Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Neat's

2013年02月号掲載

Neat's

Interviewer:石角 友香


-モノ作りもストレス溜まると思うんですけど。

うーん、生きるほうがストレス溜まるかなぁ(笑)。

-ははは。具体的なことなんですが、バンド形態で録ってるメンバーはライヴと同じですか?

そうですね。メンバー・チェンジが2回あって、ベースが変わったタイミングでこれを録りましたね。

-バンドでレコーディングするときにビジョンはあった?

今回のレコーディングは......ツアー中に曲作って、それをライヴでやっちゃってて、その感触がとっても良かったので、レコーディングに向けてかためていったっていうのは実はあんまりなくて。ライヴでやってみて1回、2回練習して、またライヴでやって鮮度があるままスタジオで3日間でドン!って録っちゃおうっていう形でやりました。

-そういうやり方ってミュージシャン人生で初めてですか?

初めてです。そのミュージシャン人生で言うと、メジャーの時の活動はまったく考え方が違うから比べることがむずかしいんですけど、Neat'sになってからで考えると、基本的な精神は1人で音遊びをしてるっていうのと同じで、使える道具が増えましたっていうような感じだから、"この音がワクワクするかどうか"とか"この音があったら面白いかそうじゃないか"っていうのは、あんまり変わらないですけどね。

-イメージとしてNeat'sには"不思議宅録アーティスト"みたいな感じがあるから、今回のアルバムはガーン!とくると思うんですよ。

あー。そうですか? 私は実験の一環としてしか考えてなくて、何かが変わったってことはなくて。基本的にNeat'sの音楽のメロディがあって、その背景にどういう絵の具を塗っていくか?ってことだから、そこはなんにも変わってないですね。そこにオーボエの音を入れるのか、生のギターの音を入れるのか。選択肢としては同じところにあって。

-なるほど。たしかに飽くまでも歌が真ん中にあるし。

うん。歌はいちばん大切なんだけど、それを立たせるために後ろが引っ込んじゃったり、主張しないっていうのは私はあんまり好きじゃなくて。すべて音の積み木で重なっててほしいし、どんなヘンテコリンな積み木を積み上げてもちゃんとメロディが響いてくるっていうのが成功したら、音楽の魔法を私も信じられるし、"あー、やっぱりメロディって、心動かすね"っていうのを信じたいんですよね。

-それもあってか、予想ではもっと摩訶不思議なアルバムになるかと思ってたんですけど、意外と仕上がりはストレートでしたね。

うん、けっこうポップだって言ってもらうことが多くて。私もその実験の最中は摩訶不思議なんだけど、それを1人よがりなものにしたくないっていう気持ちはすごくあって。どういうふうにしたらこれがポップ・ソングになるのかな?っていうのは、その次の段階でいっつも考えることで。

-冒頭からバンド・サウンドの曲が続く中でも、「side-b」は印象的です。

ライヴでも、この曲人気で。

-この曲はどういうふうにできていったんですか?

この曲は、最初に話した私の人間崩壊があって。で、その1年前には地震があったりして。ミュージシャンとして今後どうやって世の中で活動していったらいいのか、なんの答えも見えなくなってホントにただもがいてるっていうような、すごく混沌とした状況だったんですよね。そのときに作った曲だったからけっこう絶望感があったかもしれない。

-ミュージシャンとしては......。

RYTHEMが解散して2週間後ぐらいですね。

-エア・ポケットみたいな時期?

空白というか、自分が世の中にいないような感じで、Twitterとかも見られなかったし。

-震災はモノ作りをしてる人にとっては特にそういう気持ちになるできごとだったと思います。

う~ん......ねぇ?あの時、震災があったからみんな同じような気持ちになりましたけど、私はNeat'sになった瞬間に、たぶんあの震災があってもなくてもおんなじような気持ちになったと思うんですよね。ずーっと何かいけないことが起こってるのに、それに対して行動したいのになんにもできないし、どうしたらいいのか分からなくて、ただそれを見てるっていう、やりきれない状態があって。とにかく毎日1コでも前に進めておきたいっていうがむしゃらな感じでやってきて。で、それに途中でものすごく自覚的に気がついて。いろいろ自分の性格的な面でも困難にブチ当たり......でも、そういうのがあって鍵がどんどんどんどん外れていって......"ま、そんなことどうでもいいや"って、開き直りにも近いあきらめの時期がきたかなぁ。

-震災の影響が大きいようにとれるけど、それがあってもなくてもそういう時期だったっていうことですね。

そうですね。自分の人生に大きな転機がきたので。

-すごくガシガシいってますね、この曲のアレンジ(笑)。

うん(笑)。その開き直りに向かってる心境に近くて(笑)、怒りにも近いような感情で。

-それは自分に?

自分にですね。"いちばん大切なこと、忘れてない?あんた"っていうような感じかな。ネガティヴに考えるといくらでもネガティヴなほうに行っちゃうから、それをどうにかワクワク楽しいほうへするための人生に変えたかったし。怒りをポップに昇華できるっていうのが救いで、ただ"ウエッ"って出すより、おいしい味に変えるにはどうしたらいい?って思ったのかもしれない。