Japanese
大森靖子
2013年12月号掲載
Interviewer:天野 史彬
-自分の中で、新しいものができたなって感じはありました?
そうですね......できた!っていう感じはなかったですけど、歌ってて楽しいなっていうのがあって。次のアルバムは「Over The Party」かなって思ってました。自分の気持ちがなくはないですけど、気持ちって流動的なものじゃないですか。はっきりしてない。さっき嫌だったことももうよくなってたりするし。だから単純に曲にも幅を持たせていたほうが、ライヴでも同じような気持ちの曲ばかりを歌うよりも、揺れ動くんじゃないかと思います。
-大森さんはインタビューなどで常々、"音楽をやることで自分の気持ちをわかってほしいとは思わない"っていう旨のことをおっしゃってますよね。今回のアルバムもそういう思いは強いですか?
そうですね。でも、一貫してあるものってあるじゃないですか。希望的なことを歌いたいとか。曲とか物語を作るのが私は好きで、暗い事件を歌ってても、ほんとにあったことよりは少し明るく作ってたりするんですよ。今アイドルとか流行ってて、-100のものを+100にする音楽ってたくさんあるけど、私は-100のものを+1くらいにしたいんです。そのぐらいのものしか聴き入れられない気分の時ってあるじゃないですか。そういうものを私は作りたいなって思ってて。それはずっと根底にあります。自分には、マイナスのものをそのまま作ってる、負のものを作ってるイメージはないんです。
-その感覚って、"すべての女子を肯定したい"っていうコンセプトの中でより固まっていったりしたんでしょうか?
そうですね。もうちょっと強く言ってもいいんじゃないかっていう感じですね、このアルバムは。+3とか、そのぐらい(笑)。そういう自信はついてます。
-このアルバムの中で「hayatochiri」、「展覧会の絵」、「あれそれ」といった楽曲を聴いていくと、大森さんの個人的な風景を歌ってる曲だなって思うんですけど、それでも大森さんが大森さんご自身を歌詞のキャラクターとして凄く客観的に見てる印象を受けるんですよ。
家で大森靖子を聴きたいと思う人なんて絶対おかしいって今まで思ってて(笑)。コンポから目の前で歌われてる感じがしても、勉強とかに集中できないし、ダメじゃん、みたいな。ギリギリのところまでは距離感を置きたいっていうのは意識してました。
-でもアーティストによっては、勉強しながらなんかじゃなくて、じっくり腰を据えて聴いてほしいって言う人もいるんじゃないですか?
私はなんでもいいです。ただ、ハマってほしいっていうのはあります。ちょっと聴いてみて、"あ、こういう感じね"って知識としてCD棚に入れられるんじゃなくて、1年大森靖子しか聴かない、みたいな(笑)。そういう存在になりたいっていうのはあります。私女子だから、CDをコレクションするタイプじゃないんですよ。ハマったら同じ曲ばっかり聴くタイプで、それになりたいんですよね。最近、ネットとか速いじゃないですか。タイムラインとか。ああいう簡単な消費のされ方されたらショックじゃないですか。そういうふうになりたくないなっていうのはあります。
-音楽を通してのコミュニケーション願望も強く持っているんですね。
殴りあうみたいなコミュニケーションを取りたいっていうのが理想としてあって。そういうコミュニケーションは取れないじゃないですか、すれ違う人とか、ちょっと喋るくらいの人とは。もっと傷つけあうみたいな、真っ当な人としての心の抉り合いをしたいっていうのはありますね。
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