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INTERVIEW

Japanese

アーバンギャルド

 

アーバンギャルド

Member:浜崎 容子(Vo) 松永 天馬(Vo) おおくぼけい(Key)

Interviewer:杉江 由紀

15年前と言えば、日本でiPhoneが初めて発売されたのがちょうど15年前の2008年7月だったが、この15年の世相は激動に次ぐ激動だった、と感じている人もかなり多いのではなかろうか。そして、このたび15周年を迎えたアーバンギャルドが発表するのは、歴代のMVを詰め込んだ『URBANGARDE VIDEOSICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト・映像篇~』だ。時代の変遷に伴う流行やその頃の空気感までをもパッケージしたようなMVの数々は、文化遺産的価値を持っている側面もあり、平成の風俗を音と視覚で一挙に堪能することができる点が実に興味深い。これはまさにアーバンギャルド的な映像の世紀である。


バンドのMVというより、いわゆる自主制作映画に近い


-今年1月には音源のかたちでオールタイム・ベスト(『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』)を発表されていたアーバンギャルドですが、このたびは『URBANGARDE VIDEOSICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト・映像篇~』という時間にして3時間、曲数にして全41曲のMVを収めた作品が世に出ることとなりました。さすがは15周年の節目を飾るものだけあって、このボリューム感と内容の充実ぶりは相当なものですね。

松永:もともとアーバンギャルドは多作なアーティストではありますし、時代背景の面でも僕らが出てきたころというのがちょうどYouTubeの草創期でしたからね。あの当時に自分たちでMVを作って上げてた国内のインディーズ・ミュージシャンとしては、僕らがかなり最初だったんじゃないかと思ってるんですよ。

-今作中での最初期のMV「セーラー服を脱がないで」は2007年の作品ですね。

松永:まさにアーバンギャルドを始めた当初から、ずっと映像というものは音楽と切り離せないものとして活動してきているので、今回こうして映像集を出させていただくことに対しては思い入れがあります。ただ、改めて初期の映像を見返してみるといろいろ拙いところがあってビックリしたのも事実です(笑)。逆に言うと、あの初期の手作り感は今だとなかなか出せないかもしれません。

-そのあたりの制作秘話については、今回の映像と共に副音声として収録されているオーディオ・コメンタリーをぜひみなさんにお聞きいただきたいところですね。

松永:あの頃は路上でのゲリラ撮影なんて当たり前でしたし、使ってたのも普通の家庭用デジタル・ビデオ・カメラだったんですよ。あの独特のそんなに良くない画質からも、きっと歴史が感じられるところがあると思います。

-当時はまだSDカードではなくテープ録画でしたっけ?

おおくぼ:カセット使ってましたよね。

松永:そうそう、あの頃はいわゆるminiDVという規格のテープを使ってました。それをいつもパソコンに取り込んで自分で編集してたんですけど、当時のパソコンのスペックでは追いつかなかったのか毎回書き出しエラーが起きてたんですよ。今回も高画質のデータが見当たらなかったものは、改めてそのテープから書き出し直して、エンハンサー(Video Enhancer)というツールを使って画質を向上させたりしました。そんなふうに手作りで15年も前に一生懸命作っていたようなものを、こうしてBlu-ray作品として出させていただけるなんて本当にありがたい話です。アーバンギャルドの歴史を映像で見渡せる作品になっていますし、時代の経過と共に"だんだんと予算と画質が上がっていく!"ということが赤裸々なほど感じられる作品にもなっております。

-オーディオ・コメンタリーでは、具体的に"このときの予算は30万だった"と松永さんが話されているくだりなどがありますものね。

松永:僕は映像の監督もするので、だいたいのバジェットがわかるんですよ。人のMVを観ていても"これは白ホリ(※白ホリゾント、真っ白な背景や空間)で撮ってるから15万で、こっちの女優に3万だな"とか、つい値踏みをしてしまうんです(笑)。でも、こうして過去の映像を観てみると、あのころは自分たち自身のことをブラック企業のように働かせていたんだな、ということも感じます。

浜崎:ほんと、ブラック企業より真っ黒だったと思う(笑)。

-容子さんは、オーディオ・コメンタリーで"今だから言えること"数々をぶっちゃけていらっしゃいますね(笑)。

浜崎:この映像集を改めて観て感じたのは、とにかく"こんなに私、頑張ってたんだ!"ということだったんですよ。身体を張るシーンが多かったなって。

おおくぼ:たしかに、一番身体張ってると思う(笑)。

浜崎:よく死ななかったな、って思います。結構死と直面していたというか、隣り合わせだったこともあったので。

-「傷だらけのマリア」の撮影時には撮影終了と同時に40℃の高熱で病院へ搬送された、との逸話がオーディオ・コメンタリーで明かされており震撼しました。

松永:あぁ、そんなこともありましたねぇ。

-「ワンピース心中」での水中撮影も、容子さんは大変な思いをされたのだとか。

浜崎:私、泳げないんですよ。顔に水がかかること自体もダメなんです。だから、あのときは泣きながらの撮影でした。パニック状態になっちゃってましたね(苦笑)。

-撮影の途中で容子さんは過呼吸まで起こされたそうですから、相当なストレスと疲労の度合いだったのでしょう。ただし、仕上がった映像では水中だというのにまばたきひとつしない素晴らしい演技ぶりを見せていらっしゃいます。そして、容子さんは「あくまで悪魔」のコメンタリーにおいて"やっぱり身体を張らなきゃダメなんだと思う"とも発言されていらっしゃいます。

浜崎:だって、今は楽してる人が多すぎると思いますよ。

おおくぼ:まぁ、ウチと比べたらそうかもね(笑)。

松永:CGとか編集でなんとかなる、という時代になってきているのもあるのかな。

浜崎:その点、アーバンギャルドは昔ながらの作り方というか、CGがないから本当にセットを作ったうえで撮るっていう、特撮的なことが天馬もけいも好きだから、これまでにそういうことをいろいろやってきているんですよ。