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Japanese

YONA YONA WEEKENDERS

Skream! マガジン 2021年03月号掲載

2021.02.19 @渋谷WWW

Writer 稲垣 遥 Photo by ホンマイサム

YONA YONA WEEKENDERSの3rd EP『唄が歩く時』レコ発ライヴが渋谷WWWで行われた。この日は彼らの2021年初ライヴであり、バンドとして初のワンマン・ライヴでもあった。昨年はシングルが次々とラジオ各局でパワープッシュを獲得し、"Honda Cars"のTVCMに大抜擢され、コロナ禍にもかかわらず、着実に楽曲のパワーでリスナーを増やしたことを証明するように、チケットは早々にソールド・アウト。まさに待望の公演となった。

今回のライヴは、サポート・メンバーとしてコーラスに西恵利香、キーボード&コーラスに高橋遼を迎えた6人編成で実施。少しの緊張は携えつつ、それ以上に嬉しさが勝ったような笑顔を浮かべてラフに登場したメンバーたち。EP『唄が歩く時』収録曲「Lonely Times」から特別な夜はスタートした。
彼らの音楽は"ツマミになるグッド・ミュージック"と表現されている。これは実際にYONA YONA WEEKENDERSのライヴで過去に、異例と言える500杯以上のお酒が注文されたことに由来するそうだ。もちろんそれは彼らのファンが大酒飲みだらけなわけではなく、初見の人も含めて、どんな人も問答無用で心地よく身を任せたくなる"生音"の力によるものだということを、この日実感として得ることになった。シティ・ポップをメインとした音楽性の軽やかなノリの良さだけではなく、予想以上にシンゴによるベースの低音が効いていたし、磯野くんの艶のある歌声をメインに据えているものの、キイチのギターは時にソリッドで、小原"Beatsoldier"壮史のドラムもメリハリが気持ち良く、それぞれの音の粒立ちがいい。
実は彼らは、YONA YONA WEEKENDERS結成以前は、メロコア/パンクをラウドに鳴らすバンドで活動していた4人だという。おそらくその経験が特にライヴで功を奏しており、私たちには新鮮なシティ・ポップとして届いているのだ。

"YONA YONA WEEKENDERSです。よろしくお願いしまーす!"そう言い磯野くんが手を上げると、リバーブの効いたギター・リフが癖になる「遊泳」へ。続くメロウでロマンチックなナンバー「東京ミッドナイトクルージングクラブ」では"tokyo midnight"のコーラス部分でフロアの手が一斉に上がり、最後のサビで、ミラーボールが回ると同時にぱっと開放感がはじけたのは序盤のハイライトだった。 MCでは磯野くんが"ちょっと言い訳をさせてください"とこの日は衣装を忘れて、急遽買った柄シャツのおかげで思いのほかチンピラ感が出てしまったが、"本当は優しい目をしたおじさん......って言っても31歳なんです"とサングラスをずらして見せ、観客を笑顔にする。そして、去年は2nd EP『街を泳いで』のレコ発ライヴが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で流れてしまったため、今日直接会えたのが嬉しいと素直な気持ちを口にした。

"そんなコロナの自粛期間中に作った曲です"と前置きし奏でた「In my room」。丸っこいギターと優しいコーラスから始まったこのナンバーは、心に温かな火を灯すようで、バンドの新たな一面を見せる。ギター・ソロからの転調もバチッとキマり、不安な状況の中で生まれた"きっと逢えたらいいね"という歌詞が、今オーディエンスとバンドが直接向かい合って歌うこの状況と照らし合わさって、胸が熱くなった。次いでカッティング・ギターが爽やかな「誰もいないsea」では、室内であることを忘れるほど日差しや爽やかな風も感じさせ、フロアも磯野くんの浮遊するファルセットに乗り、波のように揺れる。
ジャジーなキーボードからドラム、ベース、ギターと重なっていくライヴ感のある入りから「BUREIKO」、そこからコーラスのマッシュアップで繋ぎ、ワクワクを増幅させた「R.M.T.T」。ブラック・ミュージックの香り満載で踊れると共に、一聴するとセクシーなナンバーだが、実はタイトルは"ラーメン食べたい"の略で、ラーメン愛を歌っていて、"田舎の母ちゃんには言えない"、"明日のチャンネーのことなんて忘れろよ"というユニークな言葉選びが耳に引っ掛かるキラーチューンだ。途中で磯野くんが"ラーメン食いてぇー"と叫んだり、高橋が低音ヴォイスでラップ風にコーラスを入れたりといった遊び心も楽しく、観客も大いに楽しんでいるのが目に見えた。

あっという間にライヴは終盤戦。"また時が来たらみんなで乾杯しましょう"(※この日は感染症対策のため酒類の提供は開演後制限されていた)と磯野くんが挨拶し、前述した"Honda Cars"CMソング「君とdrive」から、「SUNRISE」へと繋いだ。イントロから自然とクラップが湧き、初ワンマンとは思えないほどすっかり会場と一体となった感覚に酔いしれながらも、美しく少しノスタルジックなメロディが身体に染みわたりぐっとくる。そのまま最新EPのタイトル・トラック「唄が歩く時」を演奏し、物語のページを閉じるように丁寧に本編を締めくくった。

まだ足りないと鳴りやまないアンコールに応え、再びステージへ現れた6人の手には、軽井沢のクラフトビール"よなよなエール"が。この日のお祝いとして"よなよなエール"直々に贈られたものだという。そんなふうに多くの祝福を受けて、ここで改めて磯野くんは、パンク出身で地下のライヴハウスで活動していたところから、就職を機に一度音楽から離れた自身の過去を話し始めた。その仕事のあまりのハードさに心身が潰れかけていたところ、今のメンバーにもう一度バンドをやろうと誘われて始めたとYONA YONA WEEKENDERS結成の経緯を語り、"もともとストレス発散だったのに、こんなに多くの人に聴いてもらえて嬉しい。愛してます"と届けた。慣れない言葉を口にしたからなのか自分でも照れて笑っていたが、それくらい想いが溢れ出したのだろうなと感じる、いいひと幕だった。

そして、最後にYONA YONA WEEKENDERSの始まりの曲「明るい未来」が鳴らされた。"38度の微熱でギラギラの眼で働け"というリリックに表れている通り、曲名とは裏腹、先ほど彼が語ったブラック企業で仕事をしている当時の過酷さを皮肉った1曲は、まさに初期衝動に溢れていて、洒脱なサウンドの中に確かに熱が感じられた。彼らの曲の中で最もソウルフルでソリッドなナンバーだと言える。キイチもダイナミックにジャンプし、バンドのアンサンブルが爆発したフィナーレは、笑ってしまうくらいに素晴らしかった。


[Setlist]
1. Lonely Times
2. 遊泳
3. 東京ミッドナイトクルージングクラブ
4. 夜のgroovin'
5. In my room
6. 誰もいないsea
7. R.M.T.T(BUREIKO)
8. So Much Fun
9. 君とdrive
10. SUNRISE
11. 唄が歩く時
En. 明るい未来

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