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LIVE REPORT

Japanese

ZOC

Skream! マガジン 2021年03月号掲載

2021.02.08 @日本武道館

Writer 宮﨑 大樹 Photo by Masayo / Michiko Kiseki / Yusuke Satou

今年、シングル『AGE OF ZOC/DON'T TRUST TEENAGER』でエイベックスからのメジャー・デビューを果たし、東名阪Zeppを回る"NEVER TRUST ZOC"ツアーを敢行してきたZOCが、そのファイナルとして日本武道館に立った。

本公演は、ZOCにとって初の日本武道館公演であると同時に、初期メンバー 香椎かてぃの卒業公演でもある。今後のグループの歴史を語るうえでも重要になるであろうこのイベントに立ち会うため、平日の夕方スタートにもかかわらず多くのファンが集まった。

会場に入って目に飛び込んだのは、ZOCのロゴの"O"をモチーフにした360°センター・ステージ。赤裸々に、ありのままの自分たちを曝け出してきたZOCを象徴するようなステージ・セットに自然と期待が高まる。定刻を過ぎ、ステージへど派手なライトが照射されるとメンバーが登場。開幕の「ZOC実験室」から、東名阪を経てさらに力強さを増したパフォーマンスをぶつけていった。この6人、完全に仕上げてきている。これまでの活動や曲への自信、はたまた仲間への信頼に裏づけされてか、円形ステージを縦横無尽に駆け回り「AGE OF ZOC」、「GIRL'S GIRL」、「断捨離彼氏」と立て続けに披露していく彼女たちの姿は、初の日本武道館公演とは思えないほどに堂々としている。この大舞台においても気負いを見せず、リラックスした状態で行った自己紹介から連続で届けたのは「IDOL SONG」、「イミテーションガール」、「ヒアルロンリーガール」、「チュープリ」。ZOCの曲の中でもかわいらしい印象の曲たちは、ステージの四隅に設置されたミラーボールや、カラフルな照明の効果で、曲の世界観をより鮮明に感じられた。

大森靖子、西井万理那、藍染カレン、巫まろ、香椎かてぃ、雅雀り子の順で、それぞれが個性を弾けさせたソロ・コーナー。そこまでは、Zepp公演と同じ流れだったが、sugarbeansがキーボードで参加した雅雀り子ソロの「死神」が終わると、突如として大森靖子がアコギを持って構え、「Rude」、「パーティードレス」、「ハンドメイドホーム」を弾き語りで届けた。大森靖子がこれらを選曲した真意は、本人に聞いてみないことにはもちろんわからない。だが、この3曲は、観客だけでなく、共にここまで歩んできたZOCメンバーにも届けられていたような気がしてならなかった。

そうして、ライヴはこのツアーで初披露された新曲「FLY IN A DEEP RIVER」からラストスパートへ突入。本編ラストで届けた爆音の「family name」は、燃えかすひとつ残さずに、命を燃やし尽くすかのような圧倒的な熱量だった。

アンコール1曲目に「DON'T TRUST TEENAGER」をパフォーマンスすると、一筋のスポットライトがステージ中央に立った香椎かてぃに向けられる。ソワソワと、緊張した様子の彼女だったが、ZOC卒業を迎えるにあたって、これまでずっと応援してくれていたファンに向けての想いを綴った手紙を読み上げた。

"本日は、この状況下のなか会いに来てくれたみなさん、そして配信を観てくれているみなさん、本当にありがとうございました。長いようであっという間の2年半でした。私はアイドルになりたいと思うようになってから、自分がアイドルに向いていないことにすぐに気づきました。見た目や口の悪さ、性格、すべてを直さないとアイドルは無理だろうなと感じていました。そして私がアイドルになることを周りの人たちに認めてもらうには、すごく時間がかかりました。ZOCになるまでは家もお金もない状態でのスタートでした。私にとってZOCは青春でした。毎日、このまま時が止まればいいのになと思いながら、メンバーの顔を見るのが好きでした。小さいライヴハウスから毎日いろんなことで悩んで、喧嘩して、笑って、炎上して、慰めあって――ちゃんと「好き」と言えたあのころは何度振り返っても大好きな毎日でした。新体制になるたびに大丈夫、まだいける、何度も自分に言い聞かせていたのですが、どんどん変わっていく環境についていけなくなりました。結成当初から言い続けてきた武道館という夢を叶えられた達成感、今まで自分たちがやってきたことがやっと形となりました。このMCで私の出番は最後となりますが、いろんな感情がありながらも応援してくれたみなさん、そしてスタッフのみなさん、ここまで一緒に頑張ってきてくれたメンバーのみんな、みなさんと同じ夢が見れて本当に楽しかったです。本当にありがとうございました。"

手紙を読み上げ、ステージから退場する香椎かてぃに向かって、新曲「REPEAT THE END」が披露――というよりも、彼女を送り出すように歌われた。震えた声で、祈るように歌った5人の歌声は純真な美しさを孕んでいたように思う。

香椎かてぃ以外のメンバーもひとりずつMCで感謝の言葉を届け、新たなZOCの「family name」がアカペラで歌われた。最後に"We are ZOC!!"と声を上げた魂の叫びは、この先どんな変化があろうと自分たちはZOCであり、これからもZOCであり続けようとする強い意志表示だったのではないだろうか。

これから、ZOCにはまた新たなメンバーが入ってくる。次のZOCに待ち受けているストーリー。それはきっと綺麗事ばかりじゃないだろう。また炎上だってするかもしれない。それでも、ZOCには生傷だらけになりながらも歩みを止めないでほしい。孤独な誰かがいる限り"孤独を孤立させない"ZOCという場所は必要なはずだから。


[Setlist]
1. ZOC実験室
2. AGE OF ZOC
3. GIRL'S GIRL
4. 断捨離彼氏
5. IDOL SONG
6. イミテーションガール
7. ヒアルロンリーガール
8. チュープリ
9. 絶対彼女(大森靖子ソロ feat. 巫まろ , 雅雀り子)
10. それな!人生PARTY(西井万理那ソロ)
11. 紅のクオリア(藍染カレンソロ)
12. まろまろ浄土(巫まろソロ)
13. 仮定少女(香椎かてぃソロ)
14. 死神(雅雀り子ソロ feat. sugarbeans)
15. 大森靖子弾き語り
16. FLY IN A DEEP RIVER
17. ピンクメトセラ
18. draw (A) drow
19. SHINEMAGIC
20. A INNOCENCE
21. family name
En1. DON'T TRUST TEENAGER
En2. REPEAT THE END
En3. family name(アカペラ)

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