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LIVE REPORT

THE XX

2012.07.04 @恵比寿LIQUIDROOM

Writer Neat's

「なんだかわからないけど、そうなんだよね。」
といつも矛盾しています。
焼いた鮭は食べられるのに、お刺身のサーモンは食べられないとか、
寂しがりなのに一人の時間が必要だとか、
何もかも知りたがるのに、謎が多いほどわくわく高揚するとか。
人間は矛盾の多い生き物だとつくづく実感しているこの頃です。

“The XX”。ネットで初めて見た時から謎の予感がプンプンするこのバンド名に私は強く惹かれていました。一筋ではわからない感じ、、いいねぇ。
いざ音源を聴いてみると、イントロから度肝を抜かれました。「うわ、、そうきたか。。!!!」異常な音数の少なさに、まるで、ビールだと思って飲んだらウーロン茶だったときと似た、騙された様な衝撃を覚えました。

アンバランスに見えて、ものすごく計算されて均整のとれた音楽。それは初めて見に行った恵比寿リキッドルームでもワンマンライブでも完全に再現されていました。ギターリフはしっかりキャッチーなのにひたすら単音しか鳴らさないという潔さ。そのアンバランスさの行く末が想像つかずどきどきしていました。「わからない」というのはいい感覚ですね。いろんなことは「わからない」数だけ夢があるということです。私は以前から何でもすぐにOかXか答えを出したがる性格ですが、矛盾の中にこそ斬新なアイデアは潜んでいるのだと気づかされました。矛盾であることをそのまま答えにしたようなThe XXの自由すぎる演奏に憧れを抱きつつ終始ステージを眺めていました。気づけば口をぽかんとあけて。
そんな中、本人たちは淡々と演奏を続けて、会場の空気を熱くもひんやりともさせない温度感のままステージを去っていきました。

このアーティストが昨今のバンドの中で異彩を放つ理由として、謎の神秘性=カリスマ性がある、というところがあります。やはり謎が多いほど追いかけたくなるのが人間の心理なのでしょう。The XXは客席との温度を近づけすぎずも、アンコールの最後で恥じらいの笑顔を見せながら「Thanxx」と何度もつぶやいていました。それがとても印象的で、ファンとしては次への謎を残された様な感覚で、また追いかけたくなるのです。
ポーっときつねにつままれたような感覚の中に残った感想は「これはカリスマごっこなのかも!」
今や音楽の趣味や文化も多様化細分化して、カリスマが生まれにくい時代だと言われますが、The XXの3人が放つ空気感は、それを逆手にとってカリスマごっこを試しているのかと思うほどでした。
お客さんが決めるカリスマ、というよりは自分たちで謎をぽとんぽとん落としていく。
そして自分たちの落とした謎を追いかけに、自分たちも走っていく。

その気持ちをなんとなく抱えたまま、つい先日2nd albumのレコーディングをしてきました。バンドでのレコーディングが初めてだったのもあり、とても気合い(気負い?)が入っていました。その中でも私自身、歌うことに関してどんどん欲が出てきていたのですが、レッスンを重ねるたび越えたい壁を頭で処理するようになっていました。ダメダダメダ。。頭で綿密に考えるのは悪い癖です。越えたい壁の答えを頭のルールで無理矢理出そうとしていたのでしょう。謎は謎のままとりあえず持っていればいいのに。。
The XXのライブを思い出し、レコーディングの最終日の録音の際に、アンバランスに歌を歌ってみよう、と見えない壁への抵抗をやめて声を出してみると、不安定な音程の中に妙に自然体な歌声が浮かんでいました。
やはりこういうことなんですね。。型にはまらず、アンバランスさの中に斬新さを見出す。先入観やルールを崩壊させることは勇気のいることですが、The XXの音楽を聴くと、笑っちゃうくらい平均点がなんだかわからなくなります。
やっぱり物事は、「なんだかわからない」くらいがちょうどいいんだなぁ。。


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