Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

カフカ

2016年09月号掲載

カフカ

Member:カネココウタ(Vo/Gt) ミウラウチュウ(Gt) ヨシミナオヤ(Ba) フジイダイシ(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-結局、最初はカネコさんがひとりでデモを全部作ったのに、最終的にはいろんなことを共有しながら、ひとつのテーマに向かっていったんですね。

カネコ:やっぱり僕は(メンバーに)共感してほしいっていう気持ちがすごくあるんですよね。もちろんリスナーにも共感してほしいんですけど、最低限メンバーに気持ちをわかってもらえないと一緒にやっていけないから。歌詞を見せるときすごく恥ずかしかったんですよね。自分は卑屈な人間なんじゃないかって。なんか"面倒くさい人間でゴメン"っていう気持ちが常にあります。愛に対しても臆病だし。取り憑かれると頭がおかしくなるぐらいバカになっちゃうし、突っ走っちゃうし。でも"こういう人間だから、許してくれ"っていう気持ちですね。

ヨシミ:うん、許すよ(笑)。

-ちなみに、ギター・ロック的な曲と、シティ・ポップ系の曲とでは歌詞の雰囲気を変えていますか? シティ・ポップ系の方は語感の響きの良さも感じましたけど。

カネコ:そんなに意識はしてないですよ。でも無意識に変化してるんだろうなとは思います。例えば「LOVESICK」は、80sや90sみたいな、今とは違う言い回しをあえて使ってるし。「heartbreak」はヒップホップやR&Bの要素が入ってて演奏隊も淡々としてるから、歌うというより語りかけるような感じですよね。素に近い感じが出てます。

-他の収録曲についても訊かせてください。Track.9「センチメンタルコーヒーラブソング」は、歌詞にバンド名の由来でもあるフランツ・カフカが1915年に刊行した小説"変身"のことが出てきますね。"朝起きて僕が虫になっていたら/あなたは殺虫剤で殺すだろう"って。

カネコ:バンド名にするぐらいだから、やっぱりカフカっていう作家に共感してて。"醜い自分を見せたら嫌いになりますか?"っていう疑問は常に持ってるんです。無情なものとか、不条理なもの、理屈じゃない部分を問いかけてみたいんですよね。"それでも良いんだよ"って言ってほしいというか。この曲は魂の叫びであり、カフカの本質だと思います。

-リード曲の「Ice Candy」(Track.2)はメロディはポップですけど、演奏はへヴィなんですよね。

カネコ:カフカの楽曲は繊細できれいっていうイメージだと思うんですけど、ノイジーな音の中に美しさも絶対にあると思うんです。それは愛にも置き換えられるなって考えたときに、今まで僕らが出してこなかったへヴィでノイジーな音を入れたくて。その美しさを追求しました。

ヨシミ:もともとスローな曲だったけど、煮詰まりだしちゃって。試しにテンポを速くしてみたら、そのまま曲ができました。

ミウラ:降って湧いたパンチ力がありますよね。

-この曲はアイスキャンディーをモチーフにひと夏の恋を描いた曲ですね。

カネコ:"夏の恋"ってメインで言いたいぐらい思い入れがあるんです。それを曲にしたときに、"花火きれいだね"って言ってる隙に手を繋いで......みたいにありがちにしたくなくて。夏は良い思い出ばっかり残ってるけど、絶対にその裏ではトラウマとか、どぎつい怨念を抱えてるんじゃないかなと思って。それを忘れんなよっていう気持ちを書きました。


"いや、愛はあるよ"って言ってもらいたい
そしたらすごく安心するし、この世界は大丈夫だなと思う


-これだけ愛と向き合った作品ですけど、アルバムを"あいなきせかい"という真逆のタイトルにしたのはなぜですか?

カネコ:"愛なき世界"って言えるってことは、愛を知ってるってことだと思ったんです。人間ってバカだから、なくしてから気づくことが多くて。だから自分に対しても常に言っておかないと、そこに愛があることを忘れちゃうんです。だから"愛なき世界"って言うことで、愛が浮かび上がると思うんですよね。"愛がある世界"なんて当たり前だから、それを言うのは嫌だったんです。

-"愛なき世界"って言われると、違和感もあるし、反論したくなりますもんね。

カネコ:そう。反論してもらいたいんです。"いや、愛はあるよ"って言ってもらいたい。そしたらすごく安心するし、この世界は大丈夫だなと思うんです。愛の讃歌みたいに"愛ばかりだ"って思うより、常に"愛はあるのか、ないのか"。そうやって思っていたいんです。

-結局、セルフ・タイトルを作るつもりが、ちゃんとタイトルがつきましたね。

カネコ:セルフ・タイトルにしようと思ったのは、ハードルを上げるための意気込みですからね。今回の裏タイトルがセルフ・タイトルなんです(笑)。

ヨシミ:まだセルフ・タイトルはとっておこう、みたいな感じだね。

-アルバムの最後にはタイトル・トラックのバラード曲「あいなきせかい」(Track.11)が収録されています。これが今作で見つけた愛の結論みたいなものですね。

カネコ:人それぞれ違うと思うんですけど、この曲には"無条件に人を愛するときってこういうときなのかな"っていう、俺なりの愛の答えが入ってます。でも、延々と続いていく課題だと思うんですよね、"愛とは何か"っていうのは。だから、今思う自分の愛はこういうことなんだなっていうことを最後に入れました。