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INTERVIEW

Japanese

岸田教団&THE明星ロケッツ

2018年12月号掲載

岸田教団&THE明星ロケッツ

Member:ichigo(Vo) 岸田(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

基本的に引かないです。というか、絶対引かないです


-そんなhayapiさんによるヴォーカル・ディレクションも影響しているのでしょうか、今作においては、ichigoさんの歌がこれまで以上に表現力が豊かになっているというか、従来お持ちであるパワフルさに加えて、いい意味でのまろやかさが歌に滲んでいるような印象も受けました。

岸田:それは僕も思いますし、もともとそうなるように作っていったんですよ。それぞれの楽曲の音楽的な完成度をもっと高めていきたいなと、最初から意識していたんです。となると、必然的にヴォーカルの表現力も上げていかないと成り立たないんですよね。そのことはあらかじめ、hayapiさんにも僕から伝えてました。

ichigo:比べると、以前よりも歌の抑揚は相当ついていると思います。

岸田:だよね。できたものを聴いて、僕もそう感じました。"この曲でこれを伝えたいならこうあるべき"っていうかたちが、ちゃんと音や歌になっているんですよ。そこはみんなで話し合ったり、ケンカしたりしながらでも作った甲斐がありました(笑)。

-バンド内で意見がぶつかり合った場合、岸田教団&THE明星ロケッツではいかなる経緯で落としどころを見つけていくことが多いのでしょう。

岸田:誰と誰がぶつかるかによって、そこは違いますね。片方が僕だった場合は、基本的に引かないです。というか、絶対引かないです!

ichigo:ただ、私のやりたいことと岸田のやりたいことがぶつかった場合、両方のアプローチを試して"そっちでもいいかもね"ってなることはあるよね(笑)。あとは、今回「3 seconds rule」という私が作った曲のアレンジをしていったときに、途中でみっちゃんが"これ、もっとキーを上げた方が良くない?"っていう意見を出して、いきなり1音半も上がったことがありました(笑)。そのときは"歌うの大変になるじゃん、このヤロー"って思いましたけど、事実こっちの方がより良くなりましたし。うちのバンドの場合は、最もいい結果を出すにはどうしたらいいかっていうところで、みんなで模索していっているということなんだと思います。

-その言葉は、今作における1曲目の"Decide the essence"というタイトルにもどこかで繋がってきそうですね。

岸田:"本質を決めろ"というやつですね(笑)。"決断せよ"という。

-『REBOOT』の冒頭をこの楽曲が飾っていることには、とても大きな意味があるのだと感じます。

岸田:実は、"REBOOT"というアルバム・タイトルを決めたあとに最初に作ったのがこの曲だったんですよ。それもあって、できた瞬間から"これは間違いなく1曲目だな"と僕は強く感じてました。

-この「Decide the essence」は、イントロで繰り広げられるサウンドの中でのコード感が非常に斬新ですね。

岸田:あれはエレピ系のサンプリングされた音をべースにして打ち込んだものなんですけど、たしかにああいうコードは今までの僕なら使ってなかったですね。このアルバム・タイトルどおりの、いかにもな"REBOOT感"を出したくてあのかたちにしたんです。これまではギター周りにばかりお金を注ぎ込んできた岸田さんが、ここに来てようやくまともに音楽を作るための音源素材にもお金をかけるようになりました(笑)。

-スタンスだけではなく、実質的な物理環境も変わったわけですね。

岸田:ただし、そういう表面的なところでの変化だけが"REBOOT"ではないんだよということも今作では表現したかったので、それ以降の2曲「our stream」と「Never say Never」についてはあえてロックな質感の曲を並べてます。

-特に、「Never say Never」は極めてオールドスクールな音像ですものね。

岸田:最初の3曲ではバンドとして変わったところと変わらないところを明確に提示しつつ、アルバムの後半へ進んでいくに従って、より深いところで聴き手に伝えたいことを表現していく、という構成の作品になってます。

-合間にはシングル化された既存曲たちもここぞとばかりに入ってくるわけで、『REBOOT』はつくづく隙のないアルバムに仕上がっておりますね。

ichigo:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです!

岸田:でもねー。最初の「Decide the essence」で"本質を決めろ"とか言ったわりに、アルバムの最後に入っている「Code:Thinker」は、"君はいまだに重要な本質をつかんではいない"っていう歌詞から始まるんですよね(笑)。

ichigo:あ、ほんとだー。今気づいた!

岸田:結果、ループするアルバムになってるんですよ。これは、自分でもあとから気づいたことで単なる偶然だったんですけど。全然狙ってなかったです。

-そこはいみじくも、ということだったのでしょうね。

岸田:そうかもしれないですね。しかも、当初は「Code:Thinker」ってこういう始まり方じゃなかったですから。レコーディングの直前に、なんとなく"こっちの方がいいかな"って変えたものが、結果そうなっていたっていう。ミラクルが起きちゃいましたね。自分でも仕上がってから"あれ?"となって、びっくりしましたよ。

-どうやら目論見どおり、もしくは目論見以上に、岸田教団&THE明星ロケッツにとってのアルバム『REBOOT』はことさら作品性の高い1枚へと仕上がったようです。

岸田:僕のリソースを空けて、作詞や作曲に集中する時間を作ってくれたメンバーみんなのおかげですね。すごく納得いくものができたので、我ながらとても嬉しいです。僕のSF愛や趣味趣向が強く出た作品になっているのも事実ですけど、そのぶん、ほかにはない世界を作っている自信はありますしね。きっと、僕の作るものをいいと言ってくれる人たちは他になかなか共感できない人たちでもあると思うので(笑)、ぜひそこを楽しんでください。

-そこは、このバンドが"岸田教団"たるゆえんでもあるはずですしね(笑)。

岸田:そうだと思います。そして、僕はこれからもこうありたいと思ってます。

-さて。年明けには3月23日の六本木EXシアター公演まで続くツアーも予定されているということですから、そこではライヴの場でもREBOOTを完遂した岸田教団&THE明星ロケッツの姿を存分にみせつけてくださいませ。

岸田:当然、ここからはライヴに関しても"REBOOT"していくことになるでしょうね。もっとみんなが感動してくれるような場を作っていきたいですし、そのための努力は一切惜しみたくないなと思ってます。

ichigo:意識がメンバー全員、前とは違うもんね。

岸田:僕は"やる"と一度決めたらどんな手を使ってでも実現化させていくタイプなので、自分のイメージするライヴをやれるようになるまではそこも絶対引きません(笑)。