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INTERVIEW

Japanese

カノエラナ

2020年06月号掲載

カノエラナ

Interviewer:吉羽 さおり

2ndアルバム『盾と矛』でシンガー・ソングライター カノエラナが抱える愛憎やポップさとエキセントリックさ、グロさとかわいらしさといった矛盾したあれやこれやを、とことん濃厚且つ万華鏡的サウンドで提示したカノエラナ。続く作品は、そんなカノエの大事な一部、アニメにスポットを当てた、アニメ・ソング・カバー・アルバム『「尊い」~解き放たれし二次元歌集~』だ。彼女が幼い頃から馴染み、自身のカルチャーを培ってきた、まさに"尊い"アニソンたちが愛情たっぷりに調理されている。誰もが知るような曲からアニメ・ファンのツボを突くような曲、この曲もカバーするの? というものまで、一筋縄でいかない選曲とアレンジの妙が魅力的な1枚だ。

-昨年末の2ndアルバム『盾と矛』に続く作品としてリリースとなるのが、初のカバー・アルバム、それもアニメ・ソング・カバー・アルバム『「尊い」~解き放たれし二次元歌集~』です。今回カバー・アルバムをリリースしようとしたのはなぜですか?

念願だったんです。アニソンのカバー・アルバムを出したいなとは思っていたので、今回お話をいただいたとき"絶対にやりたいです!"と言いました。

-念願のということだと、今回は8曲に絞られていますが、選曲するのは至難の技だったのでは?

そうですね。私が小さい頃から培ってきたアニメの曲たちをとにかくいっぱいリストアップして、その中でどれがいいかなってセットリストを組むようにというか、どういうふうにしたらいいかなって組み合わせていきました。全部で15~20曲くらいリストアップしたんですけど、あまりにマニアックな曲は、今回はごめんなさいという感じで......この8曲を選びましたね。

-小さな頃からとのことですが、アニメやアニメ・ソングにいつぐらいからのめり込んでいったんですか?

気づいた頃にはアニメを観る環境があったなと思います。3歳くらいから観ていて、アニメと共に過ごしてきたという感じです。

-そこにはお父さんの影響というのも大きいそうですね。

はい(笑)。めちゃくちゃ大きいです。お父さんと仲が良かったのもあるんですけど。お父さんが仕事から帰ってくるとよくアニメを観ていて、それを横に座って一緒に観ていたりして。でも、最初は隠れながらでしたね(笑)。お父さんの後ろに隠れながら"何観てるんだろう?"って覗き見している感じでした。

-そこから最初に自分でハマっていった作品というと?

最初は"ルパン三世"でしたね。

-ずいぶんと渋いところを(笑)。

ずっと観てましたね。私の初恋が石川 五ェ門なので(笑)。"めっちゃかっこいい!"ってなってて。

-あぁ。今のカノエさんが好きな和の要素を考えると、その好みって一貫しているかもしれないですね。

そうなんですよね。そのあと、お父さんが観ていた"るろうに剣心"も好きになって。"るろうに剣心"も和の感じじゃないですか。相楽左之助さんという登場人物がいるんですけど、それがたぶん2番目の恋なのかな? って(笑)。

-アニメの世界に自分が惹きつけられた理由、ハマっていったのは、今思うと何が大きかったと思いますか?

私は小さい頃、幼稚園に行くのもすごく嫌がっていたんです。乗り物酔いがすごいから、とにかく幼稚園のバスにも乗りたくないし。で、バスに乗らないとみんなとあまり仲良くなれないのもあって。その頃はすごく反抗的だったんですよね。私の唯一の反抗期が幼稚園時代で、お弁当も全然食べないし、先生に"みんなと一緒にお外に遊びにいこう"って言われても、"私は絶対に嫌です"ってはっきりと言ってたらしくて。

-そんなに自己主張していたんですね。

今と真逆ですよね(笑)。先生からの連絡帳には"心配です"って書かれてしまったりもしていて。そういう感じだったから、お友達と呼べる人が全然いなかったというか。ただ、同級生なんですけど、お姉さんみたいな子はいて、その子に引っ張ってもらうとかはしていたんですけどね。それで、おままごとや、お人形と遊ぶとか、ひとりでできるような遊びにどんどんハマっていって、テレビを観たり、アニメーションだったりもすごく好きになったんだろうなって思います。あとは音の出るものが好きだったのかな? CMとかが流れているときもずっとリズムを取っていたらしいんですよ。

-音楽的な原点も、そのあたりにありそうですね。

そうですね。あるなと感じるのが、やっぱりしまじろう(ベネッセコーポレーションの幼児向け通信教育教材"こどもちゃれんじ"に登場するキャラクター)の存在ですかね。家にしまじろうのおもちゃみたいなものがあって、小さいピアノのおもちゃを弾いていて。聴いたことがあるような曲を真似たり、あとは自分で適当に作った曲を小さい頃からやったりしてたみたいなんです。

-今回アニメ"しましまとらのしまじろう"の「ハッピー・ジャムジャム」をカバーしていますが、アニメのカバーをしますと言って、しまじろうの曲をやるという発想はなかなかないと思うので、ここはカノエさんならではの選曲ですね(笑)。

たしかに、チョイスが。

-もともとが覚えやすい、子供が楽しめる曲でもありますが、これをどう自分のものとしてアレンジをしたら面白いのかっていうのは考えた感じですか?

考えたんですけど、もともとNHKの「カゲのオバケ」("みいつけた!"エンディング・テーマ/CD『NHK みいつけた!ポップコーン』収録曲)とか、子供向けの曲みたいなものは作っていたのと、自分の曲でも「ダイエットのうた」(2017年リリースの3rdミニ・アルバム『カノエ暴走。』収録曲)で"インナーマッスル鍛えましょ"と歌って、「猫の逆襲」(2019年リリースの1stシングル『ダンストゥダンス』収録曲)でも子供が聴いて一緒に遊んだり、踊れたりする曲を作っていたので、意外と簡単だったかもしれないです。

-一方で"原曲はどんな感じだったっけ?"というくらいにガラッとアレンジを施した曲も多いです。

「シリウス」とかは特にそうですよね。

-「シリウス」は"バラードにアレンジしちゃうんだ"っていうのがありました。この曲を歌っていた藍井エイルさんとはもともとお知り合いでもあるそうですね。

そうなんです。エイルさんから楽曲提供のお話をいただき、そこからお話させていただく機会も何度かあり、今、交流がある感じです。はじめにエイルさんとお会いした際に、私の曲を聴いてくださっていたみたいで、「ヒトミシリ」(2016年リリースの2ndミニ・アルバム『ヒトミシリ。』収録曲)という曲が好きだと言ってくださいました。

-今回「シリウス」をカバーする話はもちろんご本人にしているんですよね。

しました、もう吐きそうですけど(笑)。これまで対談をしたこともあるんですけど、未だに会ってお話しすることは夢なんじゃないかって思うくらいのことで。私の中では、エイルさんはテレビの中の人で、アニメ・ソングを歌っているすごい人っていう認識なので、隣にいると吐きそうになっちゃうんです(笑)。「シリウス」もご本人に聴いてもらったんですけど、やっぱり緊張しましたね。ガラッと原曲とは変えているので、どういうふうに受け止めてもらえるんだろうとドキドキしていましたね。

-藍井エイルさんは資料にもコメントを寄せていて、"シリウスとこんなに愛をもって向き合って歌ってくれたことに大感謝です"とも語っていますが、この疾走感のあるエネルギッシュな原曲をなぜバラードに落とし込もうと?

この「シリウス」という曲は、"キルラキル"というアニメ作品のオープニング曲なんです。"キルラキル"って戦闘シーンが多いんですけど、回を重ねていくごとに温かみを感じることができて。観終わった感想として、最終的には私はこういう気持ちになりましたというのを、曲やアレンジで返せないかなと思ったんです。戦いを終えて、みたいな。

-全曲そういう自分のイメージを改めて音にしたり、どこかアンサー・ソングにするような感じでアレンジをしているんですか?

それはこの曲が特別かもしれないですね。

-もともとの曲も好きだったんですよね。だからこそ、手を入れていく難しさがありそうです。

難しかったですね。でも、ここは挑戦しどころだなと思いました。「シリウス」はこのアルバムを締めくくる曲にしたいと思っていたので、それだったらスロウなテンポのほうがいいのかなって考えていたんです。

-また、アルバムの1曲目を飾る「残酷な天使のテーゼ」に関しては、原曲をストレートに解釈したアレンジですね。

ストレートですね。この曲はいろんな方がカバーされていて、アニソンでもきっと一番カバーされている曲だと思うので、逆にストレートにいったほうがいいのかなっていうのがありました。ジャズやボサノヴァ風のアレンジも考えたんですけど、ちょっとそれだとカノエじゃないかなと思ってもともとの感じに引き戻した感じでしたね。ちなみに、ヴァイオリンはアレンジャーの浅野尚志さんが弾いてくれてます。

-名曲だけにストレートに歌い上げるのはすごく気持ちが良さそうですし、すごくハマってますね。

カラオケで一番歌い慣れている曲ですからね(笑)。中学時代、友達とみんなでカラオケに行ったなとか思い出しながら歌ってました。当時、カラオケに行くチームみたいなものがあったんですけど、いわゆるJ-POPとかを歌うチームとアニソンしか歌わないっていうチームがあって(笑)。アニソンしか歌わないチームは3人で5時間くらい入って回してましたね。

-アニソン好きな人からしたら「残酷な天使のテーゼ」なんて取り合いじゃないですか?

取り合いですよ。なので、ひとり1回ずつは歌う感じで(笑)。今はひとりでカラオケに5時間入るので、取り合いにならず、好きなだけ歌えます。