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INTERVIEW

Japanese

小林太郎

2015年12月号掲載

小林太郎

Interviewer:白崎 未穂

-『tremolo』をリリースした際のインタビューで、"俺は何で音楽をしているのか"ということをずっと悩んでいたとお話されていましたが、あれからもうすぐ3年経ちます。そういった考えは、今どのように感じていますか?

たぶんそれは、これから音楽をするうえでの大事な要素になりそうだったからずっと考えていたんだと思います。今は単純に好きだから音楽をやってるんだろうなと。音楽以外でも、きっと好きだったら何でもできるんじゃないかなと、だから今こうやってやれてるんだと思います。だから、その考えに至ってからは考えなくなりましたね。

-では、今は普段どんなことを考えていますか?

ずっと引っかかっていた、"やれてないけどやりたい曲"を今回アルバムに収めて世に出すことが目標だったんですよ。曲を作るときってゼロの状態で作りたいんですけど、まだやれてない曲が残ってると、まずはそれを世に送り出してから先に進みたいなと思うんですよね。フラットな状態にしたかったんです。今回それが全部できたかなと。時期はバラバラだけど、"いい曲だな~"と思ってた曲をブラッシュアップしてやっと出せたので、これから、本当に純粋に"これ作りたい"とか"こういう曲作りたい"っていうキッカケや閃きを大事にしていきたいなと思います。

-1番フラットな状態なんですね。

そうですね。このアルバムをリリースして、ライヴでみんなの前でやれて届けられたら、ある種の区切りですかね。そこからゼロにして、フラットな気持ちで曲作りをしてみたいなと思います。

-次の作品が早くも気になるところですね。ところで、小林さんが作る楽曲は、メッセージ性の高い楽曲が多いと思いますが、聴く人にどう聴いて欲しいとか、この楽曲を聴いたことで変化を与えたいとか、この曲は聴く人にとってこんな存在になって欲しいなど、何か願望めいたものってありますか。

デビューしたてのころは、そういう意識はまったくなくて、ただ作ってました。もちろん作りたい欲求はあったんですけどね。それから歌詞を書いていくと、メッセージ性だったり、どこまで歌詞の中で、感覚だけじゃない理屈の部分やストーリーを描くことができるか。さらに言うと、仕事としてやることだったから、何かもっと意味のあるものを残さなきゃいけないんじゃないかなって思ってたんですけど。いろいろやってみて、今は何も考えてないです。歌詞に関して(笑)。

-そうなんですね。その理由は?

それは、この6年間自分で音楽をやりながら、世の中のいろんなことを経験しながら過ごして......。もちろん、いろんなことを練って制作して狙いを定めてリリースするのも素晴らしいと思いますけど、どちらかというと俺はたぶんクリエイター気質。ものづくりが好きっていう方なんで。だからたぶん、ものづくりが好きな人ってその考え方が合わないと思うんですよ。あとは世の中には、"こんなの誰が買うの?"とか、"こんなの誰が使うんだ"っていうものがすごく溢れていて、さらにそれで商売ができてるんですよね。"この商品を作ったのは、こういう人を喜ばすためです"じゃなくて、"自分のために作ったものが、他の人に喜ばれている"っていう状況に俺は1番感動しました。それでも最初は自分で好きなのをやったらラッキーパンチで当たっただけだと思ってたんですけど、意外と自分が好きなものをやるってことは大事なことだなと。それがたぶん、続けられるエネルギー源なんでしょうね。データをかき集めて結果がでなくて予算がおりなかったら終わりなんですよ。で、職探しするか、給料が下がるかどっちか。クリエイティヴなことが好きだったら、まず会社に入らないかもしれないし、会社を作るかもしれない。だから、続けることに関しては"ものが好き"っていう感覚がすごく大事。なお且つ、ただ好きなだけじゃなくて何かしら自分のために直結してるってことが、長続きする秘訣。さらに長続きするっていっても、短くても5年、ようやく形になるのが10年っていうのが多い。でもやっぱ長いじゃないですか10年って。その中でも、なんとなくだけど好きって思えることは大事だなと。そういう気持ちで作ったものだったら、思い入れがないものだとしても、作りたいと思って作ったものだから何か意味があるはずなので、人に聴いてもらえるんだろうなと。というか、"人に聴いてもらわなくてもいいから作りたい"っていうのが理想の強さなんでしょうね。

-あぁ、1番強いかもしれないですね。

聴いてもらえなかったら意味がないって思うより、"聴いてもらわなくてもいいから作りたい"の方が好きって気持ちは強いんだろうし。あと、俺もその考え方が好きなことに気づきました。例えば、映画で言うなら、いろんなものを狙いすぎて中途半端になった映画よりは、"よくこんなの作ったね!"みたいな映画を見つけるとか(笑)。それがちょっとカルト的な人気を博していたり。そういう、ものづくり気質だとしたらやっぱり"聴いてる人がいなくてもいいから作る"って、独りよがりだけど強いし、勝てないなと思います。そういう部分が自分の中にあるんだったらば、大事にしながらバランスとってやっていければなと思います。

-なるほど。

さらに、作ってそれを届けてみないと、どんな反応を得られるかわからないじゃないですか。"これ売れそう"とか、どんなに面白そうって思っても、実際に届けてからようやく結果がわかるものなので。やっぱり、作ってる途中で気持ちが折れないことを考えると、"聴いてる人がいなくてもいいから"って気持ちの強さで作った方が、作りやすいし、みんなもついてきやすいんじゃないかなと。そういう強さみたいなものは、自分の中でどんどん大きくなっていけばいいなと思います。