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INTERVIEW

Japanese

藍坊主

2018年02月号掲載

藍坊主

Member:hozzy(Vo)

Interviewer:秦 理絵

-中でもリード曲「嘘みたいな奇跡を」は本当にいい曲です。藤森さんから上がってきたときから、"これだ!"と思ったんじゃないですか?

藤森の"これだ!"っていう熱気はすごかったですよ。レコーディングする前から、"これはリードだ"っていう感じがあって。俺たちもそのつもりで臨んだので、すごく集中して作っていけて、どんどん曲が良くなっていったんですよね。

-曲のテーマとして、出会いに感謝するようなものになったのは?

今回のアルバムはテーマが"別れ"になってるんです。最後に書いたのが、この「嘘みたいな奇跡を」だったんですけど、とにかく歌詞ですごく悩みました。リードにする気は満々だったんですけど、歌詞を書くのに1ヶ月ぐらいかかって。っていうか、最初の3週間ぐらいは全然思いつかなかったので、ほっといたんですよ。

-そういう時間も大事です(笑)。

ですよね。で、他のことをやったりしてたんですけど、ちょうど、その前に「トマト」っていう曲ができたんです。この曲も別れの曲で。この2曲に同じ主人公を立てて、ひとつのストーリーにしちゃおうと思ったんです。まず「トマト」の方は、もうその人がいなくなっちゃって会うことがないから、素直に別れを受け止めてる描写を書きたかった。で、時系列としては、逆になるんですけど、「嘘みたいな奇跡を」の方では、これから別れる相手を気遣うというか、ちゃんとお別れができるようにする人の気持ちを書きたかったんです。ひとつの別れを違う視点から書くことで、ある意味、人間の矛盾するような状態が対比できるかなと思って。で、ようやくテーマが定まって書けたんですよね。

-どうして、アルバムは"別れ"がテーマになったんですか?

なんでですかね。前の取材でも質問されたんですけど、わかんなくて。知り合いに聴かせたときも"何かあったんですか?"って言われたけど......。

-"身近な人を失ったんじゃないかな?"って思わせますよね。

そんなことは全然なく。

-別れって、出会いがあるからじゃないですか。私は「嘘みたいな奇跡を」を聴いて、むしろ"出会い"の部分にフィーチャーしてる感じもしましたけどね。

感謝だったりとか、そういう温かい方に焦点があったりしますよね。

-そうそう。それに、こういう温かい気持ちに素直に舵を切れるようになってるのも、いまのhozzyさんらしいなと思います。

たしかに、昔は"愛してるよ"って、気持ち悪くて歌えませんでしたからね。

-いままでhozzyさんの歌詞に"愛してるよ"って出てこなかった?

ちょっと変態的な歌詞で出てきたぐらいだと思います。藤森が書いた歌詞ではありそうだけど......俺は、たぶんないと思います。あったらごめんなさい(笑)。

-でも"愛してる"っていうことを間接的には表現してることがあるわけで。"愛してる"って誰もが表現する事柄だからこそ、作り手のポリシーが強く出るワードだと思うんですよ。絶対使わないっていう人も意外と多くて。

やっぱり歌のテーマとしては定番で、言ってしまえば、腐るほどあるものじゃないですか。だから、たぶん尖っていたい人ほど、そこに自分が入りたくないんですよ。俺もそうだった。昔は"あれは愛の歌ですよね"とか言われるたびに、"全然違うんだよな"と思って、"次はもっとわかりにくい曲を書こう"と思ったんです。

-捻くれてますねぇ(笑)。

そういう変な反骨精神ですよね。でも、本気で"愛してる"を歌ってる人はかっこいいと思うんですよ。だけど、それを自分ができるかどうか? っていうときに、そこに嘘があるような状態だとできないというか。

-そういうところは不器用ですからね。

ホントそう(笑)。

-でも、いま素直に"愛してる"も"ありがとう"も言えたのが、「嘘みたいな奇跡を」だと。

そうなんですよね。

-あとは藤森さんの曲だと、「ダンス」もいいですね。

展開がいいですよね。この展開の仕方がまさに藍坊主! っていう。これも時乗さんが入ったことでブラッシュアップされたんです。やっぱりある程度長く音楽をやってると......よく"もう音楽は出尽くしてる"って言われるじゃないですか。そこに自分も絡めとられて、知った気になっちゃってることも多くて。ロック・ミュージックとかポップ・ミュージックにはフォーマットがあるから、それを上手に壊していくのが難しいんですよ。

-壊しすぎると、誰にも理解されないものになっちゃいますからね。

そう、昔はそんな曲も作ってきたので(笑)。だけど、時乗さんとスタジオに入ったら、俺たちが持ってないようなコードの進行をたくさん出してくれてたんです。しかも、"ヤベぇ、全然知らないわ、俺"っていうようなことが単純に嬉しかった。"まだ出尽くしてないんだ"っていう安心感があって。これから作る音楽にも、まだ可能性が残ってる。時乗さんがそういう希望をくれたんですよね。