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INTERVIEW

Japanese

Negative Campaign

2020年04月号掲載

Negative Campaign

Member:伊藤 秀太(Vo/Ba) 佐々木 勇人(Gt/Cho)

Interviewer:TAISHI IWAMI

-「放課後のブラスバンド」もまた新たなNegative Campaignの一面が見えました。序盤で派手に展開するビッグ・バンドのビートは、とにかくめでたくて景気がいいじゃないですか。貧相ということではなく、ある意味おふたりのキャラクターとは対極にある。

伊藤:たしかに。こういう明るいビートをここまで前面に出したことはなかったですね。

-ビッグ・バンドはロックンロール創生以前からのカルチャー。また、歌詞に出てくる"煙が目にしみる"はTHE PLATTERSの曲で、この曲もジャズやブルーズがロックンロールに振り切る狭間にあります。また、曲の後半にはジャズのマナーに寄せたアレンジも出てきますし、1stフル・アルバムには「タバコと君とビリーホリデイ」とジャズ歌手のBillie Holidayをタイトルに冠した曲もあります。そういったロックが生まれる以前のカルチャーへの憧れについて聞かせてもらえますか?

伊藤:Marilyn Monroeの代表作でもある"お熱いのがお好き"も好きで。あれは楽団に入りたい男たちの話で、すごくいいなって。産業の技術革新とか、景気のいい話がありつつ時代がどこに向かうのかわからない混沌とした感じ。空っぽの明るさみたいな。同じように好きなのは70年代ですね。

-かと思えば"純情な感情は1/3も伝わらない"とも歌っていて。

伊藤:90年代の日本ですもんね。

佐々木:そこも、よくわからないけど底抜けに明るい感じがするじゃないですか。僕にとっては、恋する高校生の情景をうまくインストールできました。

-「シンキングタイム」はクロスオーバー感覚が面白い曲。僕はPIXIESを感じたんですけど、オルタナティヴ・ロックにオーセンティックなポップの空気のマッチングがいいですね。

伊藤:これは"PIXIESが中村一義の曲をやったら"という明確なコンセプトがありました。だから、構成はPIXIESのようにミニマルなんですけど、曲はそうじゃないっていう。すごくいい具合でできたと思います。

-最後に出てくる"君が嫌い"はキラー・フレーズだと思いました。

伊藤:"君が嫌い"って、あまり言わないじゃないですか。面と向かって"君が好き"より言いづらい。誰もが抱えたことはあるけど、圧倒的に口に出した数は少ない、そのむず痒さみたいな。僕の中で、曲がいいほど歌詞がみみっちい、みたいな印象があって。THE SMITHSとかもそうですけど、具体的でくだらない。そういうイメージで書いた言葉でもありましたね。

-「やっぱり僕は君が好き」、これが今作のリード曲だと聞きました。ここにきてまさかのバラード。

伊藤:これはレーベルの担当が、"めっちゃいい曲だし、アグレッシヴな曲が多い中で、これをリードにするのも意外性があって面白いんじゃない?"って言ってくれたんです。

-それもベタベタの展開じゃないですか。サビがしっかりあって間奏のギター・ソロとか、言葉が悪いですけど、今や誰もやらないくらいの。

伊藤:曲のイメージはAlbert Hammondの「落葉のコンチェルト」(原題:For The Peace Of All Mankind)です。DREAMS COME TRUEは物議を醸すくらいのレベルで参考にしたと思うんですけど、僕はもうちょっと距離を保って僕なりにやりました。なので、メロディも歌詞も曲の流れも、そこはベタベタでもいいやって。

佐々木:歌詞が好きなんですよね。すごくハッピーな歌。僕は家でゆっくり音楽を聴くタイプなんですけど、そういうときに聴いてる曲と比べてもすごくいいし。

-「サドマゾ」も、イントロや2番で明快なキックを前面に出して煽る、少し前のドメスティックなロックの常套、"夏フェス!"みたいな演出がありますけど、これも今までならやらなさそうだなと。

佐々木:たしかに夏フェス感あって面白いですよね。そこまで意図してないにせよ、こんなにライヴで盛り上げにいってる感じはなかったし、逆にいいんじゃないですか?

伊藤:これも、ひねくれてやらないことがベースになると、あえてやるほうがひねくれてるみたいな(笑)。

-「そんなことばかりを考えていた」はサビの転調が素晴らしい。この割り切れないけど絶妙に気持ちいい揺さぶりは、どうやったのですか?

伊藤:この転調は、サビに出てくるタイトル・フレーズにフォーカスを当てるために試行錯誤しました。Aメロで3度上がって、サビでは3度上がってオクターブは下がるんです。これは20歳くらいの人だとやらないだろうし、やられたら悔しいやつですね(笑)。ちょっといびつな浮遊感が生まれて、その流れでサビ自体も、メロディはキャッチーなんですけどリズムはちょっと変則的。ひと筋縄ではいかない、いい曲になったと思います。着想はBOYS TOWN GANGの「君の瞳に恋してる」(原題:Can't Take My Eyes Off You)で、あの曲は2Aでメロディが3度上がるんです。そういう上げ下げはありだなって。

-「ゆらゆら」は、冒頭で「Empty Lamp」が意図していないELLEGARDENに似ていると言われ開き直った話をされていましたが、この曲こそELLEGARDENっぽいなと。不愉快だったらすみません。

伊藤:歌の際立つシューゲイズを目指して作ったら、おっしゃるように、メロディの運びが細美武士のクセにかなり近い感じになったことは自覚してるんで、大丈夫です(笑)。そういうことで没にしようとも思ったんですけど、周りの反応がすごく良かったんですよね。

-最後の「8号室」は、言葉にもメロディにもサウンドスケープにも、優しさや深み、考えられる幅があることが特徴的な作品として進んできたことを、ひっくり返すような歌詞が冒頭に。でもすごく沁みるんですよね。

伊藤:これもレーベルの担当が選曲をしているときに"「ゴキブリの出ない家で暮らしたい」って歌い出す曲なんてないだろうから、いいんじゃない?"って言ってくれて。僕なりのEXTREME「Mutha (Don't Wanna Go To School Today)」みたいな。IQはゼロくらいのバカバカしさで終わったほうが後味すっきりするんじゃないかと。

佐々木:シンプルに"こんな部屋大嫌いだ"って言ってる攻撃的な歌詞なんですけど、なんか温かいんですよね。

伊藤:なんやかんやでそこに住んでるしね。EXTREMEも結局学校行ってるからね。大嫌いとか言いながら。

-今作は余白を楽しめるんですよね。そこに聴き手のキャンバスがあって、これまで以上に自由に楽しめる。それはイコール、ポップな強度が上がったということ。この先が楽しみなアルバムです。

伊藤:前作よりアルバムらしくコンセプチュアルにまとまっていて、それを序盤で"優しい"とおっしゃってくれたことはすごく嬉しかったです。そういう部分が伝わればいいなって、思います。それは、これも冒頭で話したことですけど、作品に対して"これしかないしこれでいいんだ"って思えたことにも起因していて、これからも、あくまでマイペースな"平熱のロック・バンド"でありたいと思います。