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INTERVIEW

Japanese

カノエラナ

2020年10月号掲載

カノエラナ

Interviewer:吉羽 さおり

アニソン・カバー・アルバム『「尊い」~解き放たれし二次元歌集~』も好評のカノエラナの最新作は、オール・セルフ・プロデュースによるアルバム『ぼっち3』。この『ぼっち』シリーズはもともとライヴ会場限定で販売していた作品で作詞作曲、演奏はもちろん、ヴィジュアルのスタイリングなども自ら行う、カノエラナ純度100パーセントの原点的な作品だ。第3弾で初めて全国流通盤となった今作は、よりアレンジが洗練され、曲にあるドラマ、抱えきれないほどの想いに振り回される人の心模様が鮮やかに描かれた。アコースティックだが、ふくよかな厚みある作品だ。

-これまでライヴ会場限定でリリースされていた『ぼっち』シリーズですが、その第3弾『ぼっち3』が初の全国流通盤としてリリースとなります。この『ぼっち』シリーズのファンは多いと思うんですが、やはり会場以外でも販売してほしいという声は高かったんですか?

いろんな事情で、どうしてもライヴに行くことができない方もいるので、"通販とかはないですか?"とか、そういう声は多かったですね。今、こういうコロナ禍の時代になってしまって、ライヴをするとなっても、なかなか難しいところがあって、足を運んでもらうことができないので。この機会にカノエの一番ライヴに近しい音を聴かせられるのが、『ぼっち』シリーズなんだろうなと思ったんです。『ぼっち3』をこのタイミングで全国流通するのは最高なんじゃないかなと考えてます。

-たしかに。この前のアニソン・カバー・アルバム『「尊い」~解き放たれし二次元歌集~』(2020年4月リリース)でカノエさんを知った人もいると思いますが、カノエさん自身はどういう音楽をやってるのかっていう原点的なところがわかる作品でもありますしね。今回はアコースティックながら、特にバラエティに富んでいて、カノエ節が濃く出てますから。

はい、色濃く出てますね。

-アルバムとしてはどんなイメージで制作をスタートしましたか?

今まで作ってきた曲たちもそうですけど、新しく作った曲もあるので、その構成を全部自分で考えなきゃいけないというのが、自分としては一番プレッシャーがハンパなかったですね。今回は話し合いをするときに、"全部ひとりでやります"って強がってしまったので(笑)、すべて自分の責任でやるしかないなっていうことで、本気モードで頑張りました。

-曲のストックはしこたまあるわけじゃないですか。そのなかでどう自分を出していくかとか、このタイミングでこの曲を聴かせたいとか、そういうのって頭の中にあるんですか?

今回はこういう時期でもあるので、騒がしい曲というよりは、少しトーンを落として......色で言うと、温か寄りの冷たさみたいな、そういう色にしたいなとは思いました。

-はい。でも、グサグサ刺さる曲が多いですよね。1曲目「君が僕のことを一生忘れられないように」もかなり強烈です。

そうですよね、1曲目どうしたんだ!? っていう(笑)。

-相手を想う切ない曲なんだなと聴いていると、後半からカノエ節が入ってきて......これは大きく感情を突き動かされたときに書いた曲だそうですね。

はい。知り合いの方から聞いた、実際にあった男女間のギスギスみたいな話があまりに衝撃的すぎて、"いつか絶対に曲にしますね"っていう話をしたら、"いいよ"っていうことだったんです。その話を聞きつつも、自分もその時期恋愛面ではないんですけど、活動するにおいてモヤモヤしたことがいろいろあったので。ストレスじゃないですけど、それを曲にぶつけちゃえということで、すごく荒んだ歌詞になりました。

-この気持ちは曲として成仏してあげないと、と。恋愛の曲としては、都合のいいなんだかわからない立場になっている自分が描かれてますね。それが後半にいくにつれて、死を予感させるような、そのくらいまでして相手に想いを残してやるんだっていう気概が凄まじい。

どうしても傷つけてやるみたいな、そういう誰かの心に残りたいみたいな願望がすごく出ているなと思いましたね。

-それはでも友人の話からでなく、カノエさんの想像力を絡めるとこういう内容になってしまうということなんですか?

そうです。こういう大変なことになってしまいます。恋愛ソングが普通に書けないというか、あまり得意じゃないので。いろんな人が普通の恋愛の曲は書いているし、まぁいいかなと思って、少しずれたところをやろうかなっていう感じですね。

-今回のそれぞれの曲を聴いても、いろんな人のいろんな視点や立場になって、そこから見える景色が描かれていますし、演じ手のようにその世界を生きる歌詞になっているのが、ドラマチックだし面白いなって改めて思いました。

そこを汲み取ってもらえると一番嬉しいなって思います。

-カノエさん自身はそんなに自分の恋愛観などを曲で語らないじゃないですか。それでも、曲の中では、女性も男性もすごくリアルで、渦巻く感情に振り回されるヒリヒリした感じがあるのがすごく面白いなって。それだけいろんなものを想像してしまうっていうのがあるんですかね。

やっぱり、妄想がすごいからなんでしょうね。人の話を聞いていても、どうしても一度自分の中に落とし込んでしまって、自分だったらこうするかなとか、自分だったらこういうふうに動くなってその場で想像してしまうんですよ。そういうのがあるから、曲を書くときもこっちの人の曲を作ったら、この人には相手がいるわけだから、必ず相手に成り代わってそっちの意見も考えてみようってなるんです。

-そこが面白さで。ラヴ・ソングを書くにしても、失恋の曲、恋に敗れた側の曲って多いと思うんです。でも、絶対それだけじゃないし、例えば「あの子のダーリン」では浮気相手の女の子の立場で書いていますね。この曲のもととなった「ねぇダーリン」(2018年6月リリースのライヴ会場限定CD『ぼっち2』収録曲)では彼の浮気相手ということですごく嫌な感じだった子が、「あの子のダーリン」ではまた違う視点で別のストーリーが生まれてる。

例えば、誰かがケンカをしていたとして、どちらの話も聞かないとどっちが悪いかわからないじゃないですか。私、わりといつもその真ん中の立場に立たされることが多くて。"まぁまぁ、やめなよ"っていういさめる役をやってる気がするんですけど。普段、そういう立場にいるからこそ、どちらの気持ちも一応汲み取って考えてみたいっていうのがあるのかもしれないです。

-普段の立ち位置ならではのものなんですね。「ねぇダーリン」という曲があっての、今回の「あの子のダーリン」になるわけですが、「ねぇダーリン」を書いたときに、今回の曲を書くこともどこかで考えていたんですか?

全然考えていなかったんです。「ねぇダーリン」を書いたときは、ただ単に宅配便が全然届かなくて。その宅配便を待っている間に、宅配便来ないけど何してるんだろう......っていう気持ちを込めて書いた曲だったので。恋愛という要素じゃなくて、宅配便を届けてもらえない私の気持ちみたいなニュアンスでスタートした曲だったんですよ(笑)。だから、続きを作ろうというのはまったくなかったんですけど、ライヴをたくさんやるようになって、いろんな人から"「ねぇダーリン」という曲めちゃくちゃ好きだよ"とか、"こういうことすごくあるんだよね"って言ってもらって、"あぁ、そうなんだ"と。私はそういうのは全然わからんけど、そういう恋愛の仕方をしている大人の人たちはいっぱいいるんだなって気づいて。じゃあこれを逆の立場で考えてみたら、それはそれでいいポジションの曲になるんじゃないかなってふと思って、作ったのが「あの子のダーリン」なんです。

-そうだったんですね。でも、今回の曲ができたことで、また「ねぇダーリン」のシチュエーションも色濃くフラッシュバックする曲にもなりました。いろんな種明かしがあったりとか。

(笑)やけに生活感に溢れてる描写がたくさん出てくるのは、「ねぇダーリン」を作ったときにずっと、部屋のイメージがあったんです。どうしても、そこから離れられなかったんですよね。いっぱいダンボールが積み上がった部屋なんだろうなとか考えたりして。

-「ねぇダーリン」で彼の部屋に相手の女の子が落としていったピアスが、ハートのダイヤのピアスだったという、そのピアスだけで相手の女の子がどんな感じの子かっていうのが想像できましたよね。

そうですね、どういう女かわからせるっていう。

-そのアイテムひとつで、リスナーも浮気相手の女の子が想像できて。でも、今回の「あの子のダーリン」で主人公になったその女の子は、淡い恋心を持ったごく普通の女の子で、悪いことはしていると思うんだけど......なんとも言えない感覚になってきますね。

そう、本当にそのなんとも言えないという感じなんですよね。たぶん、ドラマみたいに本当に悪いことをしている人たちってそんなにいないと思うんですよね。決定的に悪い女みたいな人って、絶対いないと思っていて。実際リアルにそんなことがあったら、きっと本当に好きだからやってるんだろうなとか、少し悪いとことかがあっても、それはそれなりに理由があるんだろうなとか。リアルであったらこうなんだろうなって考えていたら、こういう素直な歌詞が一気に降りてきた感じだったんです。

-具体的にこの女の子像はカノエさんの中にあったんですか。

たしかに嫌な女ではあるというか。女子から見て、鼻につく感じはあるような女の人像なんですけど、本人は別に、女子にうだうだ言われても知らんと。別に人のことはどうでもいい。自分がちゃんと一本筋が通っていれば、それはそれでいいじゃないかって思う、ある意味強い女というか、誰のことも気にしてない女なんだろうなと思って。そういうところは逆にかっこいいなって思いが、すごくあります。私自身は自分の意見をちゃんと言えないから、そういうふうにちゃんと発言できるような強い女に憧れるなと思って。いろいろ脚色して書いていった感じですね。

-そうやってキャラクターをいろいろ思いめぐらせながら書いてるときは、楽しそうですね。一方で、以前「サンビョウカン」(2018年2月リリースの1stフル・アルバム『「キョウカイセン」』収録曲)という曲に出てきた男の子が成長を遂げている「サブドミナント」などはどうですか。

この主人公は男の子なので、男の子の恋愛事情って正直よくわからないんですけど。私が知っている限り──ギリギリ私と話してくれる男性の友達や、知り合いの方にいろいろ聞いてみると、やっぱりズルズルと引きずると聞いたんですよ。すっごく好きになった人のことは、なかなか忘れられないということを聞いて、そこは私が知ってる女子とはちょっと違うなと思って、その引きずったまま大人になってしまったという様子を書こうかなと。主人公的にはあまり変わってないけど、周りの環境とかがいろいろ変わっているみたいな。

-これは相手の女性の立場となってみると、全然掴めないタイプの男性ですよね。

そうなんですよね。"ずっと付き合ってくれているけど、この人私のこと見てないな"っていうタイプの男に育ってしまった(笑)。

-タイトルの"サブドミナント"って、音楽で使われるワードで、コードの名前みたいな感じじゃないですか。このタイトルってどういうところからだったんですか?

サブドミナント自体が浮遊感みたいな、地に足がついていない状態っていう音で。この男の子の気持ちというか、大人にもなりきれていない、子供にも戻れない、自分はいったいどうすればいいんだろう、あの頃にとらわれたままだという意味合いがあるんです。でも、トニックにもドミナントにも、どっちにもいけるような、そういう状態のことを表してます。でも、そうか。普通はサブドミナントって言われてもよくわからないですよね。これからそこも説明するようにします(笑)。