Japanese
大森靖子
2013年12月号掲載
Interviewer:天野 史彬
-じゃあ、この曲で歌われる"私にあたらしい神様買ってよ"っていうラインの"神様"っていうのは、自分たちの周りにある映画とか漫画とか、表象的な文化そのものを指してるんですね。
そうですね。神様買えるじゃんっていう。
-じゃあ、このタイミングでこの曲を音源化してアルバムに収録できたっていうことは、そのコンプレックスとなっていた世代感に大森さんの中で何らかの解決なり、揺り戻しがあったりしたっていうことなんでしょうか?
いや、単純に前のアルバムには似たような曲があったので入れられなかったっていうだけですね(笑)。
-そうですか(笑)。あと、大森さんは常々アイドル好きを公言されてますけど、それと同時に、ギターを持ち始めた時に豊田道倫さんや加地等さんのようなフォーク・シンガーたちに見出されていった経歴もありますよね。そういう、アイドル的な部分とフォーク的な部分で自分の中で繋がる部分ってあると思いますか?
アイドルは、私とは違うものとして好きなんですよ。私は歌が凄い好きで、カラオケもひとりで行ったりしてたし、歌う仕事ができたらいいなってずっと思ってたけど、私が中学生ぐらいの時は流行ってる人はみんな可愛かったから。椎名林檎とかいるじゃんって思うかもしれないけど、椎名林檎も可愛いじゃないですか。YUKIちゃんとかも。だから、可愛くなきゃ歌手になれないんだと思ってて。東京来て歌い始めてからも、可愛い子が売れるよなってずっと思ってたんです。私は可愛くないからこんなライヴハウスでしかできないんだって。そしたら、豊田さんとか加地さんみたいな人と出会って。あ、こういうのでもいいんだって知ったというか。これもありなのっていう希望の開き方があったんです。
-豊田さんや加地さんに対しては共感に近い希望を見出したんですね。
豊田さんは自分のことしか歌わないけど、私は自分のことは歌えないので、逆だと思ってますけど。でも加地さんはずっと"ヤリマンこそ素晴らしい"って言ってて。私は、自分はハゲでデブのおっさんに生まれるべきだったって思ってたんですけど、それと一緒だって最近思ったんです。"ヤリマンのブルースこそがほんとのブルースなんだ"って加地さんは言ってて、私はハゲでデブのおっさんの憂鬱こそ本当の憂鬱で、それ以外は憂鬱とは語ってはいけないって思ってて。
-それはどうしてですか?
ハゲでデブのおっさんっていうイメージが、自分の中ではアイドルオタクの完成形なんですよ。ただ(私は)それを持ってないから憧れてるだけだと思うんですけど、私の憂鬱を具現化するとそれになるはずなんです。自分の報われることのないものを、夜に動画とかを見ることによってどうにかしてもらう、みたいな。ハゲでデブだったらそれを1番享受できたのにって思ってて。それでいたかった、自分はそうあるべきだったって思うんです。加地さんも"俺はヤリマンに生まれたかったし、ヤリマンの気持ちこそ尊重すべきだ"ってことをひたすら私に言ってたんです。最初は全然わかんないって感じだったんですけど、当時、ヤリマンの気持ちを肯定してくれる男性がいなかったんですよ。処女が1番いいみたいな。アニメが1番流行ってる時期だったし。だから、びっくりして。それで興味が湧いたんですよね。
-その、大森さんと加地さんに通じる本当の憂鬱、ブルースを歌えない感覚って、大森さんがさっきおっしゃっていた寄せ集めの、自分を持てない世代感と通じるものがありますよね。だからこそ、大森さんはこの『絶対少女』で"全ての女子を肯定したい"っていう、多くの人の憂鬱、ブルースを肯定するところに突き進んだんでしょうか。僕は大森さんの音楽は全肯定の音楽だと思うんです。ものも情報も溢れた時代に、人から生み出されるリアルもファンタジーもすべてを背負って、肯定するというか。
ほんとそうです。それでいいっていうか、その状況が悪くない、それが正しいって言いたい。誰かに相談されて"こうしたほうがいいよ"って言うんじゃなくて、"それ大丈夫なやつだよ"って。それがこのアルバムで言いたいことですね、私の。
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