Japanese
YONA YONA WEEKENDERS
2021年11月号掲載
Member:磯野くん(Vo/Gt) キイチ(Gt) スズキ シンゴ(Ba) 小原“beatsoldier”壮史(Dr)
Interviewer:山口 智男
"ツマミになるグッドミュージック"を掲げ、ノーマークの新人から注目のニューカマーに成長を遂げてきたYONA YONA WEEKENDERSが、ついに1stフル・アルバム『YONA YONA WEEKENDERS』を完成させた。昨今のシティ・ポップに共鳴しながら、彼らならではと言えるサウンドを奏でる4人の矜持を、このインタビューからぜひ感じ取っていただきたい。
そもそもはブラック企業に勤めていた僕のストレス解消みたいに始まったバンドなんです
-今年4月にメジャー1stデジタル・シングル「いい夢」をリリースしてから、配信シングルのリリースを重ね、いよいよ11月3日に1stフル・アルバム『YONA YONA WEEKENDERS』をリリースする現在の心境から教えてください。
磯野くん:やっと完成しました。僕たちみんな平日は会社員として働いているんです。その合間を縫って、曲作りを含め、制作をしていたのでしんどかったという記憶しかない(笑)。だから、"やっと終わったー"という気持ちと、やっとみなさんに聴いていただける楽しみが混在しています。
小原:早くライヴでいっぱいやって、(アルバムの曲を)自分たちの身体に馴染ませて、お客さんにも知ってもらいたいと思ってます。
キイチ:アルバムの曲をスタジオで合わせていても楽しいんですよ。ライヴハウスでみなさんと一緒に楽しめたらいいなと思ってます。
シンゴ:僕ら、メロコア・パンク出身の4人組と言われることが多いんですけど、右も左もわからないまま、こういうサウンドを始めて、このアルバムでようやくスタートラインに立てたと思うので、これからが楽しみです。
-メジャー・デビューはこのバンドの目標のひとつではあったんですか?
磯野くん:このバンドを始めたきっかけは僕だったんですけど、始めたとき、僕以外の3人はもともとやっていたバンドがそれぞれあって、手伝ってもらうみたいなテンションだったんです。だから、"売れようぜ"みたいなことを言っちゃうと、"もともとやっていたバンドが動けなくなる"と思うんじゃないかと感じて、最初は言ってなかったんですけど、僕の内なる気持ちとしては売れたいなという気持ちがあって、その先にはメジャー・デビューっていうのも徐々に見えていましたね。
キイチ:僕はベースで他のバンドをやっていたんですけど、YONA YONA(YONA YONA WEEKENDERS)を始めたときは圧倒的にそっちのほうがライヴも多くて、YONA YONAはほとんどライヴをやってなかったんです。たまにスタジオに入って、そのあとちょっと飲みに行ってという感じだったので、ここまで来るとは思ってなかったです。
-じゃあ、ちょっとびっくりしている?
キイチ:事務所の方がライヴを観に来てくれてからここまでめちゃめちゃ早かった(笑)。だから、実感がまだないんですよ。
小原:言い方は悪いけど、周りに転がされるようにここまで来てしまったというのが正直なところですね(笑)。
シンゴ:友達の友達から"知ってるよ"と言われて、ようやく実感が湧いてきたと言うか、自分たちの曲(2020年11月リリースのデジタル・シングル「君とdrive」)がCMに使われて、テレビから自分たちの曲が聴こえてきたときは、"うわっ、すごいな"って思いましたけどね(笑)。
小原:CMソングはメジャー・デビュー前だけどね。
-メジャー・デビューをきっかけに音楽やバンドに取り組む気持ちは変わりましたか?
磯野くん:気持ちは変わらないですけど、これまでよりも聴いてくれる人は確実に増えると思うんですよ。なので、自分たちがやっている音楽にちゃんとメッセージを持たせたいとは思っていて。そもそもは当時、ブラック企業に勤めていた僕のストレス解消みたいに始まったバンドなので、最初は会社の愚痴とか、上司の悪口とかを歌っていたんですよ(笑)。でも、今はコロナ禍の中で、明るいニュースがないと思っている人たちに寄り添えるような曲を作っていけたらいいなと思ってます。
-シンゴさんがおっしゃっていたとおり、メロコア・パンク出身の4人が集まって、ファンクやソウルの要素もある音楽をやることになったきっかけは、磯野くんがそういう音楽をやりたいと考えたことだったんですか?
磯野くん:そうです。かあちゃんが山下達郎さんやユーミン(松任谷由実)さんを聴いていたので、小さいころからそういう音楽にも馴染みがあったんです。パンク・バンドも6年ぐらいやっていたんですけど、後半は日本語詞の曲があったりとか、歌モノに寄っていったりとかして。自分の中で、自分の歌声をもっと生かしたいという気持ちがあって、徐々にそういうふうになっていったんですけど、方向がなかなか定まらなかったんですよ。そしたらメンバーから"ついていけねぇ"と言われて、バンドが終わっちゃったんです。それで自分の歌を生かせるジャンルってなんだって改めて考えたときに、当時、Suchmosさんとか、never young beachさんとか、Yogee New Wavesさんとか、めちゃめちゃ人気があって、シティ・ポップ・リヴァイヴァルみたいな感じで盛り上がっていたんで、そういうバンドやったらモテるんじゃないか、売れるんじゃないかと思って、じゃあ、やってみようって。
-それで3人に声を掛けた、と?
磯野くん:会社の愚痴を飲みながらシンゴにこぼしてたら、"手伝うからバンドをやろう"って誘ってくれたんで、まず暇そうな人たちに声を掛けたんです。いや、暇そうっていうか、もともとみんな飲み友達で、対バンもよくしていたんですよ。それでこの4人が集まったときに"最初はシティ・ポップって謳ってやろうか"ってなったんです。
-磯野くん以外の3人はそれまでシティ・ポップにはそれほど馴染みはなかったそうですが、磯野くんはそういう3人とやることに不安はなかったですか?
磯野くん:正直、キイチはこのバンドでギターを始めたし、シンゴももともとベース/ヴォーカルでハイスタ(Hi-STANDARD)みたいなバンドをやっていたし、最初にスタジオに入ったときはしっちゃかめっちゃかで、ヤベぇなっていうのはあったんですけど、普通に仲がいい友達で、スタジオでセッションして、そのあとみんなで飲みに行くのが楽しかったんです。
小原:ジャンルはなんでも良かったんですよ。磯野が"メタルやろう"って言ってたらメタル・バンドになってたと思います(笑)。
磯野くん:だから、別に下手でもいいかと思いながら、たまに誘われるライヴに出るぐらいの感じでいいかなと考えていました。そしたら、結成1発目に、とあるイベントに出たとき、客の盛り上がりがハンパなくて。パンク界隈のお客さんだったから、僕らがやっている音楽が新鮮に聴こえたのかもしれないですけど、"すげぇいいよ"って言ってくれて、あれ、もしかしたらイケるんじゃね? って(笑)。それぐらいから僕がシンゴとキイチにこういうふうに弾いてくれみたいに言うようになったんです。
-このバンドを始めたのって。
キイチ:2017年の末が初ライヴなんで。
小原:スタジオに入り出してからちょうど丸4年になるんじゃない?
キイチ:でも、最初の1~2年は何もやってない感じで。"とりあえずCDを作りたいよね"ってなったあたりから、ちゃんと曲も選定されていって、磯野の前のバンドのときからお世話になっている監督に「明るい未来」(2019年リリースの1st EP『夜とアルバム』収録曲)と「誰もいないsea」(2018年リリースの自主制作盤ミニ・アルバム表題曲)のMVを撮ってもらったら、それがきっかけで結構知ってもらえたんです。それで、流通のウルトラ・ヴァイヴの方がライヴに来て、"サブスクやったほうがいいよ"と勧められて、それが結果、大成功だったというか、そのお陰でここまで来られたっていうか。ただMVを作って、ちょこちょこライヴをやっていたときもメロディックとハードコアのイベントに出ていたので、CDもそんなにどかっと売れてたわけではないんですけど、周りのバンドマンは気に入ってくれてたから、"いいね"って言ってもらえるだけで楽しかったんです。
-丸4年でここまで来られたってほんとあっという間でしたね。
磯野くん:時間にするとそうかもしれないですけど、僕としては会社員を続けながらの活動だったので、且つ、その間に結婚もしたし、子供も生まれたし、部署異動や転職もあって、結構大きな人生のイベントが連続したので、僕としては体感的にはすごく濃い4年間だったんですよ。でも振り返ってみると、たしかに今の事務所に入ってからは、ここまでトントン拍子でしたね。
-"ツマミになるグッドミュージック"を掲げていますが、メイン・ディッシュにはならなくていいのでしょうか?
磯野くん:僕らの立ち位置的にKing Gnuとか、Official髭男dismとかみたいにはなれないなと思っていて(笑)。僕らは普通のおっさんなんで、ロック・スターにはなれないと思っているんです。でも、会いに行けるアイドルじゃないですけど、そういうバンドもいてもいいんじゃないかって(笑)。普通のおっさんがいい歌を歌っていて、大きい山もないけど、細く長くやってるみたいなバンドでいいんじゃないかな。全然わからないですけど、売れすぎると、仲違いとか、金でモメたりとか、そういうイメージがあるんですよ。
小原:ステーキは毎日食えないけど、あたりめだったら毎日食える。そういう音楽でいいんですよ。ちょっといいあたりめをちびちび食べながらっていう(笑)。
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