Japanese
Negative Campaign
2020年04月号掲載
Member:伊藤 秀太(Vo/Ba) 佐々木 勇人(Gt/Cho)
Interviewer:TAISHI IWAMI
2019年1月に1stフル・アルバム『Negative Campaign』、同年11月に2ndフル・アルバム『Negative Campaign Ⅱ』をリリースしたNegative Campaignから、今度は半年を待たずに3rdフル・アルバム『Negative Campaign Ⅲ』が届いた。オルタナティヴ・ロックやパワー・ポップ、それらのルーツとなった60年代や70年代のオーセンティックなロックンロール/R&B、さらにその創生以前のカルチャーにまで目を向け組み合わせオリジナルを生み続けるタフな地力はさすが。そして特筆すべきは、作品全体に漂うこれまでにない優しさや包容力。以前のインタビューで"焦燥感に駆られて作った"と語った2ndフル・アルバムからわずかの期間で、彼らに何があったのだろうか。
-前作、2ndフル・アルバム『Negative Campaign Ⅱ』のリリースに伴うインタビュー(※2019年11月号掲載)では、30代に差し掛かり人生に対する不安やゴールのない焦燥感に駆られたことが、制作の原動力にあったとおっしゃっていました。あれから半年も経っていませんが、その頃の心境から変化はありましたか?
伊藤:曲は新たに作ったわけではなく、2ndフル・アルバムと同時期にはあったストックの中から選びました。なので、作曲における精神状態については、作った時期もバラバラなので一概には言えないんですけど、選曲やレコーディングにあたっては、そのどうしようもない焦燥感を抜けて完全に開き直ったというか、"俺たちこれしかできねぇし"みたいな。
-なぜ開き直れたんですか?
伊藤:1stフル・アルバム『Negative Campaign』のリード曲だった「スーパーカブに乗って」が、僕らは意図してなかったんですけど"アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)っぽいね"ってよく言われたことが妙に引っ掛かって、だったらもう自分たちからアジカンに寄せてやろうって、ひねくれて作ったのが2ndフル・アルバムの「Empty Lamp」。そうしたら、今度は"バンプ(BUMP OF CHICKEN)っぽい"とか、"エルレ(ELLEGARDEN)ぽい"っと言われ、"もう知らねぇ"って。結局どうやったって捉え方は聴いた人それぞれだろうし、自分はいいものを出すだけだと思ったんです。
-前回のインタビューでは、その「スーパーカブに乗って」のようなリード曲が2ndフル・アルバムにはないともおっしゃっていましたが、結果として「Empty Lamp」はYouTubeの再生回数ベースも、それ以上に伸びましたね。
伊藤:「スーパーカブに乗って」にいい評価をいただいたことで、焦りも不安も出てきましたし、自信もなかったんでそう言ったんですけど、実際にリリースしてみると、YouTubeだけでなく、ライヴなどの現場でも"前よりいい"って、いろんな方が声を掛けてくださって。開き直ったとか、ひねくれてたとか言っといてなんですけど、そこは素直に嬉しかったです。1stの頃は、オルタナティヴ・ロックやパワー・ポップといった、90年代のロックをしっかり通っている熟成された方々から褒めていただくことがほとんどだったんですけど、2nd、特に「Empty Lamp」では、そういう音楽に触れていない、若いお客さんからの声も明らかに増えましたね。
-それは興味深いですね。
伊藤:すごく嬉しかったですし、もともと海外のロックが好きで"これは90年代の空気をはらんだ2000年代のロックへの回答ですよね"とか言われて"なんかよくわかんないっすけど、そのへんの音楽は大好きです"とか会話するのもやっぱり楽しいし。結局、みなさんそれぞれのバックグラウンドがあって、僕らの音楽との向き合い方も、その数だけ存在するわけじゃないですか。だったら、僕らもやりたいことをやろうって、そのほうが誠実でもあるって思えた、大きなきっかけになりました。
-そのうえで、どんなイメージをもって、ストックから選曲してレコーディングしたのでしょうか。
伊藤:前作に収録した曲と対になっている曲がいくつかあったので、そこはひとつの仕掛けとして、選曲の基準になりました。わかりやすいところだと「オルタナティブガール」は「サンドウィッチガール」の続編ですし、「セミロング~純情編~」に対して「セミロング~喪失編~」は、曲名が同じなだけで登場人物やシチュエーションは違うんですけど、これは時間帯が同じ。全体的にも夕方、マジックアワーと呼ばれる時間で、ふたつの作品は繋がっていますね。
-前作以上に時間を感じることができて、景色の見える作品だと思いました。美しくてほのぼのしつつ、どこかもの寂しさもある。"マジックアワー~恋とメロディとギターノイズ"って、サブタイトルを付けたくなるような。
伊藤:それ、すごく嬉しいですね。これから使っていいですか(笑)? 恋とマジックアワーの哀愁って、すごく親和性があると思うんです。そこは意識せずとも繋がっていたように思います。なんか"結果的にそうなったんですよね"的な、どのバンドも言いそうなことですけど(笑)。
-作品の雰囲気が、優しくなりましたよね。
伊藤:年を取って丸くなったのかも(笑)。
佐々木:1stから数えても1年ちょっとしか経ってないのに(笑)。
伊藤:僕らは活動しているのかいないのかわからないような時期も長かったんですけど、そこから1stフル・アルバムを出して30歳を迎え焦燥感に駆られて、1年待たずに2ndフル・アルバムと、急に慌ただしくなったんで、感覚が変なんですよね。それに合わせて、心境の変化もペースが上がったのか、今は、徹夜して満身創痍の状態で朝日を浴びながらTHE BEATLESの「Here Comes The Sun」を聴いて、くたびれた笑顔を浮かべて"もういいや"みたいな。ある意味、達観しているような感覚があるんです。ついこの間まで持っていた焦りでも、アグレッシヴな姿勢でもない、"アコギでも弾いて歌いますか"っていうテンション。だからおっしゃったように優しくなっていると思います。
-佐々木さんも同じような心持ちですか?
佐々木:そうですね。もともと"やってやるぞ"っていうタイプでもないし、でも伊藤が焦っていたときのこともわかるし、そういう流れを経て、僕も今はそんな感じです。
-1曲目の「Waiting」はまさに、"やってやるぞ"という高いテンションではないんですけど、メンタル的に一歩進んだ希望的な曲。個人的には、絶妙な塩梅で背中を押されているような、"ちょうどいい応援歌"になりました。文字通りの"Negative Campaign"じゃない。
伊藤:そうですね。これまでの曲と比べると、もっともNegative Campaignらしくない曲だと思います。前作の1曲目「Primitive」はいきなり"そうやってまた人のせいにしやがって"みたいな歌い出しで、これまでひねくれまくってきたんで、もはやひねくれてないことがひねくれてることになるみたいな。だから今回はストレートに"待ってる"と歌う曲にしました。
-タイトルもストレートに"Waiting"で。
伊藤:「Waiting」って曲はたくさんあるじゃないですか。僕にとってその代表はGREEN DAYですね。
-伊藤さんはべーシストということもあっって、Joe Lallyを擁するFUGAZIの「Waiting Room」かと思いました。
伊藤:「Waiting Room」もありますね。どっちか取れと言われたら迷うなぁ(笑)。リハでもめっちゃ弾きますし。
-リハで「Waiting Room」、ベーシストあるあるですね。
伊藤:サポート・ドラムから、"恥ずかしいからやめてくれ"って言われますから。でも、そこで話しかけてくるほかのバンドの人や関係者の人とは間違いなく仲良くなれます(笑)。
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