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INTERVIEW

Japanese

sleepyhead

2019年10月号掲載

sleepyhead

-なるほど。アルバムのお話がかなり気になるので、そこはまた追ってお聞きしますね。今回のEPには全4曲収録されていますが、「dark side beach」と「bedside」は、前作の『meltbeat』に収録されていた「heartbreaker」と「akubi_girl」を、それぞれ掘り進めていった印象がありました。

武瑠:そうですね。今回は、『meltbeat』と対になるような感じで作っていたので。「dark side beach」は、「heartbreaker」で掴んだ自信みたいなものがあったんですよ。「heartbreaker」のアウトロって、今まで自分が作ってきた曲の中で一番高揚感を得られるぐらい、自分の中で完璧だったんです。だから、その路線の曲を増やしたいなって。実際にはもっとコアな感じになったし、「heartbreaker」よりもおとなしい感じにはなりましたけど。

-「bedside」は「akubi_girl」の流れを汲んだメロウな曲になっていて。

武瑠:「akubi_girl」は、関係者からもファンからも反響がすごかったんですよ。自分もこういう曲は得意だし、ここからの活動としてはライヴをバンバンやっていく感じでもないかなと思っているから、こういう曲を増やしたほうがいいなと思って。で、最初にサビの"ベッドサイドに忘れてきたのは/伝えようとしたハズの「さよなら」"っていう歌詞とメロディが出てきたんですよ。それが、めちゃくちゃ"エンドロール"っていう感じがするし、ラップとまではいかないけど、韻も踏んでいて覚えやすいから、この曲は絶対にいいものになるなと思って。じゃあ「bedside」は、あえて「akubi_girl」とまったく同じコード進行で作ってみようと。だから、今回は全体的に音の実験みたいなものが強かったです。

-かなり挑戦的な1枚になってますね。では、先ほどIttiさんが到着されたので、ここからはお話に参加していただこうかなと思います。Ittiさん、よろしくお願いします。

Itti:よろしくお願いします。

-まず、おふたりが最初にお会いしたのは、いつ頃だったんですか?

武瑠:もう7~8年前ぐらい?

Itti:それぐらいですね。

武瑠:everっていうクラブで会ったんですよ。

Itti:今はVISION(SOUND MUSEUM VISION)とかWOMBとか、大きいところが盛り上がっているイメージですけど、その当時は中箱が盛り上がっていて面白かったんですよ。

武瑠:everかTRUMP ROOMかっていう。そこで今のブランドのスタッフとか、VJにも会ってるんですよ。ちょっと青春感みたいなものがあったよね? ファッションも盛り上がっていて、イベントがよくあったりしたし。

-そこからもよく会っていたんですか?

武瑠:いや、しばらく会ってなかったです。

Itti:5年ぐらい?

武瑠: Ittiが俺の好きなイベントに出てたんですよ。結構本格的なパーティーなんですけど。それで調べてみたら、イギリスのレーベルからEPを出していて。えっ、就職したんじゃなかったの? って(笑)。

Itti:(笑)就職はしたんですけど、その傍らポツポツ作ってて。

武瑠:そのEPが、めちゃくちゃ良かったんですよ。

-それで、一緒にやろうよという話を武瑠さんからしたんですか。

武瑠:そうです。「WANT ME BACK」っていうライヴでやってる曲があるんですけど、そのリズム・アレンジをお願いしたら、良かったんですよ。で、ヤマタクの家に連れていって紹介して、その日の内に曲の打ち合わせをしました。

-Ittiさんとしては、武瑠さんから誘われたときにどう思いました? 

Itti:いつも自分で作って好きなレーベルに送って出すっていうスタイルだったんで、こうやって人に依頼されて作ることって、ほぼなかったんですよ。なので、いいチャンスだなと思いました。あと、武瑠さんと話していていいなと思ったのが、すべてが武瑠さんのジャッジで決まるんですよ。要は、変な大人がいないっていう(笑)。

武瑠:(笑)あるあるのやつね。

Itti:武瑠さんの感覚ですべてが進んでいくから、ぜひやりたいなっていうのは、正直思いましたね。

武瑠:(Ittiは)普段はクリエイティヴ系の仕事をしてるんで、そのへんのことをよくわかってるから、余計にそう思ったんだと思う。よくあるじゃないですか。これでいこうとしてたのに、途中で誰かが出てきて"ダメ"って言われて、うわ~......っていうやつ。

-ありますね(苦笑)。

Itti:その人を納得させるのが仕事になっちゃうっていう。それだったら嫌だなと思ったんですけど。

武瑠:それわかるわ(笑)。俺も、それが嫌だから、大変だけど、ひとりでジャッジしてるところはあるんですよ。やっぱりそこを人に委ねるのは、めちゃくちゃ危ないんで。

-実際に「endroll feat.山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)」の制作に入ってみていかがでしたか?

Itti:自分って、実は音楽知識がそんなにないんですよ。

武瑠:うん、そこも面白かった。

Itti:自分は、DJから曲作りに入ったんですけど、雰囲気でしか作れないというか、狙って作れないんですよね。だから、コンセプトを聞いて武瑠さんが好きなのはこういう感じかなって。でも、基本的には自分の好きなリズムを入れてますね。まずは、自分が好きなものを出そうという思いが強かったので、自分ができることをやったっていう感じでした。

-あと、普通ならばこの感じでいくんだろうなっていうところで外すとかする、差し引きのさじ加減が面白いなと思いました。

Itti:そこは、結構気を使っているところですね。サビ前のブレイクで盛り上げるのもいいんだけど、個人的には音楽って、盛り上がればOKだとは思わないし、間とか空間を楽しむものだとも思ってるんですよ。いつかは日本のリスナーの人たちもそこに気づいてほしいなっていう思いもあって、そういうところは、結構気を使ってますね。わびさびじゃないですけど、そこは大切にしています。ちょっと気持ち悪いんだけど、そこがいいっていう。

-あとIttiさんは、「doors」と「dark side beach」にも参加してますね。

Itti:「dark side beach」は、武瑠さんのライヴをLIQUIDROOMに観にいった日に作ったんですよ。ライヴでこういう盛り上げ方をするんだなっていうことがわかって、家に帰ってからひと晩で作って、"こういうのもできました!"って。

武瑠:それが、めっちゃ良くて。サビのあとのバースで盛り上がって踊れる曲が欲しかったんで、メイン・フレーズとメロディを俺が持っていって、"こういうのにしたいんだけど"って言いました。それを聴いて、またIttiが、トラックを変えてっていうのをIttiスタジオでやってて。

Itti:まぁ、自分の家ですけど(笑)。武瑠さんの話を聞いていると、やっぱりフロアにいる人とか、対お客さんをイメージして作っているなっていうのは思いました。自分は今までそういうアプローチで作ってなかったんですよ。自分が気持ちいいか、気持ち良くないかだけで作ってたんで(笑)。

武瑠:まぁ、そりゃそうだよね(笑)。

Itti:そこは、話していてすごく勉強になりました。

武瑠:(Ittiのトラックは)ビートと取るのか、FXと取るのか曖昧な部分ではあるんですけど、Ittiは、やっぱり音色選びがうまいと思っていて。だから、ポップスのコードとメロディを合わせたときに、すごく絶妙なバランスになると感じたんですよね。どっちかがうまい人はいるんですよ。リズムがいいとか、メロディがいいとか。でも、リズムなんだけど、リズムだけじゃないっていう捉え方をしてトラックを組める人はあまりいないから、それでお願いしたんです。だから、次にやるときはコードワークがめちゃくちゃうまいアレンジャーと組んだら、より面白いバランスになるんじゃないかなって。J-POPっぽいんだけど、なんか変っていう。

-面白そうですね。

武瑠:sleepyheadで目指しているのは、全部が生バンドみたいなことではなくて、無機質なものと肉体的なものが混ざっているものなんですよね。「endroll feat.山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)」は、そこのミックスがいい形になってるし、それをより無機質にしたのが「dark side beach」で、この曲でライヴが盛り上がったらいいなと思ってますね。クラブの音楽って、音だけじゃなくて、照明とか映像とか匂いとかが、全部一緒になって良かったりもするから、そこは、今度のツアーで表現しようかなと思ってるし、すごく重要な位置に来る曲になるだろうなと。