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INTERVIEW

Japanese

Negative Campaign

2019年01月号掲載

Negative Campaign

Member:伊藤 秀太(Vo/Ba) 佐々木 勇人(Gt/Cho)

Interviewer:TAISHI IWAMI

東京都内を中心に地道に活動を続けてきたNegative Campaignが、初のフル・アルバムをセルフ・タイトルでリリースする。長きにわたって書き溜めてきた曲の中から、ソングライターの伊藤秀太と、伊藤の書く曲が好きでバンドをやっているという佐々木勇人のふたりで厳選した全11曲。それらの軸にあるのは、ドライヴィンなサウンドとグッド・メロディに溢れた、いわゆるパワー・ポップ的なものではあるが、時としてそのバック・グラウンドが気になって仕方がないカオティックなアレンジ、異様なまでに切ないメロディや歌詞が飛び出してくる。そこでバンドの成り立ちから好きな音楽、それぞれの曲にあるエピソードなどをじっくり訊いていったのだが、想像以上に刺激的な話満載の濃厚な時間となった。

-少し前まで、Negative Campaignの公式TwitterアカウントからSoundCloudに飛ぶと、URLには確かに"Negative Campaign"と入ってるんですけど、バンド名が"The Appointments"となっていました。

伊藤:あれは僕の怠惰です(笑)。The AppointmentsはNegative Campaignのデモ用に僕がひとりで曲を作ってネットにアップするにあたって適当に付けたバンド名で。すっかり消すのを忘れてたんです。

-ということは、佐々木さんは絡んでないんですか?

佐々木:はい、まったく関わってないです。

-では、Negative Campaignはいつからどのようにして始まったのですか?

伊藤:僕が過労で鬱病になっちゃったんです。で、会社を半年間休むことになったんで、日本1周の旅に出ました。すると溜まってくるわけですよ、性欲が。で、帰ったらなんとしてでも誰かとデートしたくて、久しぶりに高校時代から知り合いの女の子に連絡しました。佐々木もそのころからの顔見知りで、"じゃあ佐々木君も一緒にね"って返信がきて、3人で久しぶりに集まったんです。そこで佐々木が40連勤とかしてるって話を聞いて、他人事ではないというか、女の子よりそっちの方に興味がいっちゃって。その場で仕事辞めろ、バンドやろうぜって説得しました。

佐々木:それで仕事を辞めることにして、伊藤がまず気分転換にってことで、僕にも旅を勧めてきたんで、ママチャリを買って鞄ひとつで日本の南端まで行くことにしたんです。でも、浜松あたりでチャリンコのタイヤがブスブスに刺されてパンクするわ、大阪でぼったくりの店に入っちゃって、有り金ぜんぶ取られるわ、もう大変で。2週間くらいで自暴自棄になってチャリンコも乗り捨てて、帰ってきちゃいました(笑)。

伊藤:佐々木がその間ブログを書いてて、"あ、こいつほんとに行きやがった"って思ってました。しかもずっと雨(笑)。

-運がないんですか?

伊藤:ツイてるときはツイてるんですよ。でも、ふたりとも札束は失くして自販機の下に落ちてる釣銭を見つける、みたいな次元。

佐々木:そんな感じで僕ら、音楽的な繋がりは一切ないんです。

-趣味が全然違うということですか?

伊藤:そうですね。共通してるのは、そこまで深くないってことですね。いろんなアーティストのベスト盤を聴くレベル。バンド内の役割は、曲は僕が書いて、佐々木が"僕はこれとこれが好き"って10曲に対して1、2曲の割合で言ってくるんです。それをバンドとして形にして演奏したらたしかにウケがいい。なので、佐々木が自然とバンドのディレクターみたいになってる感じですね。

-今は消えちゃってますけど、The AppointmentsはR&B/ガレージ寄りのパワー・ポップでしたよね? でもNegative CampaignはR&B的な要素が薄まっていると感じました。

伊藤:自分の曲に対しては客観性が薄くて。でも、佐々木とかライヴに来てくれるお客さんの反応とかを参考にして、収録曲を決めていったら結果的にそうなりました。

佐々木:ライヴで演奏する曲を選ぶ段階で、R&Bというよりはパワー・ポップっぽいものが多くなりがちではありますね。

伊藤:技術がないんで、わりと平面的なグルーヴのものになっちゃうっていう、逃げのアルバムでもあります(笑)。

佐々木:そんな感じで、本来アウトプットしたいものはいっぱいあるんです。だからパワー・ポップを死ぬほど愛している、というわけではなくて。

伊藤:パワー・ポップというイメージを持たれるのは嫌じゃないんですけど、パワー・ポップって中途半端な側面もあるじゃないですか。ヒットする前のCHEAP TRICKとかもそうですけど、ポップと呼ぶにはハードすぎるし、ロックと呼ぶにはポップすぎる。そういう感覚が僕らの曲にもあって、だから全然売れてないんじゃないかって(笑)。パンクじゃないし、ポップじゃないし、ガレージとするには歌がフワッとしてるし。

-パワー・ポップって、たしかにいろんなバンドがそう呼ばれていて、ファンも多いんですけど、バンド単体で商業的に成功した例はあまりないですよね。曲はほかにもいろんなタイプのものがあったんですね。

伊藤:ポスト・ハードコアみたいな曲もあれば、聖子ちゃん(松田聖子)をリスペクトしてる曲もあります。

-おふたりは音楽の趣味が全然違うということですが、佐々木さんの背景は曲にどう生かされているんですか?

佐々木:僕は伊藤の作る曲が好きってだけなんで、なんの参考にもならないです(笑)。ギターを始めたのも、中学のときにヒエラルキーが上の奴から、バンドやるから弾いてくれって言われて、どうせやるならそいつより上手くなりたいっていう変な負けず嫌いが発動しただけだったような。

-聴く音楽はどうですか?

佐々木:ギタリストですけどギターが特に好きなわけでも、ロックが好きなわけでもなく、ほんとOASISとか、みんなが聴くようなものを触っているだけですね。すごく好きなのはアイドル。最近だとCY8ERとか。トラックメイカーのYunomiさんから入りました。キュートな女の子ヴォーカルに重めのダブステップが入ってくる、みたいなのがツボなんです。ということで、Negative Campaignのサウンドには何も生かされてません(笑)。

伊藤:なのに、Stevie Ray Vaughanみたいなフレーズが飛び出してきたりするんですよ。面白い。佐々木はジャンルにこだわらずいいものを聴きとる耳があるんだと思います。だから佐々木のボツは素直に受け入れられるんです。

-Negative Campaignの曲は、おっしゃったようなことからか、パワー・ポップの色合いは強いながらも、それだけでは割りきれないところもまた魅力ですね。

伊藤:嬉しいんですけど、パワー・ポップっぽいことをしてることも、そのパワー・ポップにも収まらないところも作用して、どこにも属せず誰にも知られず(笑)。スタイルは全然違うんですけど、そういう割りきれなさという意味で、Helsinki Lambda Clubには親近感があったんですけど、彼らは特急に乗ってどっかに行っちゃいました。すごい。

佐々木:一瞬で背中が見えなくなったよね。

-最近、ナードマグネットやSonoSheetのような、THISTIME Records周辺のパワー・ポップ愛を前面に表したバンドが盛り上がってきていることについては、どう感じていますか?

伊藤:いいですよね。あの界隈の方々と話をしていると、"俺だけのバンド"くらいに思っていた90年代のマニアックな音楽やバンドのこと、よく知ってるんですよ。GIGOLO AUNTSとか。

-GIGOLO AUNTSはTHE SMITHSの「Ask」のカバーがクラブでもよくかかってました。

伊藤:そういうところでも流行ってたんですね。僕は、そのへんを通ってる人でも知らないだろうなとか、そういうの好きな人はあまり触ってないんじゃないかとか、ちょっと意地悪な角度から話をするのが好きなんです。例えばX JAPANを好きな人に"GENERATION Xは知ってる?"ってぶつけちゃうみたいな。

佐々木:話で打ち負かそうとするんだ(笑)。

伊藤:でもSonoSheetの渡辺君(渡辺裕貴/Vo/Ba)とかは、隙がないんですよね。全部食いついてくるから悔しい(笑)。シーン的なことで言うと、我々は都心で起こっていることを田舎の片隅から見てる、くらいの感じで。そもそもその土俵にも上がれてないですし。