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INTERVIEW

Japanese

ANON

2025年08月号掲載

ANON

Interviewer:サイトウ マサヒロ

自分の実現したい世界、再現したいヴィジョンを持つのが一番大事。あくまでAIはそれを表現するためのサポートになるものなので


-そして、2作目の「VIRTUAL」も、ゲームをテーマにした"#ViduGameShow クリエイティブコンテスト"にて"PV・MV・CG部門賞"を受賞しました。

「VIRTUAL」は楽しんで作ることができましたね。曲も世界観もずっと前から用意してあったものなので、それを映像にしました。もともとEDMがすごく好きなこともあって、形にできて良かったです。ここまで内容の違うものを短期間で、一定のクオリティを保ちながら作れるのはAIならではだと思います。

-そもそも、AIでの映像制作はどのようなステップから始まっていくのでしょうか? コンテのようなものは作るんですか?

いや、そのままシーンを作り始めますね。コンテはあくまでいろんな役割の人に共通認識を伝えるための手段だと思うので、1人で作るのには意外といらないなっていう。カット割りや構図を考える必要はあるんですけど、それもたくさん作ってから取捨選択すればいいので。

-なるほど。最初から脳内にあるものを狙って出力するというよりは、たくさんのパターンの中から理想に沿ったものを選んでいく感覚?

今のところは消去法に近いかもしれないですね。結局、AIへの指示は文字で出すから、イメージを具体的に生成するのは、大きな水源から細いホースを通してまた太い水にするようなものなんですよ。だからどうしても想像とは全然違うものが出てきたりする。300枚の画像を作って、ようやく期待していた1枚を選べるような感覚ですね。

-そうした創作の過程の中で、ANONさんの作家性を保つためにはどんなことを大切にしていますか?

そこが一番のハードルですよね。AIでの創作は良くも悪くも個性がなくなりやすいので、自分のオリジナリティを守る方法を研究した結果、自分で絵を描くことが大切だっていう考えに辿り着いて。最近は絵を練習しています。

-それは、自分の絵をAIに学習させるっていうことですか?

それも企んでいますし、考えをプロンプトとして文字に変換せずに絵のままで伝えるっていうのが理想です。

-AIを使うクリエイターに必要なことはなんだと思いますか?

それこそまさにアーティスト性ですね。自分の世界観を持っている人じゃないとAIは使いこなせない。自分の実現したい世界、再現したいヴィジョンを持つことが一番大事だと思います。あくまでAIはそれを表現するためのサポートになるものなので。0に何を掛けても0で、0から1にするのはクリエイター自身の力です。

-今後、AI技術が市民権を得ることで、映像業界や音楽業界にどのような変化が訪れると予想していますか?

難しい。それが分かったら苦労しないです(笑)。良い方向に進んでいくか、悪い方向に進んでいくかどうかも未知数ですね。ただ、クリエイティヴに一定の水準が担保される時代になるのは間違いないかと。

-もしかすると、これまでとは全然違うクリエイターが登場するかもしれないですよね。極端に言えば、絵も全く書けないし曲も作れないけど想像力だけヤバい人が大活躍するとか。

技術は皆無だし何もしてこなかったけど、センスだけズバ抜けてるやつってことですよね。でも、そういう人はなんでも面白がってトライしてるし、AIに触る前に自然に楽器とかをやり始める気はするんですよ。だから、そんな人のサポートに徹するのがAIだと思うんですけど......どうなんだろう。生まれたときからAIに触れている子どもが大きくなったら、とか。

-新たなクリエイターが誕生するのは、AIネイティヴな世代が成長した10年後、20年後という可能性も?

そういう人がどういうマインドを持ってどんなコンテンツを作るのか、想像も付かないですね。

-逆に、AIの映像が人の手で作られた作品に敵わないなと思うポイントはあったりしますか?

あります。むしろAIに触るようになってから、人が作った作品にものすごく価値を感じるようになったっていうか。やっぱりAIの作品は人が積み上げてきた文明の集合体だから。人が汗水垂らして作ったものって、やっぱり美しいんですよね。表面的なクオリティに関係なく、奥の部分で光輝くものがある。むしろ粗い部分があるからこそ響くこともあると感じています。だから、必ずしも全員がAIを使わないといけないわけではないと思いますね。人間的なものを作りたい人は人間的な手法を選べばいい。

-その苦労の誇り高さに、AIで追い付く必要はないと。

追い付けないですね。人間とAIはあくまで親と子の関係であって、競争するものではない。ただ、もちろんAIだからこそ実現できるアイディアもあると思います。

-それでは最後に今後の活動について聞かせてください。現在も制作進行中の作品はあるのでしょうか?

いっぱいあります。映画も作ってますね。ミュージック・ビデオからさらに発展した、シナリオ系のもの。いつかは映画館で流したいですし、メタヴァースを絡めたクリエイティヴなことも考えています。あとは、アーティストとしてライヴも多種多様に広げることができると思ってますね。

-その先にはさらに壮大なプランがあるのでしょうか?

想像している超理想郷は、世界そのものに入ることのできる作品。VRでもなんでもいいんですけど、ストーリーを実際に体験できるような作品を作るのが目標です。

-自分の行動でインタラクティヴにストーリーが変化したり?

ゲームみたいに。理論的にはできると思います。

RELEASE INFORMATION

ANON
NEW DIGITAL SINGLE
「孤毒 -Kodoku-」

ANON-000002
[PRO-SPERTY]
2025.8.29 ON SALE