Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

カノエラナ

2020年10月号掲載

カノエラナ

Interviewer:吉羽 さおり

自分の一番インナーな部分を見せないと意味がない


-(笑)物語性の高い曲が多い中で、「かぜ」は10代の頃に書いたということで、また違った味わいを持っています。当時の曲からの変化はあるんですか?

はるか過去に作った曲なんですけど、まったく変えてないんです。掘り出した、化石のままですね(笑)。

-歌詞のタッチが今とは違いますよね。自身の感情があらわになった曲というか。

今なら絶対にしないようなことをしていますね。歌ってみても、かゆいなぁと思うし。あの頃のことを思い出すと、ムズムズしますよね。

-どんなタイミングで書いた曲か覚えていますか?

この曲はたぶん、高校2年生になったタイミングだったかな。いろいろ環境が変わったときで、夢を追いかけたいけど、そういうわけにもいかなくなっちゃって、どうしようみたいな頃に書いた曲だったんですよね。当時の自分自身の恋愛の話とかもリアルに入っているから、ちょっと恥ずいな、かゆいなと思いながら歌ってます。

-そのときはそのときで、リアルに自分の思いを書いてたんですね。

そうですね。物語を面白くしようとか、こういう肉づけをしようっていうのがなかった時期というか。中学3年生の終わりくらいから曲作りを知ったので、まだ曲を作り始めて間もない頃だったから、自分の意見とかをちゃんと言いましょうみたいな感じだったんですよね。

-ピアノや、ハーモニカが入ってるのは、今回でのアレンジ?

そうですね。当時はまったくそういう音はなかったので、今回改めてどういうものにしようかとなったときに、ピアノを入れたほうがいいかなって。温かみも増すけど、根底にあるズーンとした部分を出したいなと思っていたので、ピアノを入れてみました。私は最初ピアノの弾き語りから入っているので、最初の頃に作った曲たちって、ピアノでも弾けるようなものが多かったんです。なので、今回の「かぜ」もピアノを入れようかなっていうのはありました。

-ピアノとギターでは、作る曲のタッチは変わってくる感じですか?

そうですね。ピアノになると急にゴシックになるので(笑)。コード感もオシャンティなやつになるんですよね。ギターのほうがガツガツといこうぜっていうのはあります。

-ギターのパーカッシヴなパワーやパッションが出ている曲だと、今回は「コンクリィとジャンゴォ」などがそうですね。

バリバリですね。でも、この曲はピアノでもギターでもなく、ビートだけをトラックで作ってやり始めた曲なんです。そこになんとなく"ふんふんふーん♪"って歌を乗せていった曲なんですよ。この曲は、一番作り方が違う曲かもしれない。

-普段と違うビートありきで作ったからこそ、ラテン調のホイッスルのような音を入れるとか、音を重ねて楽しんで作ってる感じが出ているんですね。

楽しんでふざけた曲ですね。あのホイッスルの音って、実はファンの方からいただいたリコーダーみたいなペンなんですよ。

-だからちょっと調子が外れてるんだ。

そうなんです(笑)。そのペンを2本いただいて、ピーピーポーポ、ピーピーピ、ポーポってやったので、実際にはホイッスルでも笛でもない、ただのペンなんですよ。

-音としていつかどこかで使おうかなっていうのがあったんですか?

実は、この間作った曲の中にも入れていたんですよ。釣りYouTuber 釣りいろはの番組テーマ・ソングで「ハジメテノツリザオ」(2020年7月リリースのデジタル・シングル)という曲を作ったんですけど、その曲の中にもあの笛もどきの音が入ってるんです。

-この笛もどきの音で、「コンクリィとジャンゴォ」って言っているのに、ほのぼのとした感じが出ています。これは地元からの帰りに作った曲だそうですけど、なんでまた飛行機の中で"コンクリィとジャンゴォ"、コンクリートジャングルっていうものが出てきてたんですか?

そのとき、結構長く地元にいたんですよ。10日間くらいいたから、今から東京に戻るのかっていう感じがあって。私は、どちらも好きなんです。どちらも好きだから、いろんな気持ちに溢れて。東京に戻ったら、アニメもいっぱい観れるし、いろんなグッズも買いに行けるなみたいなウキウキ気分もあったし、地元は地元で家族と会えたりするから、どちらも好きなんよなっていう気持ちを、書いてみようかなと思ったんです。

-この曲には昔の曲の歌詞も散りばめてあるなど、言葉遊びもかなりしていますね。

結局どこにいても、大切な人は隣にいるんじゃないかみたいなことを言いたかった曲なんですよね。山手線も乗ってると1周回るじゃんみたいなのがあって。一度行っても、また誰かとまた会えるでしょう、円を描きましょうみたいな曲なんです。「ダンストゥダンス」(2019年3月リリースの1stシングル表題曲)の歌詞が入っていて、あとは歌詞を辿っていくと、山手線の駅名がいっぱい出てくるんですよ。

-たしかに! 駅名がバラして組み込まれていますね。途中、なんで高田馬場が歌詞に急に出てきたのかなって思っていたんですよ。

あまりにもバラしてしまうとわからないかなと思って、そこだけ直接的に言ってみました。"谷を越えたその先には恵があって"とあるんですけど、そこが渋谷、恵比寿ということで、そういう感じで駅名が入ってます。

-そして、ラストの曲が「添えんでいい」なのですが、曲の最後に急にぐっとリスナーに向き合うようなシーンになっていきますよね。どきっとするような瞬間がある。

日常的なことをメモしているフォルダがあるんですけど。歌詞にあるいちごのケーキに桃を添えるなとか、割り勘って言うけど私1杯しか飲んでないわとか、そういう日常的なイライラポイントみたいな、なんだそれって思ったポイントを日によって書き込む愚痴フォルダみたいになっていたんですね。そのフォルダの最後に、"YouTubeでいつも観てます、応援してますというふうに書いてるけど、応援っていったいなんだろうな"って正直に書いていたんです(笑)。応援するっていったいなんなんだろうと、自分が書いていたメモをパッと見て、そのときはひねくれて考えていたんですけど。でもある日、知ってくれてるということ自体、むちゃくちゃすごいことじゃんって思えることがあったんですよね。書いた当時よりも、少し大人になったんでしょうね(笑)。知ってくれてるだけでも、何かのタイミングで、誰かにもしかしたらカノエラナという単語を発するかもしれないじゃないですか。そこで何かが生まれるかもしれないと考えたら、応援というのは別に知ってるだけでもいいんだって思えて。曲を書くときに、ぐちぐちと言ってる最後に、そういうリアルを入れたら、急に近い感じが増すんじゃないかなって思って。みなさんと距離を近づけるというか。

-このパートで急に目の前にきて言われてるような感じがあります(笑)。

そうなんです。プレッシャーかけてるよっていうのもあるんですけどね(笑)。そういう聴き方をしてもらえればいいなって思って、わざと近くしました。ほーらこっち向けーっていう感じで。

-曲調は可憐な感じがある曲だからこそ、意外性がたっぷりです。

釣りの曲です(笑)。一本釣りの曲ですね。これは変な餌かもしれない。パクパクって食べておいしいってなるけど、最終的に釣り上げられちゃうみたいな。引っかかったなっていう感じで。

-そこもらしい曲だなと思います。今回はアコースティックなアルバムですが、本当にいろんな遊びや仕掛けが施されていますね。

全体的に大人しそうに見えるけど、全然大人しくないアルバムになったなという感じです。中を解剖してみれば、めちゃくちゃいろんなものが詰まってるみたいな。内臓もあれば、なんでもあるじゃないかってアルバムにしたいなというのが最初にあったので。自分の一番インナーな部分を見せないと、この『ぼっち』シリーズは意味がないから、そこをちゃんと見せていけたらいいなということで、こういうラインナップになりました。

-例えば、普段はYouTubeで観ている人も、一歩深く入り込める内容にもなったのでは。オリジナル・アルバムやカバー作があってリスナーも広がっていると思いますが、このタイミングで出すべきだなというのもあったんですかね。

こいつは何を考えてるんだろうっていうのがすごくわかるかな。タイミングとしては、一番はコロナがありましたけど、SNSとかで実際にたくさん聴いてもらえている曲が、アコースティック調の曲が多かったんですよね。なので、そんなCDがあってもいいんじゃない? っていう。で、アコギをやるんだったら全部自分でやればいいじゃんとなって、結局『ぼっち』になっちゃったんですけど(笑)。

-ちなみに、推し曲を「あの子のダーリン」にしたというのは何が大きかったんですか?

アコースティックで私が一番やりたかったことというか、コーラスがたくさん入っていて、追いかけとかもいっぱいで、ピアノやカホンも入ってる、ギターの上モノもちゃんと入っているということで、バランスが取れてるなと思ったのがひとつの理由で。もうひとつは、『ぼっち2』からの今回は"3"ですよっていう意味を持たせたかったんです。『ぼっち2』のリード曲は「ねぇダーリン」ではなかったんですけど、実際みなさんがたくさん聴いてくださっていた曲は、「ねぇダーリン」が多かったなという印象だったので。そこから裏テーマで繋げるという意味で、「あの子のダーリン」をリードにしました。

-ここから聴く人はビックリかもしれないですね。"これどんな立場の人の曲なんだろう?"って(笑)。

あ、浮気してる女の人の曲なんだろうなというのがたぶんあるし、そのあとで私がいろんなところで「ねぇダーリン」を歌ったときに、"あ!そういうことか"って(笑)。驚きをとにかく与え続けるという。

-過去のいろんな作品にリンクしてくるのが、こうしてアルバムを作り続ける面白さですね。それこそバラバラにYouTubeで拾って聴いていても、どこかで別の曲のストーリーに繋がる瞬間が出てくるということですし。

全部繋がってくるので、1個も取りこぼすなよって私は思ってます(笑)。曲のくどさみたいなものは私の性格から全部きているので、お前ら覚えておけよっていう。なので、全部の曲をさらってほしいなと思ってます。