Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

ASCA × あわつまい × 東市 篤憲

2018年05月号掲載

ASCA × あわつまい × 東市 篤憲

歌、演技、映像。才能と才覚と才気に彩られた輝かしきトリニティにより、今ここに生み出されたのは珠玉のクオリティを誇るMVだ。TVアニメ"グランクレスト戦記"の後期オープニング曲に起用されていることでも話題となっている、ASCAの3rdシングル表題曲「凛」。この作品は、彼女にとってひとつの大事な分岐点となるであろう可能性を十二分に秘めており、そのMVを制作するにあたっては数々の名作を手掛けてきた東市篤憲氏が監督として着任。また、映像の中で存在感のある演技を担っているのは、独特な空気感を纏ったモデルにして女優のあわつまいだ。ここでは、ASCA×あわつまい×東市監督という実にレアで興味深い鼎談の模様をお送りしよう。

ASCA あわつまい 東市 篤憲
インタビュアー:杉江 由紀

-このたびはASCAさんのニュー・シングル表題曲「凛」のMVを撮られた東市監督、撮影に参加されたモデルにして女優でもあるあわつさん、そしてASCAさんご本人に臨席をいただいております。まずは、今回のシューティングを前にして、ASCAさんが監督に対しどのような映像を具現化してほしい、というヴィジョンをお持ちだったのかを教えてください。

ASCA:東市監督の撮っていらっしゃる映像を事前に観させていただいたんですけど、プロジェクション・マッピングやCGを使った非現実的な雰囲気がとても素敵だったんですよ。もともと、ASCAのMVは現実っぽくないものが多かったのもあって、これは絶対に「凛」のMVは東市監督に撮っていただきたいなと感じたんです。

-東市監督の側からすると、当初ASCAさんというアーティストに対してはいかなる印象をお持ちでしたか。

東市:対面する前に感じたひとりのシンガーの印象としては、すごく声に伸びがある人だなというのがありましたね。彼女の歌を聴いているだけで、映像のイメージが自然と湧いてきました。

-ちなみに、両者が初対面された場はどちらだったのでしょう。

東市:撮影現場です。事前の打合せとかは特にしなかったので、まさに当日ですよ。でも、昔から知っているかのようなノリでお互い接してました(笑)。

ASCA:それが、調べてみたら監督と私は誕生日が一緒なんですよ!

東市:えーっ! ほんと!? 9月5日?

ASCA:はい。どうやら、同じ星のもとに生まれたっていうことみたいです(笑)。

-なお、その初対面とあった撮影現場においては、東市監督からASCAさんに対して「凛」のMVをどのような映像世界に仕立てていきたい、という説明をされたのかも教えていただけますか。

東市:MVを作るときにはいろいろなやり方があるんですけど、今回のASCAちゃんの場合は楽曲自体が持っているパワーがとても強いので、僕としてはあえてあまりたくさん聴き込まない状態のまま現場に臨んだんですよ。それに、僕はロケハンには参加していなかったので撮影場所の様子もきっちりとは把握していなかったなかで、当日その場で曲を聴いたときに自分がどんなインスピレーションを受けるのか、ということをベースに撮影を進めていくことにしていったんです。だから、かなり直感的に"この場所であわつさんが踊っていたら美しく撮れそうだな"とか"サビはこんなふうに撮ろう"とか、そういうことはすべて現場で思い浮かべたし、全体の流れもそこからパズルのように組み上げていきました。

-......それはすごいですね。完全に天才としか思えない発言です。監督さんの中には事前に絵コンテなどを描かれる方もいらっしゃるようですが、ほぼ無の状態から現場ですべてを構築してしまうだなんて、限りなく神業だとしか思えません。

東市:たしかに、曲によっては絵コンテをみっちり描くときもあるんです。それこそ、フレーム単位で描いて何十ページにもなるとかね。でも、この曲に関してはそれがまったく必要なかったし、とにかく現場で本人とお会いしたときにアイディアを"降ろした"方がいいなと思ったんですよ。

-だとすると、東市監督が現場でASCAさんというアーティストに対して感じたのは、主にどんなことだったのでしょうね。

東市:歌だけじゃなく、動きの面でも多彩な表現力を持った人だなと感じました。例えば、ちょっとした手の動きとかそのときの指先の角度ひとつをとっても、曲を最大限に生かすようにしているなっていうのがすぐわかったし。そして、表現力という点に関してはあわつさんもそうなんですよね。あわつさんとも僕は現場で初めてお会いしましたけど、プロフィールにあったとおりでさすがジャズ・ダンスをやっているだけあって、やっぱりリズムにノるのがすごく上手いんですよ。単に映像の中で演技をするという次元とは違っていて、楽曲の音をしっかりと捉えたうえでの動きを身体全体で表現することができる人なので、撮っていけばいくほどパズルのピースがすべてバチッ! とハマっていくような気持ちのいい感覚を、僕はちゃんと得ることができました。ほんと、今回はとてもいいMVができたなと思ってます。