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INTERVIEW

Japanese

THE ORAL CIGARETTES

2016年01月号掲載

THE ORAL CIGARETTES

Member:山中 拓也(Vo/Gt) 鈴木 重伸(Gt) あきらかにあきら(Ba/Cho) 中西 雅哉(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-その結果"僕らが育ったライヴハウスを今一度攻めなおすぞ"という考えに照準が定まったと。

山中:"攻める"という姿勢はインディーズ時代からずっとブレてないところだったから、そこをさらに前面に出していけるといいよね、というのが4人とも一致して。でも"攻め"というのはフェスでみんなが盛り上がれる曲だけをやるという意味ではなくて、オーラルでしかできない楽曲で攻めていこうということで。テンポの速いノリやすい曲が攻めの曲だと思われるかもしれないけど、それは違って。「通り過ぎた季節の空で」(Track.7)みたいなバラードでも僕らは攻めるということを伝えたいし、こういう攻め方はオーラルにしかできないということも体験して欲しいんです。そういう意味での"攻めのアルバム"に仕上げました。アルバムが完成したことでバンドの方向性や4人の視界がクリアになった、って感じですね。

-ではこのテーマに至ったのはリスナーの存在が大きかったんですね。

山中:それはすごく大きいです。お客さんと信頼関係を築くためにお客さんの動向や何を思ったのかということを気にかけてきて。少しでもオーラルのことを気にしてくれたお客さんはみんなオーラルのお客さんやから、そのお客さんをどんどん引き寄せていかないで何がバンドマンだよ!と思ったんです。オーラルはギター・ロックというあやふやなジャンルで括られているけど、僕らは昔から歌や美メロが好きやからちゃんと歌を聴いて欲しいし、歌が生きる曲にしたいという気持ちはずっと変わらなくて。それはたくさんのバンドが溢れるフェスの中でもすごく強く思ってたことで......。だからお客さんの求めることと僕たちのブレなかったところを両方入れることで僕たちの最大の強みができた。それを全部『FIXION』に落とし込みました。

-歌を活かしながらもサウンドに攻撃性を出していくとなると、アンサンブルや各楽器のフレージングは重要になってきますね。

あきら:今までと同じことをやってもだめやなと。だからそれぞれの曲にちゃんと色を持たせなあかんなと思って。1stフル・アルバム『The BKW Show!!』(2014年リリース)のときは曲に合わなくても自分たちのやりたいことや得意なことを入れたりしてて。でも今回は客観的な目線を持つことができて、曲の持ち味のことを考えてフレーズを作っていったんです。例えばTrack.10「Everything」ならフィナーレを感じられる壮大な曲にしたいから変拍子とかを入れたりせず。そういう差し引きがうまくなった気はします。だからこそメロディが活きたり、曲の雰囲気がわかりやすく伝わったり。ちょっと"ストレートなロック"に近寄れたのかな。王道ロックになっていけてるなって。

鈴木:自分が弾くイントロのリフもオーラルの持ち味やなという自覚もあったんで、曲によってはそこを弱めることが果たして正解なんかな......というのはすごく不安で。でも今回の制作中に"3ピース・バンドみたいにリード・ギターのいないバンドもたくさんおって、そこにもう1本ギターを付け加える意味ってなんかなー......。俺なんでバンドにいるんやろ?"と考えたんです。それまで俺はリード・ギターの色を出すという取り組み方が強かった気がして、"俺が入ることで色づけどころか味変えちゃうくらいのことをしちゃってたな"と思って。だから今回は一歩退いて曲を良くした方がいいなと。これは俺にとって挑戦なので正直今もその方法に不安はあるんですけど、このアルバムをきっかけに自分のやらなければいけないことの方向がちゃんと見えた気がしますね。

山中:......この1年でシゲは成長してるなとすごく感じていて。自分のフレーズに対してもストイックになったし、普段から音楽の追求や研究をすごくするようになったし。僕がリビングで落ち込んだりしてるときに(※THE ORAL CIGARETTESは一軒家で共同生活をしている)、シゲが"そんな落ち込んでる君にいいギター・リフを持ってきたよ"って(笑)。音楽の会話をすることが増えました。

-ドラムはウワモノ並みに前に出た、歌うようなフレーズが多いですが、いかがでしょうか?

中西:僕はもともと歌を意識してフレーズを考えてるんですけど、前作を聴いてて"歌を活かすためにシンプルなフレーズにしてるな"と思ったんです。もちろん音数を減らせばメロディは引き立つし歌は聴きやすくなるんですけど、それはプレイとしてすごく単純で簡単なことやなと思ったんです。だから今回はそれとは違う方法でメロディを活かすことに挑戦したかったので、パソコンで作業をすることが多くて。ドラムのフレーズのパターンを増やしたら自分のスキルも上がるし、バンドの音の厚みも増えるやろうしなと。そういう作業の中で"ここまで叩いてもメロディは引き立つんやな"という発見もあって。だから今回は細かいところまで見れたし、あとタムの数を増やしてみたりもしたんです。タムがひとつ増えるだけでドラムのメロディも広がるし、ライヴ活動再開後からはライヴでもそのセットで叩いてますね。

-"FIXION"という言葉は"FIX(修正する、確固たるものにする)"と"FICTION(想像、作り話)"を掛け合わせた造語ということですが。

山中:前作『The BKW Show!!』は自分たちの人間性をしっかり伝えようと思ったからオーラルのポリシーでありオーラルの歩んできた活動の中にある言葉を掲げるタイトルにしたんですけど、今回はアルバムとしてどういうものなのか、オーラルがどういう楽曲を作っているのかというのをわかりやすい形でタイトルで示せたらいいねという話をして。それで"自分が曲を作るうえでどういうことがキーワードになってるんやろ?"とすごく考えて、自分の実体験をそのまま書いてるのは「エイミー」ぐらいで、あとは自分の経験をもとにストーリーを作っているな......それは完全にフィクションの世界を作っているなと思ったんです。曲をゼロから作るという行為もフィクションやな、自分が生み出すものもバンドが生み出すものも全部フィクションやなというのが、この制作期間で1番感じたことです。でもライヴ活動を再開してまた新しいスタートを切るタイミングでの作品やから、オーラルの活動における言葉は入れたいなと思って、このタイミングでまたバンド・シーンに置けるオーラルの存在を確固たるものにするという思いを込めた"FIX"と"FICTION"を合体させて。

-『FIXION』はポリープを摘出する前に録音したものですよね。

山中:そうです。

-では山中さんもTHE ORAL CIGARETTESも、『FIXION』の次へ行っている部分もあるのでは?

山中:......ポリープを摘出したあと喋れない期間があったので、そうするとやっぱりいろんなことを考えることが増えたんです。ちょっと喋れるようになってもライヴ活動がなかったから、いろんな本を読んだり、会いたくてもなかなか会えへんかった尊敬してる人に会いに行ったりして......そういう中で感じることもいろいろあって。だから今『FIXION』の曲の歌詞を読み返して"録ってるときにこの曲に対してこんなこと思ってへんかったな"というものもあるし、そのときに歌ってた感情と今思ってる感情と違う部分もあって。だからライヴでは表現の仕方も少し変わってくるんじゃないかなって。