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INTERVIEW

Japanese

アーバンギャルド

2015年12月号掲載

アーバンギャルド

Member:浜崎 容子(Vo) 松永 天馬(Vo) 瀬々 信(Gt) おおくぼけい(Key)

Interviewer:荒金 良介

アーバンギャルドの7thアルバム『昭和九十年』は、"殺すな、殺すな、言葉を殺すな"というテーマを掲げ、表現の自由が保証されているようで窮屈な時代に突入している現代に対し、鋭く問題提起している。メッセージ色の強い歌詞の衝撃力は実にアーバンギャルドらしい。その一方で、今年正式加入したおおくぼけい(Key)の影響もあり、バンド・サウンドはより一層カラフルでポップな仕上がりになっている。歌詞と音色のギャップの激しさこそ今作の特徴であり、魅力になっている。メンバー4人にじっくりと話を訊いた。

-今作の前に通販/会場限定ミニ・アルバム『少女KAITAI』を出してますよね?

松永:今年アルバムを出すことは決まっていたけど、その橋渡しになるような作品を出そうと。ただ、内容が過激なので流通は難しいだろうと思い、それを逆手に取って、ものすごくディープなものを作りました。内容はインディーズ時代の少女三部作(※『少女は二度死ぬ』、『少女都市計画』、『少女の証明』)を換骨奪胎したものにしようと。インディーズのころは特に過激なバンドと見られていましたが、改めて初期衝動を取り戻そうという意図があって。そのタイミングでおおくぼさんも入ったし、春のツアーを意識したフィジカルな内容になりました。

-原点回帰的な気持ちもありました?

松永:メンバー加入でサウンドの面でも新しい血が導入されたし、今回のレーベルから出すことにも繋がるんですけど。今までは歌詞に規制があったもので、それにとらわれずに書きたいなと。今のレーベルはレコ倫(※レコード制作基準倫理委員会)に加盟してないので、自由に歌詞を書けるんですよ。その意味でインディーズに近いスタンスでやれるから。『少女KAITAI』は今作に繋がる"かすがい"のような作品ですね。

-なるほど。

松永:内容も会場限定ならではのものとなりました。今はWEBにしても世界に開かれすぎているので、クローズなものを作りたくて。情報が飽和して薄まってるところもあるから。例えば昔、雑誌で激論が交わされても、雑誌を買った人間しか参加できなかった。でもWEBは野次馬たちが炎上目的で寄ってくるじゃないですか。それを避けたかったのはありますね(笑)。(『少女KAITAI』収録の)「原爆の恋」という曲も誤解を招きそうなので、クローズにしてCDをちゃんと手に取ってくれた人に伝わればいいなと。

-求めている人にちゃんと伝わるアプローチにしようと。

松永:そうですね。今年前半はそういう限定的なものをやって、血を濃くしたうえで、このアルバムで外に開こうと。

-浜崎さんはどうですか?

浜崎:おおくぼさんが4月から加入したので、とにかく新しいアーバンギャルドの作品を出したくて。あと、天馬が言っていた通り、流通を通さずに自由に作るとどういう作品になるのかなって。

-昔の感覚がよみがえることも?

浜崎:思い出したけど、昔とは作り方が違うなと。今はこうすると歌詞が聴こえなくなるとか考えるけど、昔は詰め込んで詰め込んでという感じでしたしね。メンバーみんなの我が強くて。そういう意味では昔と同じ自由な環境で作ったからこそ、成長も感じられました。みんな大人になったなと(笑)。整理されて、洗練された音になりましたからね。

-おおくぼさんはアルバム初参加ですけど、どうでした?

おおくぼ:探り探りでしたね。アーバンギャルドは普通のバンドとは音の作り方が違うので、面白かったですね。サポートだったときは彼らが発するものをどう良く表現しようか考えていたんですけど、メンバーになると自分のエゴもあるし、今あるものを解体して再構築することもできますからね。

-瀬々さんは?

瀬々:ミニ・アルバムで規制されていた部分が取り除かれて、言いたいことが言えるようになったのは前進ですね。それにおおくぼがメンバーになったことで、今回のアルバムに向けてもいいコミュニケーションが取れたし、お互いの手の内もわかったうえで臨めました。

-アルバム制作自体もスムーズに?

松永:う~ん、10月リリース予定だったものを12月にしちゃいましたからね(笑)。それは全国ツアーやアメリカでライヴがあり、バタバタしていたっていうところもあったんですけど。結果的に延びたことで、時間をかけて作れました。『少女KAITAI』を作って、春のツアーがあり、コンセプトとフィジカルの両方を得たうえで取り組めました。おおくぼさんは『少女KAITAI』からメンバーとして入ったけど、まだ宅録感があったと思うんですよ。それに対して、今回は肉体感が強くなったなと。

-今作はシリアスなメッセージ性を高める一方で、楽曲はより一層キャッチーでポップな印象を受けました。

松永:今年は平成27年ですけど、"昭和九十年"というパラレルな現在をテーマにアルバムを作ったんですよ。歌詞は戦時中を前提にして、アイロニックになるのを承知でサウンドはEDMを軍歌や昭和歌謡に置き換えたり、オーケストレーションの中にエレクトロニカを入れたり......今の音楽の正史ではなく、裏の歴史というか、そういうものがあったらというコンセプトで制作しました。

-過去と現在をミックスさせて?

松永:昭和という言葉から喚起されて、昭和歌謡みたいな昔を思わせるメロディも出てくるけど、懐古/レトロとは言わせないサウンドにしようと。電子音やテクノ的なアプローチをするにも今はオートチューンが主流ですけど、ヴォコーダーを多用しまくるみたいな(笑)。

-今作の"昭和"というキーワードは天馬さんが発案したもの?

松永:僕がコンセプトを伝えて作った部分もあるけど、自然に出てきた部分もあるんじゃないかな。前作は"日本"、"和"をテーマにしていたけど、それをさらに突き詰めた感じです。ただ、前作よりも切迫感というか、緊張感のある内容になりました。前作は今のアイドル・ブームを含めて......多幸感って言葉があるじゃないですか? ふざけた言葉だと思っているんですけど(笑)、それを僕らなりに表現してみた部分もあった。今回はそんな戯けたことを言ってる場合じゃないなと。

浜崎:都合のいい言葉だよね。

松永:はははは。