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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第4回】

2012年10月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第4回】

暁の鼓動と共に僕の心臓は強さと速さを増していく。幼馴染みで初恋の相手でもある、比叡山ふもとが攫われたのは昨日未明。僕は親友の部田下流夏(ブタゲ ルゲ)、予知能力者の予知夢千代(ヨチ ムチヨ)と共に下り列車に同乗していた。言いようのない嫌な予感が僕を支配している。流夏もそれを感じ取っていたのか、デフォルトが白目だ。山々を越え、案の定降り立った駅は僕の慣れ親しんだ町『ピネヤマ』だった。「ムッチーは知っている。ここから、車で十五分ほどなの。タクシー!なの」夢千代は全てを知っているはずだが、ふもとの監禁場所へ行くと言ったきり、それ以上何も話そうとしない。僕の実家も、車で十五分。嫌な予感は一気に増幅される。「なぁ夢千代。そろそろ教えてくれないか?どこへ向かっているんだ?」僕は焦りを隠しきれずに言った。「言えないなの。言わないんじゃなく、言えない。なの」言葉を選ぶ夢千代。「くそっ!おい流夏もなんか言えよ!」僕の呼びかけに流夏は白目(無視)だった。こいつはもしかしたら今回ずっと白目で通すつもりなのかもしれない。そのうちにタクシーはある一軒家の前に停車した。僕の実家の前だ。「ここに、ふもっちゃんはいるんだな。」嫌な予感は的中。驚きはなかった。僕は自然と実家の奥にあるあの物置へと足を進ませていた。この場所は数日前に訪れたばかりだが、こんなところに地下への階段なんかなかったはずだ。僕たちは未知なる階段を降りる。魔界の扉でも開けてしまったかのような心境だった。しかし後戻りはできない。全てを悟った僕は叫んでいた。「てめーは一体どうゆうつもりだ!答えろ!クソ親父!」そこには、ブーメランパンツにマント、みすぼらしくもだらしない腹、頭にはボコボコの古びたやかんを被った、ちっちゃいおっさんa.k.a僕の父親が立っていたのだ。「早かったなぁガニ太。まだ実験は第一段階だ。ヒーローは遅れてやってくるもんだ。そんなエアーの読めない子に育てたつもりはないぞ」格好の割にいつもの口調で喋るクソ親父の横には、ズタボロの服の比叡山ふもとが縛られ、セクシーに宙づりにされていた。「スパイダーチェイン!」僕はふもとをセクシーに縛っている縄を素早く切断する。このスパイダーチェインは僕の指先次第で鋭いカッターにもなるのだ。「ふもと氏!」ここで今回初めて喋った流夏はすかさず、白目のままにふもとを救出。セクシーだからなのか?「ん?…ガニ…ちゃん…?」ふもとが目を覚ます。「ガ、ガ、ガニちゃん!?」なんだか様子がおかしい。「誰だああああぁお前えぇ!!ガニちゃんに触るなあああああ!!!」流夏を振り払ったふもとは、鬼の形相で夢千代に襲いかかった。明らかに殺す気だ。間一髪、予知により攻撃をかわす夢千代だが、ふもとのスピードは尋常ではなかった。もうコーナーに追いつめられて絶体絶命だ。ふもとは床に転がっていたナイフを拾い、夢千代に振りかざした。「このクソ親父!ふもっちゃんに何した!?」僕は答えを待つことなく走り出す。「くそ!間に合え!スパイダーチェイン!」ふもとのナイフの先端に透明な糸が巻き付く。夢千代の心臓まで数ミリ。しかしふもとは止まらない。「ぐっ!なんてパワーだ!」僕はとっさに力の方向を一気に下へ向けた。「ガニ君だめなの!!」夢千代が叫んだ瞬間、ナイフはふもとの手を離れ、地面に跳ね返り、そしてそのまま、ふもとの喉元を射抜いた。

...to be continued 茉莉乃沢 ガニ太