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INTERVIEW

Japanese

カフカ

2014年02月号掲載

カフカ

Member:カネココウタ (Vo/Gt) ミウラウチュウ (Gt) ヨシミナオヤ (Ba) フジイダイシ (Dr)

Interviewer:山口 智男

-でも、レコーディングは大変だったんじゃないですか?

カネコ:ナオヤが言ったように温かみみたいなものを出せるかなというのは確かにありましたね。今回、割と冷たい印象の曲が多かったんで、そこで温もりをどう出せばいいんだろうって考えて、ミックスとマスタリングをそれぞれorganic stereoの森川裕之さんと益子さんにお願いしたんですけど、ともに打ち込みとかシンセを多用した音楽をやっているけど、温かいと言うかアナログな質感の音なんですよね。いろいろなタイプの人がいると思うんですけど、森川さんも益子さんも僕の中では温もりを感じるエレクトロという印象がある。ぜひお願いしたいと思いました。受けていただいたときは嬉しかった。これで行けると安心できました。それを考えると、おふたりの参加ありきで完成できたアルバムだと思います。

-『Rebirth』というタイトルが物語っているとおり、アルバムのテーマは再生だそうですね?

カネコ:ギター・ロックというスタイルにとらわれず何でもできるんだって思えた瞬間、体の中がちょっとボワッとなって、鳥肌が立ったんですよ。そこで細胞が生まれ変わるのを体感したような気がして、振り返ってみると、カフカを結成した時も4人編成になった時も再生していると言うか、特に、こういうことがあったから再生したというわけではなくて、たとえば空を見て鳥が飛んでいるとか、道端に花が咲いているとか、それを見て、きれいだと思ったことそれ自体が再生であって、それを感じている人と、ただ通り過ぎていった人では絶対、その後に感じることは違うと思うし、それがきっかけとなって別の行動を取るかもしれないし、その積み重ねと言うか、普段生きている中で当たり前に、いつでも、何度でも再生しているんだって気持ちが大きいですね。

-ああ、なるほど。

カネコ:それと、「水瓶とラクダ」という曲が入っているんですけど、それが唯一古い曲で、それこそウチュウが入る前からあった曲なんですよ。『呼吸』を作った頃にはあったけど、収録しなかった。東日本大震災が起きたあと、いろいろなアーティストが被災者を支援したり、元気づけたりする活動をしていたと思うんですけど、自分には何ができるんだろうって思ったとき、何もできないことが悔しかったんです。何か行動を起こす勇気がなかったと思うんですけど、「水瓶とラクダ」はそこで何もできない自分に対する葛藤から生まれた曲で、ライヴではやっていたんですけど、そういう理由からCDには入れたくなかった。ただ、振り返ってみると、その曲を作ったことが最初の再生だったんじゃないかと思うんですよ。何もできない自分だけど、何をすればいいんだろうって思ったとき、歌っていればいいんだって思えた。ラクダっていうのは、砂漠のような苛酷な環境でもひたすら歩き続ける。そのストイックさが自分の中では謎めいた魅力に感じられて、そのラクダのイメージで歌詞を書いた。ラクダはただ歩き続けているだけだと思うんですけど、それが砂漠を旅する人にとっては救いになる。それと同じように自分が歌い続けることが誰かにとって、ひょっとしたら救いになっているかもしれないと思ったら、それでちょっと楽になれたと言うか、細胞が1つ生まれ変わったような気がしたんですよ。もちろん、もっといいやり方はあるかもしれないけど、その時の自分にとってその発見はでかかった。けっこう暗くなっていたところに光が射しました。逆に自分がこんなに暗くてどうするんだって。どんな状況でも淡々と歌っているということが何か、それだけで嬉しい、自分だったらそうかなと思った。その曲を今回、ベストな形で収録できたのはよかったですね。

-さっき体の中でボワッとなったと言っていたけど、それにもかかわらず、新作はおっしゃるように冷たい印象の曲が多いというところがおもしろい。

カネコ:これがカフカ的な温度感なのかな。ただ、今回1つのチャレンジとして、喜怒哀楽の怒の部分に割と目を持っていったんです。今まではそれ以外のところはあったと思うんですけど、何かに対して怒ってる曲ってないと思ったんですよね。そのせいもあるのかな。「Rebirth」って最後に入っている曲なんかは穏やかに進んでいくけど、もう世界に頭来ている。それこそ震災のこともあるし、気づいたらそこに順応しようとしている自分がいて、そこが頭に来たんですよ。ちょっとした地震では何とも思わない。すっかり慣れている。もちろん、常にクソッとなっているわけではなくて、ふと気づくとそうなっている自分が嫌で、そこで許しちゃいけないし、そういうふうに感じたことを風化させたくない。その怒りをちゃんと刻みたいという想いで作りました。

ヨシミ:その冷静に怒っている感じが怖い(笑)。今回、歌詞の作り方がうまいと思います。言うことはストレートに言っているし、いい世界観も持っている。いちリスナーとしても好きですね。

カネコ:ありがとうございます(笑)。