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LIVE REPORT

Japanese

アーバンギャルド

Skream! マガジン 2014年09月号掲載

2014.08.16 @赤坂BLITZ

Writer 荒金 良介

18時2分、ド派手なSEが鳴り響き、ステージ背面には3つのスクリーンが設置されている。そのスクリーンには"アーバンギャルド""鬱くしい国へ"という文字が綴られていた。アーバンギャルドの新作『鬱くしい国』レコ発ファイナルが遂にやって来た。"鬱くしい国へようこそー!"と松永天馬(Vo)が叫び、「ワンピース心中」でライヴはスタートした。

浜崎容子(Vo)と松永は手に扇子を持ち、鮨詰め状態のフロアは赤い旗を振る観客で埋め尽くされていた。「さくらメメント」で松永は拡声器を使ってノイジーに歌い上げ、また、瀬々信(Gt)はステージ中央で煌びやかなギター・ソロを披露し、場内の熱気もみるみる高まっていく。"お前を腐ったミカンにしてやろうか?"と浜崎が言うと、「生教育」をプレイする。浜崎と松永の男女ヴォーカルは一段と映え、曲の世界にずるずる引き込まれていった。それから危険球すぎる松永のMCを挟み、「自撮入門」に突入。ポップな鍵盤の音色、コミカルな曲調も相まって、盛り上がりも過熱する。さらに歌詞がスクリーンに流れる演出も良かった。"あの日のことを覚えていますか?"と浜崎が呼びかけると、「アガペーソング」を鍵盤のみのシンプルなアレンジで聴かせる。この曲における浜崎の声量豊かなハイトーン・ボイスは絶品だった。続く「戦争を知りたい子供たち」で松永は前のめりの熱情的なヴォーカルで迫り、ヘヴィな曲調で会場全体を激しく揺らしていた。

その後、瀬々、鍵山喬一(Dr)、サポートを務めるキーボードとベース奏者によるセッション・タイムを挟み、ショウは中盤に入っていく。ドキッとする歌詞とポップな曲調のギャップにやられる「君にハラキリ」、楽器に改造された機関銃を浜崎が片手に持って披露した「ロリィタ服と機関銃」と濃厚なアーバンギャルドの世界に観客を誘っていく。後半は「R.I.P.スティック」、「ガイガーカウンターの夜」とアッパーな曲調で煽り、本編は狂騒的なエレクトロにアガる「僕が世」で鮮やかに締め括った。

そして、アンコールではサプライズが待ち受けていた。瀬々の誕生日が近いということで、浜崎がステージにケーキを持ち込み、観客と一体となってバースデイ・ソングを歌う一幕もあった。また、レコ発ファイナルを無事に迎えられたこともあり、"ツアーどうだった?"と松永が尋ねると、"今回のツアーは一回りも二回りも成長できました!"と浜崎が笑顔で応えるシーンも印象的だった。それから「都会のアリス」、ラスト曲「堕天使ポップ」では巨大キューピーが現れて曲に合わせて踊り出す。そんなキュートな後方支援も受け、大きなクライマックスを迎えて幕を閉じた。

今回のファイナル公演は、新作『鬱くしい国』の世界観が色濃くライヴに反映されていたと思う。インタビュー時に松永は"EDMとボカロとアイドルをバンドでやってみた"と発言していた。今の時流もしっかりキャッチしつつ、生のバンド感も大事にしたサウンドは、巷にいそうでいないスタイルと言えるだろう。殺傷力の強いリリックとコミカルでポップな音像の融合は、アーバンギャルドの特性であり、大きな武器になっている。加えて、ステージ袖で姿が隠れていたマニュピレーター、サポート奏者2名を含む総勢7人で編み上げたライヴ感は実に新鮮だった。耳を引き付けるキュートさ、肉体を揺さぶるヘヴィでノイジーなアプローチは、今後ますます研ぎ澄まされていくだろう。この日は東名阪に渡るツーマン・ライヴ・シリーズも発表された。対バン相手は、N'夙川BOYS、神聖かまってちゃん、NoGoDという豪華なラインナップだ。どんな異種格闘技を繰り広げてくれるのか。次回はさらに逞しくなったアーバンギャルドに会えるかもしれない。

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