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INTERVIEW

Japanese

愛はズボーン × over print 座談会

2024年02月号掲載

愛はズボーン × over print 座談会

愛はズボーン:金城 昌秀(Gt/Vo) GIMA☆KENTA(Vo/Gt)
over print:山脇 孝志(代表)
Interviewer:高橋 美穂

-もの作りだけではなく、発信することにもそれだけ力を入れていらっしゃる。

山脇:そうですね。SNSは双方向なので。自分自身、前職で12年やっていたうちの半分ぐらいはプロモーションの仕事をしていたんです。仕事を始めてしばらくした頃にTwitterやInstagramが出てきて、双方向でコミュニケーションしながら価値を見いだしていく、っていうことを考えたときに......これは前職の悪口とかではないんですけど、300人ぐらいいる大所帯だったんで、どうしても分業型になってしまって、直接お客さんと意見交換ができる場所がなくて。自分が店頭に立ってお客さんと話すとかはなく、人伝いに、5人ぐらい伝って話を聞いて、それを生かして仕事をしていたんです。だからover printでは、どんなに忙しくてもお客さんと直接コミュニケーションを取って、それを生かして次のことを生み出していくっていう距離感を大切にしていこうと。今は全部は見られなくなってきたんですけど、なるべく(DMやコメントを)見るスタンスでいるので、結果16時間とかになってしまうんです(笑)。かと言って、お客さんの望むものすべてを反映するとかではなく、あくまでお客さんに新しいものを届けたい、ドキドキワクワクしてもらいたいんですけど......この表現は全然おしゃれじゃないんですが、昔から大切にしているんですけど、"島耕作"みたいなものだと思っていて。島 耕作の環境が変わっていくのを、読者が見届けている。それがover printなら"越えていく"、新しいプロダクト、チャレンジをしている様を見てもらうっていう。だから、お客さんと喋りたがる島 耕作みたいな感じだと思ってブランドをやっています。

金城:去年の"オルタナファッションフェスタ"のときに、over printの隣に出店していて。そうしたら、朝イチから僕らのブースの前まで(over printの)列が並んだんですよ。"すごっ!"みたいな。それが捌けてきた昼過ぎぐらいに、挨拶がてらちょっかいをかけに行って、これは新作でこれは売り切れて、みたいに話していて。そうしたら新作の中に変な......"変"って言ってもうた(笑)。ハエの顔みたいなデザインがあって。"これなんなんすか?"って聞いたら"全然売れへんっすよ"って(笑)。"でも、これやっていないと、この仕事やってられませんわ"って、自分のエゴを出すというか、それこそオーバーグラウンドとアンダーグラウンドの脳みそを昇華しているっていうか。僕はそれを見てさらに信頼できました。笑いましたけどね(笑)。

山脇:一番難しいプリントの手法をやってみたんです。半透明のインクと透けないインクを混ぜて、色をぶつけたところが第3の色になるという。使っているインクの数よりも色が多く見えるっていう、マニアックな作り方をしたんですね。そういうものって受け入れてほしいんですけど、そのくせ、人間がほぼほぼ嫌がるものを題材にしたくて、手描きのハエにしたんです(笑)。"かわいい"みたいな感情が一切生まれないようなやつでやったら、どれだけの人が着たいと思うやろ? って(笑)。

-そういう、ポップとエゴとのバランスみたいなところって、愛はズボーンとしても考えたことがあるんじゃないんですか?

金城:僕らの作っているものは、最近やっと整理できてきて。今回の『MIRACLE MILK』から反映されているマインドなんですけど。たぶんね、僕とGIMA君と、ドラムの富ちゃん(富永遼右)とベースの白井(達也)君の4人の性格上、どんだけ自分のエゴを出しても、4人ともめちゃくちゃ優しい人間なんで、絶対に人が嫌なものはできないようになっているんですよ。以前までは、"もうちょっとキャッチーにしようよ"とか"これをもっとポップなものにしよう"とか言いながら曲を作っていたんです。でもあるときを境に僕が"そういう言い方をやめへんか"って提案をして。"ポップ"や"キャッチー"って抽象的やし、自分たちの中にキャッチーやポップの防波堤はあるから、そこを考えるのはやめようと。人にウケるものをやろうとか考えなくても絶対にウケるって信じようぜっていうマインドを、今は育てていて。それが詰まったアルバムが、4枚目にして今回やっとできたので、自信を持って人に"これが僕たちなんですよ"って言える。以前までの作品がダメとはまったく思っていないですけど、寄り道や脇見をしている時間をなるべく排除したクリエイティヴになっていますね。

GIMA:俺は、素直にやっているのが世間と違うんだったら、それはそれでアリなんじゃないかなって思ってて。合わせに行ってズレてしまうより、まっすぐやったものが世間に合ったっていう奇跡のほうが信じられるっていうか。あとは、違和感って面白いなって。例えば、市営団地って全部同じ造りで同じ窓があるけど、1戸だけ電球が切れていたらめっちゃ気になるじゃないですか。そんなやつになりたい(笑)。

金城:景気悪いな(笑)。逆にできひん? 昼間なのに電球が点いてもうてる、みたいな。

GIMA:そっちがいいか(笑)。愛はズボーンもそうですし、僕自身の生き方としても、ハエ側のほうがいいっていうか。そいつが部屋に入ってきただけで、"変なやつが入ってきた"って思われるような違和感の存在でありたいと思います。まぁ、もしかしたらないものねだりなのかもしれないですけど。

金城:GIMAちゃんはハエみたいになってるけどな(笑)。ライヴハウスの狭い楽屋でGIMAちゃん黙って座っているから、後輩のバンドマン、喋りにくそうやで(笑)。

GIMA:ちっさい声でいじめたりはしてんねんけどな。

金城:いじめたらあかんやん(笑)!

GIMA:嘘です(笑)。まあ、違和感であり続けたいですね。

-金城さんみたいな人も、GIMAさんみたいな人もいて、それで化学変化を起こせるのがバンドの強みだったりもしますよね。

金城:そうですね。僕はそこにスパークするものを感じるので、バンドをやめられないんですよね。

-このチーム感みたいなものって、山脇さんとしてはいかがですか?

山脇:つい最近まで、服のデザイン、企画、SNSとオンライン・サイトとか、すべてひとりで運営していたんですよ。でも、自分の幅には限りもあって。"寝ない"っていう対策はしていたんですけど(笑)。それこそ、GIMA君の友人のミノル君とかと関わるようになって、彼は縫製ができるんですね。僕は簡単な縫いしかできないんですけど、彼と一緒に古着をリメイクしながらデザインしていく手法をやって。そういうアプローチは自分としては一切やったことがなかったので、ヒントを得ながら新しいものを生み出すっていうのは、ひとりじゃないからできたことだと強く感じています。

-ちなみに山脇さんは、『MIRACLE MILK』は聴かれましたか?

山脇:はい。オフィスで聴いていたんですけど、音遊びも言葉遊びもものすごいんですよ。今までのアルバムも存じ上げていますけど、聴き応えがすごいんです。この表現がいいのか定かじゃないんですけど、僕はスルメ好きなんですけど、スルメみたいなところがあって。聴けば聴くほど、聴き漏らしていた音や余白に辿り着けるというか。結果的にオフィスで仕事が捗らないことになっています(笑)。

金城:ありがとうございます(笑)。

-とはいえ、ご自身の仕事のインスピレーションを受けることもありそうですね。

山脇:ありますね。映像とかも面白いと思っていて。レトロな質感、スピード感、緩急のつけ方とか。過去のMVも、何回か観ていくうちに深みが増していっていると感じます。

-2月に行われるポップアップ・ストアのご提案はどちらからだったんですか?

金城:僕らからです。愛はズボーンがアルバムを出すってなったときに、何か自分たち(の範囲)だけではない広げ方をするにはどうしたらいいだろうって話している頃、山脇さんと何かできないかな? って。前回は山脇さんから声を掛けてもらったけれど、そのあとはバンドとして一緒に何かする機会がなかったから、こっちから"何かできませんかね?"って言ってみようかってチームで話した気がします。

-山脇さん、イメージはすぐに湧きましたか?

山脇:そうですね。最初の打ち合わせの段階で"MIRACLE MILK"っていうタイトルも決まっていたので、"じゃあ牛乳パックを作りません?"って。こういうことがないと、牛乳パックを作ることなんてないですよね(笑)。

金城:ほんまそうっすね(笑)。俺、奥さんに"子供にあげるリンゴを買ってきて"とかお買い物を頼まれてスーパーに行ったとき、10~15分、牛乳パックのコーナーで見入っちゃいましたもん(笑)。"おぉ、雪印のこれかっこいいなぁ!"とか。WEBで海外の飲み物のパックを調べたり。でも、シルクスクリーンのTシャツを作っているのにめっちゃ近いというか。(牛乳パックは)白生地に赤と青の2色だけでデザインしたんですけど、こういう縛りの中で作るのはめっちゃ楽しかったです。

山脇:こういうところ(牛乳パックの注ぎ口の裏にある、色の確認用のパーツ)もいいですよね。

金城:そうそうそうそう(笑)! お客様には関係ない表示とかも(今回の牛乳パックに)つけてリアルさを増すとかね。曲名も、普通は成分表示が載るところに載せてみたり。

-そういう細かいアイディアも山脇さん発ですか?

金城:そうです。

山脇:アイディアを出してから牛乳パックを買いに行って、Tシャツを入れて数日置いてみて、膨らんでいたんでサイズを大きくしたり。小学生の夏休みの実験みたいなことをしていました(笑)。ポップアップ・ストアではこの牛乳パックを何百個も詰むので、その前で写真を撮ったりできます。

金城:たまんねぇなぁ。かわいい。

山脇:でもこの牛乳パック、たぶんゲットしたあとに扱いに困るやつです(笑)。ハエみたいな立ち位置かもしれない(笑)。

金城:たしかに(笑)。フィギュアみたいに飾ってもらえたらと思います。

山脇:我が家はリビングのガラス棚に置こうと思っています。"牛乳そんなとこ置いていたら腐るで"みたいな(笑)。

-音楽は配信が主になっているなか、ものにこだわりたくなる形を作り、それを直で買いに行きたくなるポップアップ・ストアを展開するっていう。

金城:そう。僕らだけだったら"牛乳パック作りたいなぁ"って思っても、頭の中のイメージだけで終わりだったんですけど、山脇さんはマジで"やりましょう"って言ってくれて。さらに、そこからSNSに写真を投稿できるスポットも提案してくれる。しかも僕がデザインを上げて渡したら、もうものができあがるっていうので、頭が上がらないです。

-山脇さんはいろんなバンド、アーティストとコラボされていますけど、そんななかで愛はズボーンの魅力ってどういうところだと思いますか?

山脇:僕、勝手に博物館みたいな感覚があって。服を作ったりするとき、自分の持っているソース以外のものを広げていったりとか、考えるきっかけがあればあるほど、いい考えが生まれると思っていて。だから美術館とか行って、それを日々に生かすのが好きなんですけど、愛はズボーンは多面体なので、博物館化していて。アートを浴びる、みたいな感覚で接しています。

-ポップアップ・ストアも博物館みたいというか、ライヴハウスというか、そういうアート空間になりそうな気がします。

山脇:そうですね。ライヴ感は大好きなので、具現化させて、そこでしか感じられない楽しみをお届けしたいと思っています。

-では最後に、山脇さんが今後の愛はズボーンに期待していることとは?

山脇:僕の勝手なイメージでは、アメ村という大阪の音楽が一番活発なエリアの象徴、アイコニックなバンドだと思っているんですけど。そのまま20~30年経ってレジェンドおじいちゃんみたいになって、テレビの取材とか受けて"この街は俺らが作った"って言うぐらいまでなってもらえたら楽しいなと思っています。

金城:"アメ村!"って大きく声に出しているのはGIMAちゃんなので。GIMAちゃんが、アメ村を拠点にするバンドをやりたいって言い出してから10年ぐらい経つんですけど、自分の中に染みついた、自分が好きなアメ村があるので、今言ってもらって"そうか!"って思いました。10年、20年続けていったら、レジェンドのおじいちゃんになれるのかなって。めちゃくちゃ嬉しいですね、そう言ってもらって。

-GIMAさんは、言い始めたときから10年を経て、理想に近づいている手応えはありますか?

GIMA:想像していたことは実現できているのかなって。この前、結婚記念日のときに奥さんと"何する?"ってなって、とりあえずふたりでアメ村に行ったんですけど、末期だなって思いましたけどね(笑)。とりあえずアメ村からどこ行くか考える、みたいな感じなんでね。おもろい街にしたいですね。

金城:つけ加えると、僕自身はアメ村をどうにかしてやろうとは思っていなくて。逆に育ててもらっている街だし。だけど山脇さんに言ってもらって感じるのは、自分らがいたからアメ村が変わったところが1ミリでもあったら、それは嬉しいことだと思います。

RELEASE INFORMATION

愛はズボーン
4thフル・アルバム
『MIRACLE MILK』
MIRACLEMILK JK.png
2024.02.07 ON SALE
[TOUGH&GUY RECORDS]

【通常盤】(CDのみ)
TGUY-018/¥2,750(税込)

1. IN OUT YOU~Good Introduction~
2. ひっかきまわす
3. MIRACLE MILK
4. イッチーピーチ
5. ケミカルカルマ
6. 最後のひとり
7. SPACE OUT !
8. Strange Yellow
9. ヘルステロイド
10. まじかるむじか
11. 笑う光
12. NEW SNEAKER MEMORIES~album ver.~

予約はこちら

POP-UP STORE INFORMATION
"Rebirth Presentation TOUR 2024"

2月10日(土)東京 OPENBASE SHIBUYA / GEKIROCK CLOTHING
2月11日(日)アルベホール名古屋
2月12日(月・祝)心斎橋サンボウル B1F
2月17日(土)福岡 UNION SODA

■『MIRACLE MILK』CD+over printコラボ T+牛乳パック3ピース・セット販売:¥7,920(税込)
※2月11日~17日は愛はズボーン 金城昌秀(Gt/Vo)&GIMA☆KENTA(Vo/Gt)スタッフ参加

詳しくはInstagramをチェック

TOUR INFORMATION

"MAGICAL CHEMICAL MIRACLE TOUR"
3月17日(日)京都 Live House nano
4月6日(土)HIROSHIMA 4.14
4月7日(日)岡山PEPPERLAND
4月14日(日)札幌 KLUB COUNTER ACTION
4月19日(金)mito LIGHT HOUSE
4月20日(土)仙台FLYING SON
4月21日(日)千葉LOOK
4月26日(金)music zoo KOBE 太陽と虎
4月28日(日)岐阜 柳ヶ瀬ants
4月29日(月・祝)静岡UMBER
5月5日(日)高松 TOONICE
5月6日(月・祝)松山 Double-u Studio
5月11日(土)福岡LIVE HOUSE Queblick
5月12日(日)大分 clubSPOT
5月25日(土)名古屋 HUCK FINN
6月2日(日)下北沢SHELTER
6月9日(日)大阪 Live House Pangea

[チケット]
前売 ¥3,500(税込/D代別)
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