Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

sleepyhead

Skream! マガジン 2022年04月号掲載

2022.03.17 @渋谷WOMB

Reported by 山口 哲生 Photo by エド ソウタ

映画でもマンガでも小説でもなんでもいいのだが、物語の結末があまりにも美しいと、終わってしまった寂しさよりも、清々しさや爽快感が勝ることがある。この日のライヴも、まさにそんな感覚と余韻が身体に染み渡っていく、完璧な最期だった。

"負の感情から生み出すルーティーンみたいなものは、1回どこかでやめなきゃいけない"。以前、アルバム『センチメンタルワールズエンド』についてのインタビュー(※2021年9月号掲載)でそう話していた武瑠ことsleepyhead。感傷的な世界を終わらせるため、"今までの自分の遺書"としてしたためられた音源と小説を手に、彼は最後の旅に出た。そして、始動4周年記念日──2018年、sleepyheadとしての初ライヴ"sleepyhead 0TH ANNIVERSARY LIVESHOW 「透明新月」"を行った日でもある──3月17日、渋谷WOMBにて"sleepyhead THE LAST LIVE TOUR FINAL「感傷満月」"を迎えた。

ライヴ本編は、『センチメンタルワールズエンド』の収録順通りに進行。フロアに柔らかく歌い掛けた「BABY BABY」から始まり、生のベースとドラムが、ポップ・パンク的な要素もあるサウンドをより躍動的なものにした「highway to the twilight prod.IOF」や、ドリーミーな「NIGHT PARADE prod.Ben Neary」に、メランコリックな「rain one step feat.Ichika Nito」、"自分がこれまで書いてきた中で一番好きな恋の歌"という「ぼくのじゃない」や、"この曲を届けたくてsleepyheadを始めた"と前置きされた「死んでも良い」など、続々と曲を届けていく。

『センチメンタルワールズエンド』は、前述のコンセプト通り、作品全体が感傷という名の霧に包み込まれたような、内省的な印象を受ける楽曲がほとんど。しかし、そんな楽曲たちを、ビートに身を委ねながら歌い上げていく武瑠は、清々しいほどに笑顔だった。"最後のライヴで、すごく熱い気持ちになって切なくなったりするのかなと思っていたけど、一音一音がすごく楽しい"と、MCで話していたが、もちろんライヴで得られる高揚感は確実にあっただろう。それと同時に、その晴々とした表情は『センチメンタルワールズエンド』で、sleepyheadとしての物語に完全にピリオドを打てたことを、まざまざと感じさせられるものでもあった。それゆえに、これがラスト・ステージという寂しさよりも、彼のここまでの集大成を存分に堪能したいという想いが、心の中でどんどんと膨れ上がっていく。

残り1曲となったところで、武瑠はオーディエンスに話し掛ける。コロナ禍でありながらも支えてくれたファンに感謝を伝え、"みんなのほうがつらいから、自分は苦しんじゃいけないって言わないでほしい"と、自身のことを肯定してくれた彼/彼女たちに優しく寄り添うと、sleepyheadを始めた理由について、改めて話し始めた。

"自分が抱えきれないような、信じられない出来事があって、すべてを否定したくなるような気持ちが、sleepyheadの始まりの燃料になった。だけど、みんながくれた場所で俺が誇りたいのは、傷ついた気持ちを傷つける気持ちに使わなかったことです。そして、そうやって美学を持って立ち続けられたのは、支え続けてくれたみんなのおかげです。この感傷を、自分の中で感動に変えることができました。最後、自分の人生を表す曲だと思います。終わらせるために、許すために──"。

そんな言葉から始まった「感傷終末世界 feat. 圭」。命が脈打つように轟くビートと、慟哭するように高鳴らされるギター・サウンドに包まれるなか、武瑠は一際エモーショナルに歌を届けたあと、ステージのLEDヴィジョンに浮かび上がった満月を前に呟いた。"悲しみや、絶望や、諦めや、卑下を、強さに変えられることを証明してくれたみんなに、心から感謝します──「月が綺麗ですね」"。

アンコールは、sleepyheadとして初めて発表した「闇雲」から、「酩酊」、「clap clap」とこれまで現場の熱を高めてきたキラーチューンを連続で繰り出していく。MCでは、KAORU(Key)、SHIN(Ba)、前田遊野(Dr)というsleepyheadを4年間支え続けてきたサポート・メンバーたちと、ライヴ当日にあった出来事や思い出話で盛り上がり、「1 2 3 for hype sex heaven feat.SKY-HI,TeddyLoid,Katsuma(coldrain)」に「狂宴騒々」と、ステージもフロアも暴れ納めと言わんばかりに、全力でこの瞬間を楽しんでいた。そして、さらにダメ押しと言わんばかりに叩きつけられた「heartbreaker」は、この4年で積み上げてきたすべてをぶちまけるような、凄まじい熱狂を巻き起こした。

"めちゃくちゃ楽しくて、自分の人生に誇りを持てる場になったので、全然湿っぽくない(笑)。一切悔いはないです!"と、笑顔で叫ぶ武瑠。そして"最後に新しい約束をさせてください"と、自身の誕生日である5月11日、LIQUIDROOM ebisuにて"武瑠 15TH ANNIVERSARY LIVE「butterfly BoY」"を開催することを発表した。この公演は、SuG、浮気者、そしてsleepyheadと、これまで発表してきた自作曲のみで構成された"自己ベストセットリストLIVE"。満を持して、武瑠名義での活動をスタートさせることとなった。

"完全に成仏させるためにもう1曲だけやらせてください!"と、武瑠がsleepyheadとして最後に届けたのは、「meltbeat feat.DURAN」だった。瑞々しいサウンドが全身を突き抜けていくダンス・ナンバーだが、この曲は"十字架を背負うよりも 未来に口づけ"という一節で結ばれている。その言葉通り、自身の過去と決着をつけた武瑠は、ここから先、何を描くのか。彼が紡いでいく未来を、これからも見続けていきたい。

  • 1