展開(笑)。
武瑠:すみません、ラフな感じで(笑)。
-いえいえ、せっかくの機会ですから。では、Ittiさんには後ほど参加していただくとして、まずはタイトル曲「endroll feat.山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)」のお話から。この曲ではTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo/Gt)さんを作曲者として迎えています。以前から親交があることをメディアなどでもお話しされていましたが、今回参加された経緯からお聞きしたいです。
武瑠:自分の中で曲のイメージはあったんですけど、自分で全部書くと飽きちゃうというか。交互にやっていきたいんですよね。前作の『meltbeat』(2019年3月リリースの2nd EP)は自分で書いたから、次は誰かとやりたいなと思って。で、これはどこかで絶対にやりたいと思っていたヤマタク(山中)にお願いしようと。でも、ふたりだけで完結しちゃうのは面白くないと思ったから、ヤマタクの新しい引き出しを開けてくれる人を呼ぼうってIttiに声を掛けました。
-最初に武瑠さんの中にあった曲のイメージというのは?
武瑠:時計や砂時計が何百個も宙に浮いていて、そこに人が立っていて、時計が止まったり、砂時計の砂がなくなったりすると誰かの命がなくなっている、みたいなヴィジュアル・イメージがあったんですよ。それをもとにいつもみたいに企画書を作って、ヤマタクとIttiに投げたんですけど、それよりももっと前に"HAVIT ART"というクリエイティヴ・チームと話を進めていて、先にCDのデザインとかジャケットを作ってました。
-楽曲としてはどういう流れで作り進めていったんですか?
武瑠:最初にIttiにリズム・トラックを作ってもらって、それに対してヤマタクにコードとメロディをつけてもらって、俺が歌詞を書くっていう。ちょっと変わった作り方をしてますね。ヤマタクは2パターン作ってくれたんですけど、今回の形になっているもののほうがいいなって。
-別バージョンもあったんですね。
武瑠:そっちはもっとラップっぽい感じだったんですよ。もともとは、そういう感じでいく? っていう話もしてたし、トラックの感じからもダークな雰囲気になるかなと思っていたけど、そこにちょっとシューゲイザーな感じのギターと広いメロディを持ってきてくれたから、ヤマタクとやるとなるとやっぱりこっちかなって。あんまり限定した世界観だと俺とIttiでできちゃうんで。歌詞は、夜から朝になるっていうざっくりとしたものしか用意してなくて、あとは来たものに対して言葉を書いていきました。
-じゃあビートに関しても、ギターに関しても、こういうヴィジュアル・イメージが自分の中にあると伝えただけで、こうしてくださいとは特に言わなかったと。
武瑠:ほぼほぼ言わなかったです。だから、最初は若干戸惑ってましたね。当たり前ですけど(笑)。"えっ、リズムが先!?"って。だから、今回は実験っていう感じが強かったです。
-そもそもですが、山中さんとはどういうキッカケで知り合ったんですか? 今作のリリースを発表された際に、タイトル曲は、sleepyheadが産まれるきっかけの一端を担ったアーティストを迎えた楽曲になるとアナウンスされていましたけども。
武瑠:うちのブランド("million dollar orchestra")を手伝ってくれている人が、オーラル(THE ORAL CIGARETTES)のグッズ・デザインとか衣装をやっている関係で、紹介してもらったのが最初ですね。自分が撮っていた映像をヤマタクも観てくれていたし、すぐに仲良くなって、何かやりたいねっていう話をして。そのあとに自分のバンドが解散することになったんですけど、ヤマタクがすごく人懐くて、且つ情深い人だから、(ラスト・ライヴの)武道館に行けないっていうことに対して、"今日は行けないけど頑張れ!"って自撮りしたやつをライヴ当日に送ってきてくれたんですよ。そのことに結構ビックリしたんですよね。そんなことしてくれる人いるんだ!? って。
-めちゃくちゃ素敵ですね。
武瑠:それで武道館が終わったあとに俺が引きこもりになるって言ってたから、"遊びにいこう"って誘ってくれて。そのときにSKY-HIとかもいたんですけど、"やったほうがいいんじゃない?"って言われたんです。でも、自分的には武道館が終わった直後だったから、なんの意志も湧いてこなくて......とは言いつつも、武道館の2日後に大事件が起こったんですよ。
-大事件?
武瑠:内容はちょっと言えないんですけど、それがめちゃくちゃキツかったんですよ。マジで信じられないようなことだったんで。とにかくもうめちゃくちゃ悔しかったんですけど、それをどこにもぶつける先がなかったから、ムカつきすぎて曲を書いたんです。その曲を入れたアルバムを、"センチメンタルワールズエンド"っていうタイトルにして出そうと思っていて。
-もうアルバムのヴィジョンがあるんですね。
武瑠:なんならsleepyheadの活動って、それを出すことが目的みたいなところもあるんですけど......まぁ、そのときはそういう流れがあって。だから、自分としてはまた音楽をやるのかどうか決めていなかったけど、みんなに"やってみたら?"って言われるから、やってみるか......っていうのが、sleepyheadの始まりなんですよ(笑)。
-山中さんが、改めて動き出すことを促してくれたと。
武瑠:そうですね。SKY-HIも "絶対に助けるから"って。それで去年「1 2 3 for hype sex heaven feat.SKY-HI,TeddyLoid,Katsuma(coldrain)」(1st EP『NIGHTMARE SWAP』収録曲)を作れたから、今回は、ヤマタクと作りたいなって思ったんです。
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