Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

sleepyhead

Skream! マガジン 2019年06月号掲載

2019.05.11 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 山口 哲生

ネクスト・フェーズへの突入を宣言した2nd EP『meltbeat』を手に、初の全国ツアーを開催したsleepyhead。"PRIVATE FUNERAL"と題したツアー・ファイナルは、武瑠の誕生日当日ということもあり、かつての盟友であるyuji(ex-SuG/Gt)がケーキを持って登場するサプライズも。そんなアットホームな場面もありつつ、迫力のあるレーザービームが飛び交うなか、sleepyheadの"これから"が全編通して十二分に表れていたステージだった。

ライヴは「meltbeat」からスタート。音源よりもベースやバス・ドラムを始めとした低音域が強烈なまでにブーストされていて、フロアの興奮を一気に押し上げる。そこから矢継ぎ早に曲を畳み掛けていったのだが、これまでの彼であれば、ここからアッパー・チューンを繋げていきそうなところ。しかし、この日用意されていたのは「BACK TO FIRST DAY」や「アトノマツリデ」といった憂いを帯びたダンス・ナンバーで、それらを服がビリビリと揺れるほどの重低音を轟かせて届けていた。ローを強調した欧米のポップ・ミュージックのトレンドを加味したサウンド感といい、曲の配置といい、これまでのモードとは明らかに違うことが伝わってきたのだが、それだけに終わらず、なんとここで早くも未発表の新曲を初披露! どことなく感傷的でありながらもダンサブルなサウンドは、なんとも今のsleepyheadらしく、初披露ながらもオーディエンスが飛び跳ねまくる即効性のある曲になっていた。ちなみにこの日、sleepyheadは3rd EP『endroll』のリリースと、最終公演をマイナビBLITZ赤坂に設定したコンセプト・ツアーを開催することを発表したのだが、披露された新曲は「endroll」ではなく、8月6日に渋谷clubasiaにて開催するライヴ・イベント"sleepyhead BEAT GAMBLES"のテーマ曲とのこと。"カジノ型ミュージック・エンターテイメント・ショー"という斬新なコンセプトを設けたイベント含め、この曲がどういう形で世に放たれるのかも楽しみだ。

今回のツアーは初日も拝見していたのだが、サウンドの微調整を何度も繰り返したようで、そのときとは別物と言っても過言ではないほど、どの曲も洗練されていた。中でも、中盤に配置されていたメランコリックな「HURT OF DELAY」や、チルアウトな「akubi_girl」といったスロー・ナンバーの没入感が心地よく、その音の上で自由に、そして楽しそうに身を委ねながら歌う武瑠の歌にかなり引き込まれた。他にも、よりセクシー且つ凶暴な様相にアップデートされた「WANT ME BACK」や、本編のラストを飾った「heartbreaker」の獰猛っぷりは尋常ではなく、"狂乱"という言葉が相応しい仕上がりに。それに反応するオーディエンスのテンションも非常に高く、とてつもない熱狂がフロアに渦巻いていた。

楽曲でもサウンド面でも見事なまでにニュー・モードを提示していたが、それを一番強く感じさせられたのは、アンコールで披露された「結局」だった。1stフル・アルバム『DRIPPING』に収録されていたこの曲には、音楽にまつわるすべてが嫌になり、絶望に打ちひしがれながらも前に歩き出した意志が綴られている。これまでもライヴでたびたび披露されてきたが、その決意と同時に、そこに刻み込まれた痛みも共に伝わってくるものだった。しかしこの日、この曲からそういったネガティヴな要素は微塵も感じられず、その力強い意志だけが残り、それを笑顔で歌う武瑠の姿があった。それこそが、sleepyheadがネクスト・フェーズに突入した何よりもの証左だったと思う。ライヴの最後、武瑠は力強く叫んだ。"これから先、世の中のいろんなバンドと戦っていく意志を込めて、「PRIVATE FUNERAL」というタイトルにしました。一緒に戦っていこう!"。

準備は完全に整った。sleepyheadの快進撃が、いよいよ幕を開ける。

  • 1