Japanese
ZOCX
2025年12月号掲載
Member:大森 靖子 荼緒 あいみ
Interviewer:宮﨑 大樹
みんなに共感される部分は他の人がやればいい 誰にも理解されない気持ちをしらみ潰しに曲にしていきたい
-夏("ZOCX NEW GAME TOUR 2025")に披露した新曲として「超絶人間天使ちゃんの老害予防講座」がありますけど、まさに先程話に出た"男にムカついた"ところから生まれている?
大森:名前は出せないですけど、とあるバンドマンのツイート(現ポスト)が老害すぎて、でもそれに気付いてないんだろうなと思ったんです。で、私の元夫もその人と同世代なので、気付かせてあげようと思って言うんですけど、1ヶ月ぐらい経つともとに戻ってるんですよ。で、また調教するんですけど、それもまたすぐ戻って。それを10年ぐらい繰り返してるんです。世間的には、元夫もだいぶ若い人と喋るほうで、"理解ある人"でありたい感じの人だから、たぶんマシなほうなんですよね。で、マシなのでもこれか......みたいな(笑)。
-この歌詞は身につまされるというか、"このインタビューは私でいいのかな"って思っちゃいましたよ(笑)。でも、耳が痛いなと思いつつ、"自分のキモさを認めて、だからこそ磨いていこう"というのは素敵なメッセージだと思いました。
大森:これ、アレンジャーの大久保(薫)さんとか、みんな苦い顔をして仕事してました(笑)。自分がちょうど若者と老害の真ん中世代なので、自分が両方見えるから、なんというか"いい老害"になりたいなって(笑)。みんなに肯定されすぎている人が危ないなって思います。私はSNSとかだとそういう人間に思われがちなんですけど、だからこそ、そこだけは気を付けなきゃみたいな気持ちでやっている感じですね。
-荼緒さんの「超絶人間天使ちゃんの老害予防講座」への印象は?
荼緒:靖子ちゃんの曲としてはちょっと珍しい感じかなと思って。"きもいきもいきもいきもいきもい"ってところは盛り上がるだろうなと思いました。ライヴで歌っていても楽しいです。
大森:ZOCXの今の体制のファンの方は本当に女の子が多くて。"おじ"がほぼ私のオタクしかいないんですよ。だから逆にいやすくしてあげよう、みたいな。で、新しい人には"「きもい」って言っていいよ"って、やりやすくしてあげようとしています。
荼緒:おじオタもちょっと嬉しそうな感じがする。
大森:ひどいことを言うところで、おじを見るようにしています(笑)。ガン見(笑)。
-テンポ速く早口で歌う曲ですけど、単純に歌う難しさがあったんじゃないですか?
荼緒:最初のデモが送られてきたときは"難しすぎる......"って。"覚えなきゃ覚えなきゃ、ヤバいヤバい......"って状態でレコーディングしましたね。しばらくしてダンスも覚えてきたときに、"なんだこの曲、めっちゃいい!"って。今じゃノリノリで歌っています。好き。
-アルバムには未発表曲の「はーふついん♡うぉーず」も収録されています。こちらはどういうところが曲の種になったんですか?
大森:ツインテールの曲が世の中にいっぱいありますけど、ZOCXは"ツインテールです!"ってやるアイドルにはなれないじゃないですか。そのなかで"半分なら"という気持ちがすごくかわいいなと思って。"ハーフツイン"という髪型って、男の子からしたらよく分からない子もいると思うんですけど、ハーフツインだったら馴染むというか、その感じも絶妙で好きだなと。好きな髪型だし、"ハーフツインなら歌えるかな"というところから作りました。この気持ちはみんなも共感できるんじゃないかなというのもあるし、ZOCXの今の体制の最初の頃に、ギアを上げる曲になるかもなと思って。
-なるほど。
大森:あと、この曲は銀杏BOYZのライヴを観ていたときに"私と峯田(和伸/Vo/Gt)さんはやっていることが真逆だなと"と思ったこととかも入っています。峯田さんって、やってることが一生変わんないし、成長もしないし、同じMCで。でもそれって、たぶんわざとやってるんですよね。それに、峯田さんは"ここに向けて自分が届けよう"みたいに必ず決めてるんです。私は"自分が作ったものを必要な人が受け止めればいいや"と思うので、そこも真逆じゃないですか。インタビューを一緒に受けていても、峯田さんとは一生真逆で。そういうことを想ってサビを作った記憶があります。
-荼緒さんにとっての「はーふついん♡うぉーず」は?
荼緒:私は"かわいい"をやるのが苦手だったんです。バカだし、明るい、元気って感じのキャラだったから、"かわいい"ができなくて。でもかわいいのは大好きだった。だから、初めて靖子ちゃんのライヴに行ったときに、初めてハーフツインをしてみたんですよ。いつもはポニーテールとかだったんですけど、それで初めて"かわいい"ができて。この曲を初めて聴いたときに、そのことを思い出して涙が出てきました。ZOCに加入したばっかりのときも、リハでハーフツインをしてみたことがあって。そうしたらメンバーが"かわいいね"と言ってくれて、それが嬉しすぎて、しばらくリハは絶対ハーフツインみたいな時期がありましたね。
大森:リハなんだ(笑)。本番じゃなくて(笑)。
荼緒:それで自信が付いてツインテールもできるようになったから、「はーふついん♡うぉーず」は自分的に超好きな曲。
-この曲で歌う"半分だけ"って、とてもいい考え方ですよね。0か1か、白か黒かで考えてしまいがちですけど、"半分だけ"なら勇気を出す1歩目にもなるし、身を守る盾にもなる。また、この歌詞の中で"生きてりゃどうにかなる/それって結構ガチ/最悪の経験した分/キャパ広がって最高"というパートだけは、他のパートとは違う空気がありますよね。
大森:ZOCが2人になった元凶みたいな出来事があって。それが今年になっていきなり解決したんですよ。で、朝目が覚めたときに"なんていい朝だ"と思って。その日の"おはようツイート"がこの歌詞なんです。自分でもいい言葉だなと思って入れました。
-アルバムでは既発曲のリアレンジや再録もしていますけど、特に再録して良かったと思うものは?
大森:「FLY IN THE DEEPRIVER」。ZOCXは全員デカい声が出せるんです。かなのはちょっと違うんですけど、通る声はしていますし。なので、これまでは全員が自分のパートでずっとマックスを出せばいい、というふうに曲を作ってきたんですよ。
-はい。
大森:でも今回の「FLY IN THE DEEPRIVER」では、一人一人がもっと繊細な表現がたくさんできるように、壱の型だけではない、弐の型、参の型をやるようなアレンジになっていて。なので、期待を貰った分を返そうと思って、あいみちゃんは1人で3時間録りました。
荼緒:私はずっと壱の型なんです(笑)。
大森:それ一本でやっているので、頑張っていろんなことができるようにしようと思って。この1曲のレコーディングで、あいみちゃん1人だけで3時間。それを6人録らないといけない。いつもそんな感じで録ってます。3時間教えてディレクションして録り終わって、自分の時間で巻きたいので自分は10分でやってますね(笑)。
荼緒:後で聴いてみて、いつもと違う歌になったかもと思いました。
大森:頑張った甲斐があったね。今回はソロ曲もあるし、いっぱい歌ったよね。
-ソロ曲は「chao♡i♡me」ですね。
荼緒:初めて聴いたときに、満員電車の中で涙がボロボロでした。そのときは最悪な状態、加入したのに誰もいなくなったみたいな状態で。でも、この曲を聴いて頑張れるなと思ったんです。まさかソロ曲を貰えるとは思わなかった。"MAPAの曲を作ろうと思ったら荼緒のソロ曲できちゃった"って急に送られてきて。
-あぁ、MAPAのつもりで作っていたんですか?
大森:もう覚えてないです。そのときの記憶が......点線で(笑)。あの頃はめっちゃ大変だったので。でも、"ヤバい、終わる......"と思っても、日々を楽しく過ごしていると、いいことがあるよね?
荼緒:うん。生きていればどうにかなりました。
-そんなアルバムのタイトル"六姫無双"については?
大森:ZOCXがずっとゲーム用語を使ってきているなかで、もうネタ切れなんですけど(笑)、"百鬼夜行"みたいなイメージがいいな、と。メンバーには、かわいいヴィジュアルの女の子ではなくて、化け物みたいになってほしい、そのほうがカッコいいね、みたいなことを話していて。そこからゲーム感と6人と、そのいろんな間を取って"六姫無双"にしました。
-リリース後のツアー"六姫無双ツアー"は大阪と東京の2ヶ所を予定しています。
荼緒:個人的な目標ですけど、"靖子ちゃんを超えるぐらいの勢いであいちゃお(荼緒)はやったほうがいいよ"みたいなことを猫猫猫はうから言われたんです。なので、"打倒大森靖子"くらいの気持ちでライヴをやりたい。それが目標です。
-どうですか、その言葉を受けて。
大森:猫猫猫はうと戦慄かなのちゃんが最近"大森靖子モード"みたいなものを身に付けたらしくて。別に"私をやれ"というわけじゃなくて、タガの外し方とか、そういうことを吸収しようと意図的にやってくれています。あいちゃおは"ここが気になる"、"ここができていない"って気にする人間なんですけど、できた/できないじゃなくて、ライヴが良ければいいじゃないですか。なので、そういう気持ちでやってくれるのはいいことだと思います。
荼緒:もっと弾けたい、開きたい!
大森:"無双モード"みたいになってるときって、意識がないまま全てのことを意識できている状態なんですよ。その状態をいかに"今!"というときに作れるか。でも、ずっとその状態だけだと自分の世界すぎるので、そのバランスをライヴの中で取っていかなきゃいけないんです。私はそれが楽しくてライヴがやめられないんですよ。それをみんなでできるようになったら、"この人を立たせるターン"とか、"ここはみんなで行きたい"とか、そういうのを作れるようになる。それがライヴ感だと思うので、みんながそれをできるようになるのが楽しみです。
-2025年って今の体制のZOCXを作っていく1年だったのかなと思っていて。それを経て、来年はどんな活動にしていきたいですか?
大森:そうですね。今年は固めるという部分がやっぱり大きかったと思っていて。ZOCXというチームが何をしているかというのをまだ伝えられていなかった。そこから曲を作っていって、ライヴとしても固まってきたので、来年はもっと知ってもらう活動にしていきたいなと思っています。
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